気づけばミノタウロス。そして親になる。
オリジナルに手を出してみました。皆さまに満足していただく作品なればいいかなと思っています。
二つ投稿しています、どちらか更新。または両方同時にやるのかは皆様の藩王を見て決めようと思います
黒フードを被った一人の男は高笑いを上げていた。
「まさか私の切り札が倒されるとは思いもしませんでしたが、
彼を追いかけてきたのは五人の男女。
一人は全身鎧に盾と直剣の男。
一人は武道服を着た一人の壮年の男。
一人は黒いローブととんがり帽をかぶった女。
一人は聖職者のローブを着た女。
最後の一人は軽装に金属でできた杖ともう片方にショートソードを持った少女だった。
彼らはすでにボロボロだった。
「まさか私のドラゴンゾンビがやられるとは思いもしませんでしたね。」
そんな彼らを見て余裕をかます一人の男。
その傍らに縛られ拘束された少女がいた。
「うう・・・みんな・・・。」
彼らは邪悪な野望を持っており、そのいけにえにするために仲間である少女をさらったのだ。それを阻止するために彼らは彼のアジトである地下施設にやってきた
だが、男はそれを見越しており、罠を張っていたのだ。
それがドラゴンゾンビ。
それも大型の。
それを何とかしのいだが、彼らは大幅に消耗していた。
「ぐっ・・・まだ私がいる!!ミクリアを助けるくらい…私一人で!!」
その中でまだ少女は比較的傷が浅かった。
「だが、それで終わりじゃないですよ。」
その声とともに男が魔方陣を真横に展開。
巨大な透明の筒に入っていたのは牡牛の頭を持つ大男だった。
下半身は牛のそれになっており、なぜか尻尾も生えている。
「ミノタウロス?」
それを見た騎士の男はつぶやく。それは中級冒険者たちにとって脅威となり上級冒険者なら倒せるレベルの強さを持つ中ボス的な存在のモンスター。
「それも見たことのない柄だぞ。」
それはホルスタインと呼ばれる牛と同じ、白と黒の柄をしていた。
彼らなら倒せるレベルも相手だった。
万全な状態かつ、相手が普通のミノタウロスならばだ。
黒毛、茶毛、白と赤のミノタウロスを彼等はみたことがあったのだが、白と黒のミノタウロスはみたことなかったのだ。
ましてやリザードマンのような尻尾があるなんておかしすぎる。
普通とは考えられない。
「流産したミノタウロスの胎児を手に入れましてね。それをベースにいろいろと品種改良し、作り上げたのですよ。どうしてこんな柄になったのか謎で。まあ、それはともなく、この試作品の力を試したかったのですよ。まあ、知性は全くない、私の操り人形ですが・・・。」
男が指を鳴らすとミノタウロスを覆っていた透明の筒が消える。
それとともにミノタウロスが目を覚ましたのだ。
「さあ、行くがいい。」
ミノタウロスが一歩大地を踏みしめる。
その力強い一歩だけで並みのミノタウロスとは格が違うということがわかる。
「ぐっ・・・このままじゃ・・・。」
追い詰められた彼等。
「逃げろ・・・・・・。お前だけでも・・・。」
「兄さんや姉さんたちをおいて逃げられるわけないでしょ!!」
少女――ディアーナは騎士の言葉に首を横に振り、一人でそのミノタウロスと対峙する。
「やめて・・・やめてぇぇぇぇぇぇ!!」
縛られた少女――ミクリアが泣き叫びぶ。
「はーははははは!!私の最高傑作の力を見るがいい!!!」
高笑いする男。
ミノタウロスは徐々に彼らに迫り・・・。
「ぬ~・・・。」
なんか間抜けな声を上げながらそのわきを通り過ぎていた。
「へっ?」
間抜けな声を上げるディアーナ
「のどかわいた~・・・。」
なんとも暢気な声だった。
『・・・はい?』
絶体絶命の危機に緊張していた彼等は思わず声を上げる。
「みず~・・・みず~・・・。」
「へっ?えっ?」
男は慌てている。あまりにもミノタウロスがやっている行動が予想外すぎたのだろう。
「…何がどうなっているの?」
ディアーナはミクリアのほうを見るが彼女も首をかしげる。
ミノタウロスは鼻をヒクヒクと細かく動かし・・・。
「なんか液体の匂い・・・。」
