降り始めた雪
「エンリー!朝だよー♪」
大きな女の子の声と共に部屋のドアが勢いよく開いた。
「あら、もう準備できてたのね」
ノックもせずやたらと馴れ馴れしく話しかけ、なんの断りもなく部屋に入ってきた女の子は俺の幼馴染みのユーリ。
ユーリはピンク色のロングヘアを無造作に、邪魔というように払いのけ、学校指定の制服を凛っと着こなしていたが、どこかあどけない口調は子供らしさも漂わせていた。そしてなんといっても両耳があるはずであるところにはこれまた可愛らしいフサフサの猫のような耳があるが、実はこれは羊の耳である。その上にはしっかりと羊の角があり、彼女がウール族の女の子であることの証があった。
「お前まで来なくてよかったんだぞ。ウール族の成人は20歳からだろ?学校卒業してねーんじゃ全寮制のここからは出られねーぞ」
「わかってるわよ!卒業しないと学校から出られないことくらい小学生でもわかるわ!」
ここ、魔立王都学院は、幼稚園から大学までエスカレーター式の魔法学校だ。この学校には魔力をもった子供たちが、安全に魔法を使えるように、魔法で社会貢献ができるようにするためにできた学校である。強く、美しく、人のために、を指針に子供たちは物心ついたときからこの学校で暮らし始める。
俺もユーリもその中の一人だった。
「でも成人したからって大学まで卒業しなきゃ出られないでしょ。エンリはまだ高校生なんだからわたしと一緒!脱獄ならぬ脱学するの♪」
「退学とは言わないのかよ」
「あら、ここは退学なんてできないから全寮制で魔法壁の外へは行けなくなってるんじゃない。こんなの監獄と一緒よ。だから脱学♪」
なるほど。
なんて思ってしまった。
まぁこれだけ聞くと嫌な学校だと思われるが、実際はそうでもない。
学校の外ではいろんな種族がいて、それぞれ他の種族と干渉しないように住んでいる。それが暗黙の了解のように。どのくらい前か知らないが(歴史の授業は嫌いなんだ)種族間で戦争が頻発していたらしい。それでどこかの誰かさんが戦争しても互いに利益が出ないということで戦争をやめるよう全ての種族を説得し、納得させ、干渉することがなくなった。
しかし、それでは国が発展しないと考えた王が、全ての種族が通える学校を設立した。子供たちは物心がつくかつかないかの頃に、親の影響を受けないように、小さい頃からこの魔立王都学院に入学して平和を学ぶ。平和とは、他種族と協力して助け合い、争いを生み出さないこと。そう教育されてきた。それで王都学院には多数の種族が分け隔てなく一緒に暮らしている。歴史の授業で(ぼんやりだが)いろんな種族のあやまちや良さを学んできた。それを踏まえた上で僕らは仲良く暮らしている。
「………邪魔するぞ」
と、ボソッと部屋のドアの片隅からおかっぱの少女?が顔を除かせて呟いた。
「ウェン!いたならすぐこっちこいよ!」
「………まだ準備できてないのか?」
これまた小さい声で呟く。ウェンの言葉を聞き取るのは至難の技だ。幼馴染みの俺でさえ聞きとりに半年かかった。ちなみにこいつは女ではない。正真正銘男だ。なんでおかっぱかは知らないが、こいつの趣味は謎が多い。いつも3人一緒にいるが、たまにどこかにふらっと行って消える。俺より歳は1つ上でお兄ちゃん的存在なのだが、なにを考えているのかはサッパリわからない。
「できてるよ。ちょうどお前を待ってたところだ」
俺は上着を羽織り、左の腰に剣をさげ、
「俺らのもう一人の幼馴染みを探しにいくぞ」
俺は決心を固め、部屋を出ていった。
ユーリとウェンもそれぞれ武器を見てから決心を固めて俺のあとに続いた。




