初雪
「色玉?」
「色玉だ」
「………金」
ベコッとウェンの頭から聞こえた。隣ではユーリが手に上履きを持っていた。スリッパより痛そう…。
「ウェン…その続きは言うんじゃないわよ」
「………ガッテン」
ウェンが半泣きで親指を立てた。やっぱり痛かったんだ。
「続けるぞ?色玉っていうのは、色のついた石だ。そんな感じで簡単に思ってくれればいい。実はその石には特別な力があるんだ。その力っていうのは持ち主にその色の特長を与えることができる。例えば、緑の石だと持ち主に和みを与える。赤だと情熱を与えることができる」
「へーそんな石があるんですね。魔法石とは違うんですか?」
「魔法石も効力は同じだ。持ち主になんらかの力を与えるのは変わらないが、魔法石を使うには自分の魔力を使うだろう?だが色玉は魔力なしで使えるんだ」
「魔力なしで使える石?」
この世に魔力なしで使える石があるなんて…聞いたことなかった。でもその石がどうしたんだろう?
「あぁ、そうだ。魔力がなくても使える。そしてその石を私たち学院側は管理したいんだ。詳しいことは言えないが、その石をなるべく多く集めてきてほしい。今学院が管理している石はさっき例にあげた緑の石、赤の石と白の石だ」
メドューサ先生は一呼吸おいて続けた。
「色玉はスーウェンを探すために役立つと言ったよな。それにはちゃんと理由がある。実は、スーウェンが学院に入学してから…いや、入学する前からスーウェンには白の石の力を使っていたんだ」
な、どういうことだ?!
「おちつけエンリ、心が乱れてるぞ。…9年前、無族は王都滅亡を企んでいたんだ。それを小耳にはさんでな、ちょうどそのときにスーウェンが学院に入学してきたんだ。それでピンときてな…スーウェンは無族から学院に送られたスパイだと思ったんだ。だが、学院は全ての子供たちを受け入れる体制をとっていたためにスーウェンの入学を拒否することができなかった。そこで考えたのが白の石の力だ。その石は全てを忘れさせることができる石なんだ。だから、スーウェンが入学してきたときにその石で無族にいたころの記憶を消した」
だからスーウェンは俺と初めてあったときにあんなに無表情だったのか。
「だが、いつからかわからないがスーウェンが徐々に狂い始めていた。それは、スーウェンに黒の石の力が働いたからだ。スーウェンがどこで入手したかはわからないが、スーウェンは黒の石の力を少しずつ強めていき、あの凶行に至ったのだ」
黒の石……
スーウェンは石の力であんなことをしたのか…。
「だから、お前たちにこの白の石を1度だけ使うことを許可する」
先生の手のひらにコロンとした小さな丸い石が出てきた。その石は白く輝いていた。
「この石で、もう一度スーウェンを白くさせるんだ。黒のままじゃどの色にもなれないが、白であれば元に戻ることができる。そしてスーウェンに新しい色を与えてやればいい」
スーウェンに白以外の色?
全然想像がつかない
でも、その黒い石が元凶なら早く元のスーウェンに戻ってほしい。
あの頃の優しかったスーウェンに…。
「………ちょっとまて。それだとスーウェンの記憶がなくなる」
「そうよ!その白い石を使ったときにスーウェンの記憶がなくなっちゃったんでしょ?そしたら今まで私たちと遊んでたときの記憶も無くなっちゃうんじゃないの?」
「そこは大丈夫だ。消したい記憶、今回で言えば黒の石のことさえ忘れられれば黒の石を使ったこと事態忘れるだろう。そうすればそれ以前の、お前たちに会ったときの記憶は残ったままだ」
なるほど…。
「それで、多く集めてきてほしいとは言ったが、これは絶対に見つけてほしい。その石は黄色、青、オレンジ、水色、黄緑、紫を探してきてもらいたい」
「色玉があることはわかりました。でも、ほんとにそんな色の石はあるんですか?」
探そうにもその色の石がちゃんとあるか不安だ。それにどこにあるかも分からなければ見つけようがない。
「あるとも。秘密利に調査してきた学院の組織が確認している。だが、石の形はこの白の石のように丸いとは限らないみたいだ。そしてこれらの石は各種族のどこかに1つずつあるらしい」
「種族に1つずつ…じゃあわたしのウール族にも石はあるってこと?」
「いや、持っている種族もあればない種族もあるみたいだが、大体は持っているらしい。そして、石を持っている種族は魔界大戦争時代に名を馳せていた有名種族だ」
「教科書に載っていた種族ってことですか?(歴史の授業ちゃんと受けておけばよかった)」
「あぁ、プラスαもあるがそんなところだ」
「じゃあ俺たちは、これからその石を持っている種族を回っていけばいいんですね!そして石を見つけながらスーウェンも探し出す!」
やることが明白になってきた。これで俺の魔力の根元を辿ればスーウェンまでは近い!