男が立っていた後ろの鉄の門のような戸に向かって歩き出す。
「待てい!!そっちは違う!!」
その扉を開けようとするミノタウロス。だが、扉は動かない。
「その扉は厳重に封印してある。魔術面でもな。ミノタウロスといえども突破は・・・。」
そこまで言いかけて、何かが固いものが引きちぎられる音とともに男は言葉を止めた。
厳重に封印した扉。その扉そのものを引きちぎったのだ。力任せに。
「うわ、なんて怪力。」
「なんだ・・・この怪力は?ドラゴンですらぶち破れぬ設計にしたのに・・・。」
男にとって、己が自作したミノタウロスのパワーは想定外だったのだろう。
「って・・・それは飲まないで!!私の・・・私の最高傑作!!遂に完成した・・・霊薬と賢者の・・・。」
一方のミノタウロスは部屋の中にある水〈?〉を飲む。
なぜか血のように真っ赤な色をした水を。
なんか赤いビー玉のようなやつもあったが、それすらも丸呑みだ。
「ぬああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ最高傑作がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」
それを一気に飲み干され、悲鳴を上げる男。
「むう・・まずい。青汁みたいな味だな。だが、少しは目が覚めた。うう、昨日はやけ酒がすぎたか。反省せねば・・・。さて、今日は○○駅だったか。はあ・・・前回はダメだったし。今度こそ嫁は見つかるのだろうか。あ~顔を洗わないと・・・。」
「おい!!お前何をわけのわからないことを!!」
「んん?あんただれだ?おや?」
だんだんと目が覚めてきたのだろう。ミノタウロスが周りを見る。
「・・・なんだここ?」
「どうやら目が覚めたのね。」
すっかり緊張が抜けてしまったティア
「ちょっと待て。寝癖を直す。鏡は…ああこれでいいか。」
ミノタウロスは己の体をその部屋にある透明な筒で見た。
「顔・・・毛むくじゃら。」
顔が牛の頭になっているのだ。それは毛むくじゃらだろう。
一応髪の毛みたいなのはあるので寝癖を直す。
「おお、立派な角だ。体もいい感じに仕上がっている。鍛えることは忘れなかったからな。だが、いささか筋肉がつきすぎのような気もするが・・・。動きが鈍るぞ。」
立派な角と裸の上半身を見て、少しうれしそう彼。
マッスルなポーズをとってその肉体美を楽しんでいる。
「…下半身はなぜ牛?マッチョだけど。」
毛むくじゃらの下半身を見てため息。
「そしてなんだこれ?ああ…尻尾か。俺の尻尾らしいな、」
尻の上からワニのような立派な毛に包まれた尾が生えている。その毛並みは牛の頭と同じだ。
自分の思った通りに動かせるので、自分の尻尾だと認識できたyぷだ。
「おお…背中にはひれがあるぞ。」
尾から背中、首にかけては二つのひれが並んでいた。
「まあ・・・そんなのたいしたことじゃないわな・・・ははははははははは・・・。」
そして笑った。
「はーはははははははは・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
乾いた笑いがしばらく続き・・・。
『なんじゃこりゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?』
と頭を抱えて絶叫。そのあまりの大声に、皆は耳を閉じる。
「ぐおおおおおおおおおっ!?」
側に寄ろうとした男は吹っ飛ぶほどの破壊力である。叫ぶだけでだ。
鼓膜が破れなかったのはとっさに障壁を張ったからだ。
それでも彼は吹っ飛ばされた。彼の絶叫だけで。
現に彼の周囲の床に亀裂が入っている。
「なんでこんな姿に・・・。」
『えっ?今更!?』
そこに総ツッコミもはいるのも無理ない。
状況の認識にあまりに時間がかかりすぎていたからだ。
「何がどうなっているの?」
ティアは首をかしげながら様子を見ることにしたようだ。
彼・・・現ミノタウロスになってしまった男――美濃田 玲央栖
皆からはミノさんと呼ばれている。
彼は公務員なアラサーの男だった。
