第1章ー旅立ちー
第1章ー旅立ちー
この国の習わしで、勇者は盛大なパレードに送り出され旅に出る。
今はそのパレードの真っ只中だ。
「ジン!無事に帰ってこいよ!」
「おう!」
「ジンにい、まおうたおしてはやくかえってきてね!」
「まかせろ!」
「途中でくたばんじゃねえぞ!!」
「うるせぇ!ジジイもくたばんじゃねえぞ!」
国民は口々に声をかけ、ジンは笑顔で返していく。
しかし中には涙を流すものもいた。
「ジンや、ばあちゃんはいつでも見守ってるからね。ああ、ジン。どうか無事で。」
隣の家のココルである。
ココルは幼い頃に両親を亡くしたジンの育ての親だ。
ジンがどれだけ勇者に憧れて、どんなに鍛錬をしてきたのか。
それを一番近くで見ていた人である。
「ばあちゃん、心配すんなって。大丈夫、俺はちゃんと帰ってくるよ。」
ジンはほんの少しだけ涙目になりながらも、しっかりと目を見据えて答えた。
ココルは泣き崩れながらも大きく頷きジンの手を握りしめた。
「ジン。辛くなったらいつでもいい。帰っておいで。」
ジンはココルの言葉に微笑んだ。
「ありがとう、ばあちゃん。ありがとう。」
そうして国民とのお別れを終えたジンは、門の前に立っていた。
ジンは門から国をまっすぐに見つめ、大きな声で宣言した。
「絶対に、魔王を倒してくる!!」
この言葉に国民は沸き立ち、皆が歓声をあげた。
「「うおおおおおおおおおお!!!!」」
地響きするほどの歓声の中、ジンは国に背を向け歩き出した。