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色玉  作者: 空音あおい
4/5

積もる雪

いい忘れていたが、俺の名前はエンリ=クラック。

魔法使い族で魔法を操る。でも、肝心の魔力の根源がない。7年前に1つ年上の女の子、スーウェンに右目を奪われて以来俺は魔力を失った。そうだ、俺の魔力の根源は右目だったんだ。魔法使い族は個々で魔力の根源は違う。たしか、俺の親父は右腕、お袋は左足だったかな。ガキの頃の記憶だから曖昧だ。でもこんなに簡単に言ってしまってはいけないんだ。敵にそこを狙われれば一気に戦力がなくなってしまう。平和を唱っているこの世の中じゃそんな奪うやつなんてそうはいないが、やっぱり長年の決まりなのか家族や信頼できる相手にしか教えない。そして俺はスーウェン、ユーリ、ウェンにしか教えていなかった。


ユーリとウェンは幼稚園からの付き合いだし、その頃の俺はなにかと自慢したがりだったからポロっと言ってしまった。だがスーウェンは違う。スーウェンは珍しく、俺が小学3年生の頃に転入してきた。つまりスーウェンは小学4年生の頃だった。そして珍しいことに、スーウェンは希少種族だった。だから学校中にスーウェンの転入が話題となり、一躍有名人になってしまった。俺もそんな話を聞いて興味本意で近づいた。初めてあったときのスーウェンは大人しい、可憐、無表情、誰にも心を開かないような奴だった。それもそのはずだった。

スーウェンは『無族』、希少種族の中で最も新しく、最も恐ろしい種族だった。その種族はいろんな種族がそれぞれに造り上げた、いわば人造人間、擬人である。擬人たちが作られた理由、それはさっき話した戦争に繋がる。自分の代わりに擬人同士を戦わせるのだ。しかし戦争が終結したあと、戦う理由がなくなってしまった擬人は混乱し、ショートしていった。それでも平和を理解し、互いに傷つけあってきた擬人たちが手を取り合って集まった。擬人たちは各々の種族からできあがった種族で集落を持たない、生まれた意味を失ったものたちは、自分たちのことを無族と呼んだ。その無族から初めての入学者がスーウェンである。

そしてスーウェンは俺を見つけるやいなや、初めての笑顔を見せた。


――あなた、名前は?――


その透き通った声に心引かれた。

こちらを向いたときに首もとの小さな鈴がリンッとかわいく鳴ってドキッとしたのを今でも覚えている。

そして2年間、スーウェンが学院を出ていくまで俺たちはずっと4人で一緒だった。


話がそれたな。

自己紹介っつーか、スーウェンの説明でめちゃくちゃ時間とっちまった。

まぁ、そのスーウェンを探しにいくんだ。俺が成人したからには魔力の根源を探し当てることができる。今でもスーウェンが俺の右目を持っていたらだが…。いや、あいつは持っているはずだ。なにせ俺の魔力は…

「ちょ、ちょっとぉ!エンリ歩くの早すぎ!先に魔法壁に着いたとしてもわたしがいなきゃ抜けられないのよ!」

「………嫁を探すのはいいが、俺たちもいること忘れるなよ」

「え!嫁?!ちげーし!わりぃユーリ…」

一人でせかせかと廊下をはや歩きしていたみたいだ。いくら早朝とはいえもしかしたら起きている生徒の一人や二人はいるはずだ。先生だって例外じゃない。見つかれば即連れ戻される。ちゃんと周りに注意しないと…。

「……エンリ、前方にメドューサ先生」

え?!保健の先生がこんな朝早くから行動してるなんて!だから昼はいつも保健室のベッドで寝てるんだ!

やばい、ここは一方通行だ。寮に退避すればまたここまで30分もかかってしまう。戻る余裕はない!