彼はオタク趣味で今まで彼女はいなかったが、もういい歳になった。
周りの友人で結婚し、子供もできた人たちさえ出てきた。
今度は自分の番か・・・。
嫁を探すかと彼は奮起し、婚活をしていた。
だが、色々あって女に縁がなかった彼は婚活に苦戦していた。
「…うう…俺…ダメな男なのかな・・・。」
色々あって、百戦錬磨の彼の初めての挫折。
やけ酒をのみながら、友人たちに慰められていた。
そして、豪雨の中、彼の顔見知りの少年が濁流にのみこまれているのを見て・・・。
そこから先の記憶がなくなっており、気づけば彼―――レオスはミノタウロスになっていた。
「なんで牛になっている?!どうして!?WHY!?」
混乱しているレオス。
「そしてここはどこ!?あんたら誰!?」
「なっ、なんですかあなたは?」
「それはこっちのセリフだ!!」
「なっ!?」
男が瞬きする間に目の前に迫っていたレオス
その距離、十メートルはある。それを一瞬で詰めてきたのだ。
「どうして俺はこんな体になっている!?お前の仕業か!?」
「ちぃ、失敗作か。なら首輪の魔法を発動・・・。自爆させてくれる!!」
「首輪ってこれのことか?」
首輪という単語に、首からいつの間にか引きちぎっていた首輪を見せる。
「・・・・・・・・。」
目を点にする男。まさか一瞬で引きちぎってくるなど完全な予想外だったらしい。
「・・・鋼鉄の首輪を一瞬で・・・。ちぃ・・・なら直接・・・へっ?」
魔法を打とうとした瞬間、男の体が宙を舞う。
その光景に皆が茫然とみていた。
「へぶ!?がっ!?」
顔面から床にたたきつけられた男。
その男の腕をとり、背後から極めるレオス
片手でだ。
「・・・すばらしい柔術。」
その一連の流れを正しく理解している武闘家の男が関心していた。
「まさか、投げなのか?」
騎士の言葉に武闘家はうなづく。
「ああ。それも指で軽くあいつを跳ね上げただけの・・・。常識外の怪力を必要最低限に使った見事なやつを。こいつ・・・できる。」
指一本の力で器用に男を持ち上げて空中に放り投げた。
いろいろとおかしいことに皆は気づくだろう。
「がああああぁぁぁぁなんだお前?!もう一度・・・があああ・・・。」
「何しようとしたのか知らんが、それはきちんと集中しないとできないのだろ?痛みで思考がまとまらない状態でできるかな?そもそもそれを発動させると口にしている時点で二流もいいところだ。」
「…確かにその通り。無詠唱の魔法だってイメージと集中が大事。痛みなどで思考が乱されたらどうしようもない・・・。こいつ、できるわ。」
同じく魔法の使い手である女性はうなる。
直感で彼は男の魔法を封じたのだ。
そして、軽く腕を地面にたたきつけると・・・床が粉々になる。
「ひっ!?」
「やはり、力が飛躍的にあがっている。加減が難しいな。なら、指で・・・。」
そのうえで後ろから当身を行う。力加減の関係で弱めに指ではじく形で行ったのだが、それがちょうどよかったらしく男を気絶させる。
「これで静かになったな。」
彼はため息をつく。
「さて、お前たちは俺に何かするか?」
「いや、こっちも訳が分からずで・・・。」
「そうよ、あんた誰?!」
ディア―ナが彼に問い詰めてくる。
「・・・まあ、こっちも訳がまったくわかっていないのだがな。」
彼は意外と冷静であった。
「まあ。わかっていることはある。じっとしていろ、拘束を解く。」
「えっ?あっ・・・。」
ミクリアを縛っていた金属の輪を指でひっかけ、握りつぶすように引きちぎる。
「ありがとうございます。」
「いいんだ。」
ミクリアはじっとレオスを見る。
何かを見極めようとしている。
「わかる範囲でいい。事情を聴きたい。こっちもわかる範囲で応える。」
「ええと・・・。」
気絶した男を縛り上げながら彼らはうなる。
凶暴で有名なミノタウロス。その彼が確かに考えながら丁寧に話しかけてきたのだ。
寝ぼけた姿もユーモラスだった。
だが、その後見せた優れた格闘の技能と戦闘判断は彼がただミノタウロスとは一線を画した存在であることを示していた。
明らかに普通のミノタウロスではない。
