仲間入り?
異様な光景。その表現がぴったりだ、とジンは思った。
瘴気の満ちた巨大樹の森に勇者と少年。
常人ならばこの瘴気に耐えられるはずがないのだ。
「お前は、何者なんだ。」
先程よりは冷静に、しかし警戒は解かずジンは問う。
先程の追撃はこの少年が与えたのだろう。
腰に差してある二丁の拳銃がその証拠だ。
「んー、それがねぇ、分からないんだよ。僕自身が知りたいくらい。」
少年はニンマリ顏のまま答えた。
ジンは少年を図りかねていた。
一般人ではない。それは確かだ。しかし少年は分からないという。
それが事実なのか否か。ここに確かめる術はない。
「お前は、味方なのか?」
「 さぁ?それも分からないなぁ。うーん、今のところ敵ではないと思うんだけど。」
少年は、ジンの問いに本当にわからないように首をかしげる。
ジンはため息をついた。
「お前の名は?」
「うーん、名前もねえ、どれが本当かわからないんだけど、とりあえずまあゼロとでも呼んでよ。」
ジンの周りをクルクルと回りながら少年は答えた。
「ところで君は誰なの?」
ピタリ、ジンの目の前で顔を覗き込むように停止したゼロと名乗る少年は、ふと首を傾げた。
ジンは少し悩んだが味方と判断したのだろう。
「俺は勇者、ジン・ルクルーレだ。さっきは助けて、くれたんだよな。助かった。ありがとう。」
「んー?んー、いいよぉ。命が助かってよかったねぇ〜。
ところで勇者?勇者とな!ほっほーう、それはおもしろいねぇ、おもしろいよぉ!」
ジンには何が楽しいのか全くわからなかったが、ゼロは楽しそうにはしゃいでいる。
少し間が空いてゼロはジンに向き直った。
「うーん、ジンくん?僕もついっていっていいかなあ?」
ニンマリ顏を少し崩して、ゼロはジンに問う。
「え?なんでだよ。」
突然の申し出に、ジンは顔を顰めて聞き返した。
「いやぁ、僕は僕が何者か分からないから?
ジンくんについて行ったら何かわかるんじゃないかと思って??」
眉を下げ、悲しそうな表情を浮かべたゼロが言った。
ジンは渋々といった感じではあるが、頷くことにする。
「疑問系かよ。んー、まぁいいか。よろしくな。」
ジンがそう答えると、ゼロは嬉しそうに笑った。
「もちろんだよぉ!よろしくね、ジンくん!」