「おーエンリー、ユーリー、ウェーン、お前ら早いな~。まさか抜け出そうなんて思ってないよなー」

手を降りながら高いヒールをカツンカツン鳴らしてやってくる。歩いている姿はモデルのようで、短いタイトスカートからは男がそそられるなにかが見えそうだ。しかし、そこから見上げると長い緑の髪がこっちも見てよと言わんばかりに睨んでくる。表現が少しおかしいように聞こえるが、まさにその通りなのだ。メドューサ先生の髪は蛇でできている。

げ!なんでこっちが考えてること…あっそうだった!メドューサ先生は魔獣族の心読み能力の持ち主だった。

「こら~外に興味を持つのはわかるが~、まだ早いぞ~」

呑気な声で近づいてくるメドューサ先生。

「先生!今回だけは!今回だけは許してください!そうしないと…俺らは先生を…」

腰に手を伸ばそうとしたとき、ビュッとなにかが飛んできて、それは俺の腰に伸ばしてた手を噛んだ。

「保健の先生は寛大だ。君達を私の保健室へ招いてやろう」

あれ?いきなり眠気が…。

噛まれたであろう手を見ると、メドューサ先生と同じ色の蛇が俺の手を噛んでいた。

くそっ………。

「……リ!エン……エ……ンリ!……」

ユーリとウェンが俺の名前を呼ぶ声がする…。

まさか…旅が始まる前に終わるなんて…ついてねぇ…。

視界がぼやけていくのを感じながら、俺は眠りについた。


リン♪


どこかで鈴が鳴った。

これは…スーウェンの鈴の音?

そう思った瞬間、バンッと耳元でなにかが破裂した音が聞こえた。

「うわぁ!」

驚いて飛び起きると、そこは保健室のベッドの上だった。

「起きたかエンリ。あのときまさか私を斬ろうなんて思ってなかったよな?」

メドューサ先生が隣でニタニタして笑っていた。その手には先程割れたであろう風船の残骸と針があった。

「エンリ!大丈夫?」

その横ではユーリとウェンが心配そうな顔を向けている。

「だ…大丈夫だ。どのくらい寝てた?」

噛まれた手はちゃんと治療が施されていた。

「ほんの10分ほどよ。エンリを保健室に運んですぐ起こしたから」

そうか…まだそれだけなら余裕がある、!なんとしてもメドューサ先生を突破しないと…。

そう考えてた矢先に、メドューサ先生は意外なことを言った。

「お前たちの大体の目的は分かった。逃亡者のスーウェンを探し出したいんだろ?まぁ…私はそれに関しては反対はしない。だが、魔法壁をこっそりこじ開けていくのは賛成しないな。魔法壁は外からの侵入も中からの脱走も許さないためにあるんだ。それを一般生徒がこじ開けられるものか。まぁウール族の結界魔法は強力だから、自分たちに魔法壁以上の結界を張って気づかれないように抜け出そうと思ったんだろうな。発想は悪くない。だがやはりまだだめだ。詰めが甘いぞ。結界を別の結界が通ったりしなら不審に思うだろ。突き止めようとした者がお前たちが学院にいないことに気づく。そしたら外で追われる身になるぞ」

う…そこまで考えてなかった…。

「たから、私からの課外授業ということで外に出してやる」

お(´・ω・`)?

「「「えぇーーー???!!!」」」

「ばか!他の生徒がいるかもしれないんだ!大声出すんじゃない!」

パコパコパコっと先生が俺らの頭をスリッパで叩く。ちょっと痛かった…。

「そそそそんなことできるんですか?!」

「んーあー…まぁできないことではない。一部の生徒には先生からの許可のもと、特例で認められている」

そ、そうなんだ…。

「でも条件がある」

条件…まさか、また男を紹介しろとかじゃないよな…。

この学院は生徒も多いが、その分教師の数も相当いて、中学、高校、大学までの先生を教師たち自身全て把握できていない。メドューサ先生は俺らが小学生の頃の担当養護教諭で、今も小学生を担当している。だから中学の頃も高校の頃もイケメンの教師を連れてこいと命令されている。実際に連れていこうとしても相手の男教師にはいつも断られているから一度も連れてきたことはないが。あんなに美人なのになんで断るかっていうと、メドューサ先生は学院長並みに年食ってるからな(笑)たしか400歳は越えてたはず。

「わたしはまだピチピチの396歳よ!」

パコっとまたスリッパで叩かれた。心を読んだみたいだ。

まだ400は越えてなかったらしい。

「で、条件は飲むか?飲まないか?」

「………先生、先に条件の内容を」

「あぁ、まだ言ってなかったっけ?」

「………認知症」

パコっとウェンの頭から聞こえた。またスリッパが出てきたらしい。

「これは悪くない条件だと思うぞ。スーウェンを探す手がかりにもなる条件だ」

もったいぶらないではやく言ってくれ。

「条件は………色玉を探してきてほしい」

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