素手とはいえ、消耗している状態でまともに戦って勝てる相手ではない。
ましてや、相手は高い知性を持っている。話し合いで済むのなら越したことはない。
だが、信頼できるのか?それが疑問で決断できないでいた。
「話だけでも聞いたほうがいいわ。異常事態なのは間違いない。」
決断を下したのはディア―ナだった。
「それに、あいつがその気になれば、ボロボロで消耗した私達は一方的に蹂躙されているわよ。その気がなし、助けてくれたし。・・・。それに・・・ミクリア?こいつの心はどんな感じよ?」
「うん…とってもきれい。まるで澄んだ青空のように。まちがいなく、善人だよ。」
「そう・・・。善人のミノタウロスってところにツッコミどころはあるけどね。」
ミクリアの見立てに己の考えが間違いでなかったことを確認するディアーナであった。
「助かる。こちらとしてもこのような体になった経緯を知りた・・・。」
そして・・・。
―――――助けて・・・。
「んん?」
彼は誰かに呼ばれた気がし、あちこちを見る。
「どうしたの?」
「呼ばれている。」
――――――誰か…私を見つけて・・・。
「何も聞こえないぞ?」
聞こえているのはレオスと・・・。
「私も聞こえた。」
「私も・・・。」
ディアーナとミクリアだけのようだった。
「・・・・・・そこか!!」
二人の視線があるところに向けられる。
それは巨大な門であった。
それも城や城塞都市に使われているような巨大で重厚な鋼鉄の門。
「みたいね。一発頼むわ。」
「おう!!」
拳一発でその鋼鉄の門を粉々に砕くレオス。
「・・・・・・・頼むわっていったけど、一撃で粉々ですか。」
こともなく粉々になった門を見て呆れかえる皆。
だが、すぐに門の向こう側へと意識を切り替える。
まるで神殿のような石造りの空間。
その祭壇に当たる部分に声の持ち主はいた。
半透明な球体の中に胎児のように眠っている
人の形をした何か・・・。わかっているのはそれだけだった。
その球体に近づくと・・・。
「んん?」
「ぐあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
金属の輪が光、彼を弾き飛ばそうとする見えない力が襲い掛かってくる。
彼を止めようとした普通の人間たちが問答無用で吹き飛ばされていった。
ディアーナもミクリアもだいぶ吹き飛ばされてしまったのだ。
「?」
だが、レオスにとってそれは微風程度にか感じなかった。びくともしていない。
「あんた、どんな体してんの!?」
「この体のスペックがどんなものかこっちもわからなぬのでな。」
その異常なまでの頑丈さに舌を巻く。
「・・・恐れなくていい。そこから出してほしいのだろ?」
優しくその球体に触れる彼。
黄金の輪がそれを妨害せんと球体の周りを高速で回るが・・・それを力づくで止めてしまった彼。
―――――出してくれるの?私・・・ずっと、ずっと一人で・・・。
「出してやる。もう一人じゃないからな。」
そして、彼は球体を覆っていた黄金の輪を引きちぎりにかかる。
「ぬう、硬い・・・。さっきの首輪と違う。」
黄金の輪が光り輝き、電撃を発する。
「ぬうううううう・・・・。」
だが、レオスは痛みをこらえる。
「なんの・・・これしき・・・。」
懸命に力を籠める彼。その全身の筋肉が大きく膨れ上がる。
「ぬおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
膨れ上がるだけでなく、全身を黄金のオーラが覆い電撃を弾き飛ばしたのだ。
「まさか・・・身体強化・・・。気の力を集めるだけで?」
それを見た武闘家の男が戦慄した様子で声を上げる。
「それって、お前が使っている「気合」のことだよね?」
「ああ・・・。だが、あいつはそれの更に上位の技を・・・。錬気を使ってやがる。」
さらに爆発的に膨れた怪力に黄金の輪が悲鳴を上げ、もがくように抵抗するが…まったく動けない。
「話を聞くに、錬気までになると一時的に身体能力を倍加する。しかし、これだけの気だと倍加どこじゃないかもしれない・・・」
