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「月がきれいだね。」

 君の言葉につられ、見上げた空には綺麗な満月が浮かんでいた。

 他意のない言葉と判ってはいたが、とある文豪あるいは気障な英語教師の逸話が浮かんできた。

「I love you.の和訳として『月が綺麗ですね』を挙げた方がいるんですよ。」

 突然語り始めた私に君はキョトンとした顔を向ける。

 でもその顔は間を置かずしてキラキラとした瞳に彩られる。

 あぁ、また期待させているな。応えられるかはわからないが精々頑張るとしよう。

 そんなことを考えながら、苦笑を堪えつつ、しかし表面上は講義をはじめる教職のように続きを語りだす。

「彼曰く『情緒のわかる相手なら、このぐらいの表現でも伝わる』とのことです。」

 この一言に君は首を傾げ、わざとらしく挙手とともに質問を返した。

「先生!僕は情緒がないので意味がよくわかりません!」

 念のためことわっておくと私達の関係は教師と生徒ではない。しかしながら私が醸し出した雰囲気を感じ取りこんな言い回しをしたのだろう。

 少し愉快な気分になった私は補足を加えることとする。

「これはあくまで私見ですが『君が要るから月はより綺麗に見える』とか『君が居れば何でもない風景も綺麗に感じる』といったことを言いたかったのではないかと思います。

 そんな経験はありませんか?」

「う~ん、そんなものなの?」

 私の言葉に考える素振りを見せている君を微笑ましく眺めていると、ふいに何かを思いついたような顔で、かつ何か悪戯でも思いついたと言わんばかりの顔で私を見上げてくる。

 さた、ここからどんな言葉が飛び出すか。

 少しワクワクしながら待っていると、君は輝くような笑顔で私に告げた。

「月が綺麗ですね」

 言ってから恥ずかしくなったのか、頬を赤らめそっぽを向く君を視界の端に捉えながら私の視線は再び天球へと向かう。

 あぁ本当に…

 月が綺麗だ。


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