小ボス戦
巨大樹の森の中、ジンとゼロの目の前に不気味な人物が現れた。
現れたというよりは、ゼロの挑発に乗って誘い出された、
と言うのが正しいだろうか。
「キヒッ、キヒィィイイ!!私の傑作の結界を!!
バカにしたのはどちラです??」
「いえいえ、どちラでもかまいません!
2人ともまとめて懲らしめて差し上げますヨ!
魔王様ぁ、見ててくださいねぇ!
私が!ブブブめがぁ!勇者を!ブッ殺して差し上げますぅぅぅう!」
ブブブと名乗る、甲高い声と不気味な顔をした明らかに敵であろう人物。
自らを魔王の配下と叫んでいる存在。
ジンはなんとも言えない表情を浮かべた。
「すっげぇハイテンションなオッさん出てきちゃったぜ。」
「いやぁ、こんな状況でも無ければ関わり合いにはなりたくないよねぇ。
とは言っても、あの結界がこいつのせいなのは間違いないからねぇ。」
ゼロも引き気味なようだ。
「(不気味さ加減で行ったらお前も変わんねぇような…)ま、やるしかねぇよな。」
ジンはそっと2人から目を逸らした。
勇者の旅は一筋縄ではいかないようだ。
「キヒッ!さぁさぁ、お仕置きの時間ですヨぉ!」
ブブブのいきなりの宣言。
戦闘開始の合図と共にジンとゼロは武器を構えた。
ブブブの先制攻撃。
素早い詠唱と共に術名を高らかに叫んだ。
「キッヒ!ブラックホール!」
地面に暗が広がる。
「魔術使いかっ!」
ズシャッ ズシャッ ズシャッ
ジンは攻撃を避けながら隙を窺う。
先程までジンがいた場所に黒い槍が突き刺さった。
術後硬直の隙にゼロが銃を撃ち鳴らす。
「こっちがご無沙汰だねぇ。」
パパパパンッ
銃声が響く。
ゼロの4連撃。
怯んだ隙にジンが斬りあげる。
ジンは、攻撃の中でゼロとの連携に手応えを感じていた。
まだ二度目の連携。
しかし何度も合わせてきたかのような連帯感。
ジンはそんな印象を抱いていた。
「キィイイ、鬱陶しい!」
憤慨した様子のブブブにジンとゼロは追い打ちをかけていく。
「ホーリィスフィア!」
ジンの光魔術が発動し、ゼロが背後から追い込みをかける。
魔術師に対して魔法剣士と銃士。
決着がつくのは早かった。
「オおお、覚えてなサイ!!
このクソゴミムシ共が!
次に会ったらただじゃ置きませんかラね!」
ブブブはよく聞く捨台詞と共に消え去った。
押し寄せてくる疲労感と共にジンとゼロは顔を見合わせた。
「あー、やっと先に進めんのか…。」
「疲労困憊って感じだよねぇ。」
なんとか結界を乗り越えた2人は、巨大樹の森を後にした。