「待ってろよスーウェン!!!」
「あと、この魔物族のゆらを連れていきな」
メドューサ先生の後ろからどこからともなく丸い紫色のボールが飛んできた。
『初めましてっち!魔物族のゆらでございますっち。これから旅のお供をさせていただきますっち。よろしくお願いしますっち』
「か、可愛い!!!もふもふさせてー♡」
ユーリが紫色のボールに抱きついた。
ボールはよく見てみると後ろに小さな悪魔の羽が生えてあってパタパタと小刻みに振っていた。口とおぼしきところは逆三角形になっており、目はボールの前面をほぼ埋めているような感じだった。
『ははは離してくださいっち!みっちはハグハグされるのはいやですっち!ゆっち怖いですっち!』
「離してやれユーリ、ゆらが困ってる。こいつは色玉があるところに反応するんだ」
『そうですっち!だからもっとみっちを大切に扱うですっち!みっちの体はデリケートなんですっち!』
「………そんな魔物族がいたなんてな。色玉のことだって今日初めて聞くのに。それにそこまで分かってるなら自分達で探した方が…」
「そろそろ行かないともうみんなが起き出す時間だぞ。魔法壁を通っている学生を見られたら説明するのめんどくさいんだ。さっさと済ますぞ」
ウェンの疑問をかき消すようにメドューサ先生は俺達を急かした。まぁ急がないと、俺達が魔法壁の外に出たことを別の学生が見たら俺達もってなるのは目に見えている。いくら特例だからといってそうそう外には出せないんだから…。
そして、俺達は魔法壁のところまでやってきた。
「準備はいいか?」
メドューサ先生の言葉に俺達はそれぞれ頷いた。
「魔力持つ意思ある壁よ。メドューサ=アンクレットの名において命ず。この者たちに道を開け!!」
―――パアァァァアアア―――
メドューサ先生の呪文により、俺達の近くの壁が光だした。そしてその光が徐々に広がっていき、穴ができた。その奥から暗い闇が広がった。
「む…あっちは夜か…。こっちの時間軸とあっちの時間軸のズレを考えてなかったなぁ。まぁ大丈夫だろう!」
壁の向こうは薄暗く、不気味なほどの静寂で満ちていた。
出鼻を挫かれたみたいだ。
でも先生は
「大丈夫!このくらいの暗さならここから学生が出てきたことなんて誰もわからないだろう!ラッキーラッキー♪」
とっても満足げだった。
学院側としては学校の場所がバレると不味いのか?
でも、俺達はここに親と一緒に来たはずなんじゃ…?
「メドューサせんせ」
それを聞こうとしたとき…
ドンッ
と、背中を押された。
「じゃ、健闘を祈るよ!色玉よろしくな!いってらっしゃい♪」
先生が壁の向こう側から笑顔で手を振っていた。
ユーリもウェンも俺と同じく先生に背中を押されて学院の外側に出されてしまっていた。そして…
―――パシュウゥゥゥウウ―――
壁の輝きが消えると共に、壁に空いた穴が閉じた。
こうして俺達はメドューサ先生の助けのもと、色玉探しとスーウェンを連れ戻す旅が始まった。




