おばちゃん
「今日はナンパでもしに行くか」
バイトが休みの日だから俺は、
ちょー暇だった。
外はめちゃくちゃいい天気。
小鳥が「ピーピー」って鳴いてる。
んで、いい機会だしナンパでもするかって考えていた。
・・・ピリリリリリリリリッ
いきなり俺のケータイが鳴った。
「うぃーす!暇だからナンパでもしに行かねぇ?」
俺の友達からだった。
つーか、同じこと考えてる俺らって・・・。
まぁ、いいか・・・。
「おぅ、いいぜ。んじゃ、午後1時にスーパーに待ち合わせな」
・・・午後1時まであと3時間あるな。
てことで、寝るか。
ピンポーンピンピンピンポーンピポーンピピピピピポーン・・・
玄関のチャイムが鳴った。
どんだけ鳴らすんだよ!!
「はぁい?なんすかぁ(-"-)?」
ちょっとキレ気味に出てみた。
・・・あれ?
あたりを見回したが、誰もいなかった。
「ピンポンダッシュしてんじゃねぇよ!!」
今度は、ほんとにブチギレた。
いったい誰がこんなことするんだよ!
・・・って、犯人は目の前にいた。
「げげげ、げん?!」
「いっしょにあそぼ」
げんは平然とした顔をしている。
「げん、今日は無理!また今度な?」
俺はピンポンダッシュではなかったので、
怒りは一応、治まった。
「いっしょにあそぼいっしょにあそぼ」
・・・しつこいなぁ。
「無理だって!いい加減にっ」
「あそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼ」
げんはものすごい力で俺に抱ついてきた。
「ギブギブギブ!げん、やめろっ!ギブゥ―!!!」
「うっさいわ、ボケェ!!」
俺が叫んでいるのを聞いて、隣近所の人が出てきてしまった。
もちろん、おばちゃん・・・。
「すすす、すみません!で、でも・・・」
「言い訳はいらない!さっさと家の中に入れぇー!!」
「えええっ?!でも、げんが・・・」
・・・いなかった。
「げんって誰やぁ?さっきも一人でなにしてたんだぁ?」
ぇ、一人?
「俺に抱きついてた子供いなかったですか?その子が
げんっていう子なんですよ!」
俺は一生懸命に説明した。
説明し終わった後、おばちゃんがなぜか泣いてきた。
「おおお、おばちゃん?」
「おおおおおお、げんやぁあああ・・・・」
「げんとなんか関係あったのか?」
「げんは、5年前ここで事故に遭って死んだんだよぉおお…」
「死んだ?!」
俺は立ち話もなんだと思って、おばちゃんの家にお邪魔した。
「で、げんはおばちゃんのなんなんですか?」
「・・・甥っ子だ」
「ゴクッ・・・」
「遊び半分で道路に出たんだろうけど、そのときトラックが・・・。
げんはそのトラックにはねられて、ひきずられて、死んだよ。
痛かった、苦しかっただろうねぇ・・・。」
おばちゃんは天井を見上げながら話す。
きっと、涙をこらえているんだろうな・・・。
「おばちゃん・・・」
俺ももらい泣きしそうだった。
「・・・ぼ」
おばちゃんがぼそぼそと天井を見上げながら言う。
「おばちゃん?」
「しょに、ぼ」
「え?」
「いっしょにあそぼいっしょにあそぼいっしょにあそぼいっしょにあそぼ」
「ぅ、うわぁああああああああああああああ」
おばちゃんは「いっしょにあそぼ」と言いながら俺に、襲いかかってきた。
さっきまではなかった鎌を持って。
ザクッザクッ
おばちゃんが鎌を勢いよく振り下ろす。
俺、殺される?!
そう思った俺は無我夢中で走った。
棚に小指ぶつけても、誰かが噛んだガムを踏んでも。
俺は交番に急いで駆け付けた。
「助けて!殺される!早く助けて!」
交番の人は急いで中に入れてくれた。
少し時間がたって俺は交番の人に訳を話した。
幸い、おばちゃんは追っかけて来なかった。
・・・そして、おばちゃんは捕まった。
おばちゃんの家にはたくさんの麻薬があったらしい。
多分、げんの話も嘘だったのだろう。
・・・あれ?
俺、何か忘れてねぇか?
・・・ま、いいか。
今は、午後3時。
今日はもう疲れたから寝よう。
スーパーで待っている友達に次の日、めちゃくちゃ怒られる夢を見た。
正夢に・・・、ならないでほしいなぁ。