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勇者のいない世界で  作者: DA☆
第三部・「僕の役割、私の役割」
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 休憩が明けた後の二〇分間は、宣言通り、和尚が校長に幾度となく仕掛け、ふたりがヘッズアップで戦う展開となった。


 休憩明け一発目、第一八ハンド。ストラクチャは第四レベルに上がり、ブラインドは、五〇$/一〇〇$。SB桐原さん、BB校長。


 僕、勇、飛鳥さんとフォールドした後、和尚がレイズ。桐原さんフォールドの後、校長はコール。フロップは ♢K♣Q♠4。校長がチェック、和尚がベット、校長はフォールドした。


 第一九ハンド。SB校長、BB僕。ディーラーポジ(カット)ション手前(オフ)から再び和尚がレイズ。校長がコール、僕もコールした。フロップは ♠A♠K♣6。校長がベット、僕は少し考えたけどフォールド、和尚はコール。


 ターン ♡8。校長ベット、和尚コール。


 リバー ♠4。校長ベット、和尚コール。


 ショーダウンすると、校長 ♡K♠J、和尚 ♣A♢7 だった。和尚の勝ちだ。ただ、ターンでレイズすべき展開だったが、本人の宣言通り、ショーダウンまで持ち込むことを優先したようだ。


 だがこれ以降は、和尚の負けが続いた。一度だけ勝ったが、多くのチップを奪うことはできなかった。


 ショーダウンを繰り返してわかったのは、今日の校長は、和尚の言うバカヅキ状態がオカルトじみて継続している事実だった。そもそも強い手札が入っている。共通札(ボード)での引きもいい。校長が昂揚しているのがわかる。人生最大のツキが来ている、そんな享楽の表情を隠そうともせず、ひたすら強気で手がつけられない。和尚はじりじり追い込まれていった。



 ストラクチャは第五レベルに上がり、ブラインド一〇〇$/二〇〇$。それも終盤になって、間もなく第六レベルに上がろうという、第三〇ハンド。SB桐原さん、BB校長だった。


 他の三人がフォールドした後、和尚がレイズした。彼のスタックは既に二〇〇〇を切っており、そこから四〇〇$のレイズ。勝負に出たと言っていい。


 桐原さんはフォールド、すると校長がリレイズした。和尚はコールした。


 フロップは ♠3♣8♡10。


 校長は少し考えてチェック。和尚ベット、校長はコール。


 ターン ♡5。校長チェック、和尚ベット、校長コール。


 リバー ♢7。校長チェック、和尚ベットすると、校長はにんまりと笑ってレイズした。和尚がコールするには、チップをすべてポットへ入れるしかない。つまりオールインだ。フィックスリミットでは、オールインは自分から仕掛けるものではなく、させられるものなのだ。


 ショーダウン。


 校長 ♠10♣10、和尚 ♡Q♢Q だった。


 手札自体は和尚の方が有利だが、校長はフロップでセットを引いており、その時点でほぼ勝ちを手にしていた。和尚はゆっくりと料理されたわけだ。


 和尚は憮然として立ち上がった。が、「後は頼んだ」そう言い残して、あとは観客に向かって―――彼らを不安がらせぬように、朗らかに笑い、手を振って、ガッツポーズだの投げキッスだの振りまいて、それで歓声を浴びながら、講堂を去っていった。


 ……さぞかし悔しいだろうに。




 ストラクチャ第六レベル。ブラインドは、一五〇$/三〇〇$に上がった。


 和尚を倒した校長のスタックは、一五〇〇〇を超えた。テーブルにはまだ五人いるうち、全チップの半分以上をひとりで手にし、圧倒的に有利になった。


 校長は続けざまにスチールを始めた。もう、ポジションは関係ない。第六レベルともなると、やりとりされるチップの量は加速度的に増えており、おいそれとは手が出ない。それがわかっていて、執拗にレイズを仕掛けてくるのだ。


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