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あれやこれやを突っ込んでみただけの短編集

鷺宮さんの愉快な真実

作者: 密

僕の通う学校には有名人かつ影の人気者がいる。



その名はーーーーーー鷺宮透子さぎのみやとうこ


キリッとした猫目は黒曜石のような輝きを持ち、肌はまるで白磁のようにニキビの一つもなく真っ白。髪は絹のようなしなやかさを持つ。

そのクールな美貌から、『氷の女王』というアダ名をつけられている。

 

 また成績優秀で、運動神経も抜群、性格も物静かで慎ましいという大和撫子を素で行く人間である‥‥‥というのが周囲の人間の評価である。


だが、僕は声を大にして言いたい。


あの人は君らが思っているほど大和撫子じゃないぞ、と。


僕が彼女と出会ったのは暖かいのか寒いのかよくわからない微妙な日だった。


僕が家の近くの公園でいつものように美術部らしく風景画を描いているとどこからともなく声が聞こえる。


    「…ぉーぃ…」


    「ぉーい」


か細いながらも何処か図太さを感じるその声の主を探そうと公園を見渡すも僕以外は誰もいない。

不思議に思い、まさかと思って座っていたベンチの下を見てみるとそこに人が仰向けに寝そべっていた。


驚愕で一瞬固まったが、慌ててその人を助け起こし救急車を呼ぼうと携帯を出すと携帯を折られた。(ちなみに僕の携帯電話はガラケーである)


「ふぁっ!?」


長年の相棒を折られたショックと相棒を折った犯人の顔を確認してしまった僕は妙な声を上げることしかできなかった。


僕の相棒たるガラケーを折ったのが学校一の美少女だったからだ。


そして、相棒を折った犯人は図々しくもこういった。


「ガラケーなんかじゃ腹は膨れん。 そんなことより飯をくれ!」


と。



なぜ鷺宮さんが公園で行き倒れているのか、僕の相棒がお逝きにならなければならなかったのか疑問は尽きないが、彼女の腹の虫が雄弁に空腹を訴えるので仕方なく、すぐ近くにあった某チェーン店のバーガーショップで奢ることにした。 …決して美少女とお近づきになれるとかっていう下心はない。ないったらない。


 そして現在、目の前の彼女はものすごい勢いで一番安いバーガーをフードファイターのように大量に食らっている。

そこに、学校一の美少女の風格や他人への遠慮なんてものは存在しない。まるで餓えた獣のようである。

僕ぼ財布の中身は大丈夫なのかって?  ……あいつ(財布)は犠牲になったのさ・・・。


「ふぁふふぁっは、ひょふへん」


「ちゃんと飲み込んでから喋ってくださいよ鷺宮さん。なんて言ってるかわかりませんし、行儀が悪いですよ?」


「ゴクリ)わ、悪い。助かった。少年、あのままだったら餓えて野草をそのままちぎって食べるところだったよ。」


小学生男子かよ・・・。いや、最近の小学生でもそんなことはしないよな。というか、そんなところを見たら学校中にいるファン(野郎ども)が発狂するぞ・・・


そこで、ふと頭によぎった疑問をぶつけてみる。


「そういえばなんであんな所で行き倒れてたんですか?」

そう、彼女が倒れていたのはベンチの下。普通に行き倒れてもああはなるまい。


鷺宮さんはよくぞ聞いてくれたという風な表情でこう言った。


「蝶々を追いかけていたんだ。今まで見たことないような綺麗な黒い蝶々だっあたから捕まえてやろうと思って追いかけて、あと一歩のところで力尽きた。」


さっきの小学生を撤回しよう。この人の精神年齢は幼稚園児と同じレベルだ!

そしてその情けない理由を自慢気な表情で言うな。

ってあれ、知らないところまで来たってことは‥‥‥‥


「鷺宮さん、つかぬことを聞きますが帰り道わかりますか?」


「わからない‥‥‥どうしよう」


オロオロとしだす鷺宮さん、まるで迷子の子供のよう。なにこのカワイイ生き物、見た目は麗しい美少女だったのを今更ながら思い出した。


「そんな泣きそうな顔しなくても学校まで送っていきますよ」


「本当か!」


かくして僕は学校一の美少女と知り合いになったのだった。





「佐藤、部活が終わったら駅前のコンビニに行こう!」


「僕は斎藤ですよ鷺宮さん」


鷺宮さんと知り合ってから約半年がたった。

あの一件から僕はよく鷺宮さんに絡まれるようになった。いまだに名前をちゃんと覚えてくれないのは悲しくなんかない。ないったらないのだ。


え?相棒はどうなったって?無事修理されて元気に僕の相棒をしてくれている。(修理代は鷺宮さんの家の人がだしてくれた)

どうしてこの学校で鷺宮さんの残念な一面がバレていないのかはわからない。

もしかしたら、鷺宮さんが案外うまく立ち回っているのか、周囲の人がこっそりフォローしているのかもしれないけどそれにしたって猫をうまくかぶりすぎだ。


だけど、僕はこの残念な鷺宮さんのことが案外・・・いやかなり好きなので、このままでいてほしいと思う。

このような未熟な作品を読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。

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