【結び】
アザミは窮地に追い込まれます。
「何も証拠がない」
男を追い返す事で、頭がいっぱいだったため何も考えていなかったのです。
オリーブは、アザミを見つめています。
アザミも、オリーブを見つめます。
「何かあるはず!何か!」
しかし、101日前に拾った、これが事実なのです。
アザミは顔が青ざめていきます。
男は余裕の笑みを浮かべ、立ち上がろうてしました。
すると、御夫妻の奥様が言いました。
「よく似てますわ」
アザミは意味が分かりません。
奥様は続けます。
「髪は銀色、肌は真っ白、お二人とも、そっくりですわ」
アザミとオリーブは顔を見合わせました。
確かに似ています。
ご主人も言いました。
「うん、似てる。これだけ似るのは珍しいだろ」
アザミは驚きました。
何故か御夫妻が味方をしてくれていると気づいたからです。
男は座り直し言います。
「似てるとか、そんな馬鹿な理由があるか!こっちは契約書があるんだ。俺が正しい」
ご主人が答えました。
「その契約書内容だけで判断はできない」
アザミとオリーブは顔を見合わせたまま驚きました。
男は頭にきて怒鳴っています。
しかし、御夫妻は受け付けません。
確実にアザミとオリーブに幸運が向いてきました。
男は「チッ!」と大きな舌打ちをし睨みつけ言いました。
「だが、こいつは伝統ある奴隷一族だぞ」
御夫妻は、少し戸惑います。
男は、話しだしました。
「家の事をさせるのに、奴隷を買いに行ったのさ。お勧めを聞いたら、その時の売人が言ってやがった」
周りは静かに聞いています。
しかし、アザミだけが顔色が悪くなっています。
男は、話し続けます。
「売人が言うには、こいつの家計は全員が奴隷なんだと。兄、姉、弟、妹、とにかく両親は売りまくって金を稼いでるんだとよ。だから、売人の間でも有名になっちまったんだ。伝統ある奴隷一族ってな」
あまりにも、淡々と話されてしまい御夫妻は唖然としています。
オリーブはアザミを見ました。
アザミは、汗を大量にかき様子がおかしいです。
オリーブは驚き「アザミ!?」と、言いました。
皆がアザミに注目します。
皆の目にもアザミが、奇妙にうつりました。
男が皮肉り言いました。
「よく、似てるな。お前も、伝統ある奴隷一族なんだろ?」
男は、ただの皮肉のつもりでした。
しかし、アザミは叫びます。
「嫌よ!嫌!!思い出させないで!!!」
冷静なアザミではなく、悲鳴のような声で騒ぎます。
「やめて!嫌!何で思い出させたの!?私は、自由よ!もう、やめて!!」
御夫妻は驚き固まりました。
男も、まさか一族だとは思わなかったので驚き固まりました。
アザミは泣き叫びます。
「誰も信じないわ!人間なんて汚い奴ばかりよ!!」
アザミは泣き崩れてしまいました。
すると、オリーブがアザミに言いました。
「泣かないでアザミ」
オリーブの声にアザミは少し反応しました。
オリーブは聞きました。
「アザミは…、僕のお姉さんですか?」
アザミはピタリと泣くのを止めました。
しばらく、沈黙が続きます。
アザミは、顔を上げオリーブに言いました。
「今、確信したわ。オリーブは私の弟よ」
オリーブは、驚いた顔です。
アザミは確かめるように言いました。
「もしかして、ってね。ずっと思っていたの。ごめんね、今まで黙ってて。オリーブは私の弟よ」
アザミはそう言うと、オリーブの頭を優しく撫でました。
オリーブは、驚いたままです。
御夫妻は黙ったまま、アザミとオリーブを見つめています。
男は罵りました。
「とんでもない奴らだ!親がイカれてる奴らの子供だぜ。やばすぎる!まさか、伝統ある奴隷一族に会えるとはな!」
この言葉に、ご主人が言いました。
「いい加減にしなさい。そんな汚い言葉を使うな。彼女達は同じ人間だ。蔑むのは止せ」
男が言い返します。
「うるさい、てめぇの説教なんざ聞きたくない!俺は、奪われた被害者だぞ?ちゃんと、返してもらえれば許してやるよ」
アザミは力なく言いました。
「だめよ。オリーブは渡さない」
男は、アザミの言葉を無視しオリーブに言いました。
「おい、帰るぞ」
オリーブは、唇を噛み締め涙を我慢しています。
御夫妻は、見つめています。
男がオリーブに怒鳴りました。
「おい!殴られたくなかったら早くしろ!」
すると、オリーブは男を見て叫びました。
「殴って下さい!そしたら、ここにいさせて下さい!」
その言葉を聞き御夫妻は決心しました。
男が殴ろうとした、瞬間にご主人が叫びました。
「よし!私が100,000で買おう!!」
男は止まりました。
ご主人は、更に言います。
「駄目か…。よし!200,000でどうだ!?流石に、これ以上は…」
ご主人は、少しわざとらしい演技をしました。
200,000といえば、庶民にとっては大金です。
男は完全に金に目がくらんでいます。
ご主人は、とどめをさしました。
「駄目かぁ〜。仕方ない、違う所で買うとしよう」
男は、勢いよく言いました。
「250,000!これなら良いぞ!」
ご主人は、真剣な顔で言います。
「商売上手だな!くそ、よし!わかった、それで買おう!」
何と、金で簡単に決着がついてしまいました。
ご主人は、財布から金の札束を取り出し男に渡します。
そして、男から契約書をもらいました。
男は、今までの態度が嘘のように嬉しそうにオリーブに言いました。
「お前を買って良かったぜ!まぁ、姉ちゃんと上手くやりな」
男はご機嫌で帰っていきました。
オリーブもアザミも、呆気にとられています。
ご主人は言いました。
「気分を悪くしただろう。だが、あいつのような奴には金が1番有効なんだ。すまないな、嫌なものを見せて」
アザミは弱々しく答えます。
「いえ、ありがとうございました。何とお礼を言えばいいのか分かりません」
奥様も言いました。
「ご苦労なさったのね。謝る事ありません。貴女達は純粋な心を持ってるわ。お礼だなんて要りません」
アザミは、また泣き出してしまいました。