いい加減にしてくれよ
まったく、やってらんないよ。
どいつもこいつも。
俺の隣の席に座っているあいつ。
あいつは、今年の2学期の途中で編入してきた。
家が金持ちだとか、特別頭が良いわけでもない。もちろん、顔だって十人並みだ。
それなのに、なぜかあいつの周りは常に女がいる。しかも複数だ。
学校の行きと帰りは、猫耳メイドちゃんが付き従っている。授業中は、従者たちの控室で編み物をしているらしい。
両親不在のため、なんと、この国の聖女様が身元保証人になっているらしい。転校初日には、猫耳メイドちゃんと、保証人の聖女様という両手に花の状態でやってきたのを、俺は影からこっそりと見ていた。
精霊語講座の御年253歳の美人エルフ先生は、あいつが学校に来る前に知り合ったらしく、講義中こそ会話はしないものの、校内で出会うたびに見つめ合っている。
1ヶ月前の遠足の日。
お弁当を食べている広場の横の森から、魔獣が出てきた。
腐ったような臭いを漂わせながら、低い唸り声をあげていた。
みんなが逃げ惑う中、あいつはその魔獣に立ち向かっていった。
一般生徒は帯刀を許されていないのに、あいつだけ持っていた剣を腰の鞘から抜いて斬りかかった。
いつの間にかあいつの横には、猫耳メイドちゃんが、その小さい体に似合わない、大きな剣を抜いて立っていた。聖女様は、後方から光の魔法の詠唱を始めていた。エルフ先生は、あいつに支援魔法をかけていた。
あいつは、勇者だった。
「ボクのハーレムはまだまだこれからだ。」
そうつぶやいているのを聞いた。
俺の前に座っている女。
あの子は、この学校に特待生として入ってきた。くりっとした目が可愛らしく、ドジっ子で、いつも笑顔を絶やさない。
それなのに、あの子が、行くところ不幸に襲われ、そのたびに男から助けられている。
家が貧しいらしく、周りの他の女たちからはよく嫌がらせをされている。
ある時は、食堂で、マナーが悪いと言われているところに、ひとつ上の学年に所属しているこの国の王太子様がさりげなくフォローを入れていた。
ある時は、勉強机の上にゴミが巻かれていて、同じクラスにいる、国内有数の大商人の息子が一生懸命きれいにしてあげていた。
ある時は、足を引っ掛けられて転けて怪我をして、体育の講師をしている先生にお姫様抱っこをされて保健室に運ばれていった。
1ヶ月前の遠足の日。
お弁当を食べている広場の横の森から、魔獣が出てきた。
腐ったような臭いを漂わせながら、低い唸り声をあげていた。
みんなが逃げ惑う中、あの子は足元の石につまづいて転んでしまった。
一緒にお弁当を食べていたと思われる、大商人の息子が、慌てて駆け寄って手を差し伸べる。それでも足が遅いため、体育の講師をしている先生がお姫様抱っこをして走る。王太子様は、学年が違うけど、後輩たちの監督のためという名目で遠足に参加しており、怪我をしたあの子に治癒魔法をかけていた。
あの子はヒロインだった。
「次のイベントで全員の好感度一気にアップかな☆」
そうつぶやいているのを聞いた。
俺の席の最前列にいるあの子。
ゴージャスな縦ロールをぶら下げて、「おほほほほ」と笑う、この国有数のお貴族様のご息女様だ。
身分にこだわらず常に公平な態度をとり、一心不乱に勉学に励んでいる。
それなのに、試験では上位に入ったことがない。そして、周りの男たちとは世間話程度はするものの、個人的に誰かと親しくなることはしない。
女の子たちとは、どの派閥の子であっても仲良くなっている。クラスでは目立たない地味な女の子や、同じお貴族様のご息女たちとも別け隔てなくお付き合いしているようだ。
1ヶ月前の遠足の日。
お弁当を食べている広場の横の森から、魔獣が出てきた。
腐ったような臭いを漂わせながら、低い唸り声をあげていた。
みんなが逃げ惑う中、縦ロールの女の子は、友達の女の子をかばうようにして逃げていった。恐怖で足がすくんでいる子を励まし、俊足の補助魔法をかけていた。
魔獣が倒されたことが確認されると、何事もなかったかのように、再びお弁当を広げ食べ始めた。
縦ロールの女の子は、没落令嬢だった。
「これで死にフラグは回避かな。後は没落だけね。」
そうつぶやいてるのを聞いた。
あいつも、あの子も、縦ロールの女の子も、みんな転生者だよ。
なぜわかるかって。
俺の祖父が異世界から来た人だったからだよ。
祖父から受け継いだのは、人の名前が頭の上に浮かんで見えるスキル。
普通の人たちの名前は青色なんだけど、転生者たちは黄色に見える。ちなみに、敵意をもった人たちは赤色だ。
ここ数年、黄色い名前が増えてきた。
ブームだかなんだかしらないけど、平凡な人生を送りたいと思っている俺にとっては、黄色い名前のやつらとは関わりたくない。
こんな中途半端な時期だけど、転校を考えている。
本当に、いい加減にしてくれよ。