巨大樹の森が抜けられない
ゼロを仲間に入れたジンは、巨大樹の森を抜けるために歩いていた。
「ジンくーん?この森は長いねぇ。後どれくらいで抜けられるの?」
「んー、そんなかかんねぇと思うんだけど。」
ジンの後ろをついて歩くゼロが聞く。
ジンの体感ではもう森を出ていてもおかしくない頃だった。
2人が歩き出してから、かれこれ2時間は歩いているのだ。
予想外に魔物が多く、手間取ってしまっている。
道も複雑だし分かりずらい。
それにしたって…あれ?
ジンは、あること気がついて顔を顰めた。
「つーか、さっきっから、同じ場所…回ってねえか?」
そう、先程から全然進んでいる様子が無いのだ。
いや、進めば景色は変わっていく。
しかし、ある一定の所まで来ると妙な既視感に襲われるのだ。
「あれ?気づいてなかった?もう5周くらいぐるぐるしてるよ?」
ゼロはなんでも無いようにニンマリと答える。
ジンは頭に青筋を浮かべた。
「気づいてたんなら、早く、言えよ!」
ゼロの肩を掴みながら激しく揺らし、怒鳴りつけた。
「いやぁ?気づいてる、もんだと、思って?」
ぐにゃりぐにゃり
揺られながらも、ゼロはニンマリ顏を崩さない。
ジンはその様子に顔を引きつらせた。
しかし言い争っていてもこの状況が解決するわけでは無い。
ジンはあたりを見回してみる。
少しだけ、景色が蜃気楼のように揺らめいたのをジンとゼロは見逃さなかった。
「結界、みたいなもんか?」
「ま、そうだろうねえ。」
ジンはその蜃気楼の正体に気がつき、ゼロもそれに同意する。
ゼロはいつものニンマリ顔を崩し、スッと目を細めた。
しかしそれも一瞬のことで、ゼロはいつものニンマリ顏に戻ると大きな声で叫んだ。
「比較的簡単な結界だねぇ。僕らでも仕掛けさえ分かっていれば解ける。
簡単な結界だ。うーん、相手は雑魚なんだろうねぇ。こーんな簡単な結界で、
仕留められると思ってるのかねえ。笑っちゃうよねぇ!」
ジンは、訳が分からずゼロを見やる。
ゼロはジンに向かい、とっても楽しそうな笑顔で、人差し指を自分の口に当てた。
しーっ
ジンはその仕草に黙り込む。
その時だった。
ーーんですーぇ!!わたーのーけっーいーどこーっていうーーす!!
どこか遠くから聞こえる金切り声。
所々途切れて聞き取り辛いが、ゼロの挑発に乗ったのだろう。
ジンは思わず呆れた。あん単純な挑発に引っかかるのかよ…。
ゼロはやっぱり楽しそうだ。