「おいおい・・・。」
その光景を見た皆は思っただろう。
「あいつ・・・本物の怪物ね。」
本当に戦わなくてよかったと。
「何もしないのも癪だわ。私も手伝う。ほっておけないから。」
ディア―ナが剣に杖をなでさせる、
すると剣が光を帯びていく。
それとともにミクリア―ナの姿が若干変わった。耳がとがり、その後ろにシカのような角、そして額に宝玉のようなものが現れたのだ。
「!?」
「私も!!」
一方のミクリアの手には稲妻が落ち、それが光の槍となっていく。
その背には白い天使のような翼が・・・。
姿がかわったことに軽く驚くレオスだが・・・。
『いくわよ!!』
「おう!!」
彼女らの気合いに笑みで応える。
光の槍を投げるミクリア。その槍が輪に突き刺さった。
それは浅い傷。だがそこにもう一発作った槍を投げ、その浅い傷を深くする。
ディアーナが剣をその黄金の輪の傷に向けてたたきつける。
甲高い音とともに剣が粉々になる。
「・・・ちぃ・・・この手ごたえ、やっぱり、サンオリハルコンか・・・。」
粉々になった剣を見て舌打ちするディアーナだが、その一撃はその輪に亀裂を入れていた。
「どこらしょおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
どういう理屈かわからないが、身体機能を大幅に高めた彼はその黄金の輪を亀裂から強引に引きちぎった。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・結構硬かったな。だが・・・おかげで何とかできた。ありがとう。」
「いいわよ。私も何かしたかったし。」
少しぶっきらぼうに笑うディアーナ。
「お互い様ですよ。」
そのやり取りだけでお互いに知っただろう。
ああ・・・こいついいやつだと。
そして、三人で、透明な球体に優しく触れる。
「…もうここにいる必要はない。一緒に外に出るぞ。まあ…こっちも外のことは何も知らないが・・・。」
「まあ、外のことは私が詳しいから安心しなさい。悪いようにはしないわ。」
「そうですね。」
その球体が消える。
中から現れたのは白く長い髪をした女の子だった。
歳のころは大体五、六歳くらいだ。
ただ、頭に白い犬のような獣耳。
そして、狐のようなふさふさした尻尾を持っていたのだ。
「…ライカンスローブの子供?」
「獣耳と尻尾がある時点で少しおかしいわ。ますます訳が分からなくなるな。」
レオスはその変わった姿の幼女を、優しく抱きしめる。
「さて・・・どうしたものか。」
「その前にあんたの事情を聴く必要があるのだけどね。」
「ああそうだったな。」
眠っていたその女の子が目覚めたのだ。
瞳は赤。
きれいな深紅だ。
瞳の中に彼の姿が映し出されるくらいに。
じっと見る女の子。
「・・・パパ。」
その愛らしい声で女の子はいう。
レオスのことをパパと。
「えっ?」
「パパ~!!」
笑顔で抱きしめ返してくる女の子。
「・・・・・・。」
固まるレオス
「・・・なんじゃこりゃ・・・?」
「こっちがききたいわよ。えっと・・・あなた・・・一体・・・。」
その女の子に話しかけようとしたディアーナ。
だが、今度はその女の子が告げる。
「ママ~!!」
「・・・へっ?」
そう言って、今度はディアーナに抱き着いてきたのだ。
いや、ディアーナだけじゃない。
「ママ~!!」
「えっ?」
ミクリアにも抱きつき、ママと呼んだのだ。
その光景を興味深く見る彼等。
『えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』
彼女の悲鳴があたりに轟いた。
すべてはここから始まった。
後の世に世界を救った史上最強の家族と言われ、その家族の始まりの父「獣王」とその二人の嫁「勇者」「聖女」。その娘の一人「神の子」との出会いは。
ここから婚活中の親馬鹿ミノタウロスな彼――レオスの子連れ冒険が始まる。
脳筋ではないミノタウロス。そのスペックはまだ未知数です。
意見などといただければ幸いです。
また会いましょう!!