本能寺に火を点けたら、異世界に転生した俺ガイル
この作品に登場する人物や性格は全てフィクションです。
「光秀! 光秀はおるか?」
主君である信長に呼ばれた俺、明智光秀は信長の前に座り深々とお辞儀をする。
「ここに――」
「そちに話がある。他の者に聞かれると非常にまずいのだ。もっと近ぅ寄れ」
俺は少し信長様に近づいたが、信長様は手招きをやめない。
どんどん近づくせいで、とうとう顔と顔が密着しそう――タグにボーイズラブ
のキーワードをつけなくてはならなくなりそうな距離。
「信長様。とりあえず顔を赤らめるのはやめてください」
「ああ、すまない」
信長様は俺の耳元に口を近づけ――
おもむろにフッと息を吹いた。
「信長様!? 私をおちょくっているのですか?」
「いや違うぞよ、これはちょっとした深呼吸だ」
信長様は深く深呼吸をした後、俺の耳元で小声で――
「暗殺してもらいたい奴がおるのじゃ」
「なんですって!」
信長様は「しっ!」と人差し指を口に当て。
「暗殺に失敗したら他の者に頼む。だが成功すると、お主はその者の忠実な部下
から追われることになるだろう……」
「なんなりとお申し付けを! ところで暗殺はどこで誰を襲えばよろしいのかと」
信長様はまた、俺の耳に甘い吐息を吹きかけた。
「私だ」
「は……?」
「異世界に転生したい」
「は……?」
信長様から命じられた用件は言葉にすれば簡単なことだった。
羽柴秀吉の支援に行くふりをして、本能寺を襲い信長様を追い詰め自害させろ
――との無茶を通り越して無謀な命令だった。
だがその理由が異世界に転生したいからって……そのために俺のこの長年培っ
た功績や土地を全て投げ出さなければならないとは。
「やれやれだぜ」
「光秀様。羽柴様の軍は――」
「敵は本能寺にあり!」
結果は予想以上に骨が折れた。
俺はてっきり、信長様はもう自害する準備ができているとばかり思って本能寺
に乗り込んだのだが「逆賊! 逆賊!」とか散々罵られて、しかも信長様の部下
数人に顔バレした。
――もう俺絶対逃げられないじゃん。
しかも馬に乗って逃げているところを、農民に襲われ――
当たり所が悪かったのか即死してしまった。――無念なり!
畜生。こんな命令を受けなければこんな無様な死に方はしなかったのに……
「恨みはらさでおくべきか!」
目が覚めると俺は広大な草原で一人で倒れていた。
ここは天国か――はたまた地獄か……
俺は重い老体を起こそうと――ん? すんなり起き上がれるぞ。
ここのところ寝床から起き上がるのも苦労するくらい身体にガタがきていたの
だが……
「なんだこの身体は!?」
腕は太く色黒で、まるで数十歳くらい若返ったような健康的な肉体。
しかも鎧は凄く軽くて超便利!
何かこの日本刀、振るとビーム出るし!
矢とか狙わなくても何メートルも飛ぶし、しかもいくら射っても補充される!
「俺tueeeeeeeeee!」
転生者やトリップ者は通常ギルドや王国に仕え、数人のパーティを組んで魔王
討伐やモンスターの討伐を行うのだが、彼は全く違う新しいやり方で討伐隊を作
っていった。
自分と波長が合う者を次々と仲間として、何百万人という多勢の軍で城を囲む
という今までの常識を超えた新しい戦法で次々と異世界での功績を培っていった。
この戦法は後に「アケチ戦法」と呼ばれ、この世界での一種の戦法として歴史
書に刻み込まれることとなった。
光秀はその後も転生を繰り返し、八つの異世界の魔王討伐と統一。
五つの異世界の秩序を整えるNAISEIを成功させ。
後に「あっぱれ勇者」と呼ばれ異世界に君臨する伝説の勇者となりました。
ただ光秀には一つの疑問が残る事になった。
――はて? 信長様はどこの異世界に転生したのやら……