FORTHCASE テスト消失事件
かなりい久しぶりでグダグダです。スイマセン!
「はあ、憂鬱だ」
「憂鬱だね」
「憂鬱ですね」
俺たち三人は明らかにだらけた態度でいた。
何故って?テストがあるからに決まってんだろ?
冬休みが終わって最初の確認テスト……憂鬱だ。面倒だ。
「っていうかさ~、テストとかはない方がいいと思うんだよね。いらないよね」
「まあ、そうですけど……やらなかったらやらないで、内申に響きますから……留年は嫌でしょ?」
「まあ、な。再来年受験の俺には辛いんだよな」
「私、来年だよぉ」
「「いやいや、もう取り返しつかないしょ、先輩は」」
「後輩が虐めるよぉ!」
さめざめと泣き始める小野宮先輩を俺たちはスルーして、皆で割り勘したTVで録画した番組を見始める。
「ガキ使でいいか?」
「いや、Fateにしません?」
「そういや、一挙のあったな」
「ねぇ、女の子が泣いてんだよ?そこは無視すんの!?」
「ああ、そういえばポッキーありますよ。食べますか?」
「食べる!」
「ホント、簡単に誘拐されそうですね……」
「ああ、そだな」
俺と羽海野は呆れ、更には一抹の不安を覚えた。
それも仕方はないだろう。まだまだ少ないとは言っても、色々と首を突っ込んでいるんだ。何時、何処で、誰が、どんな恨みを抱いているかはわかった物じゃない。
だからこそ、この先輩の能天気さには危機感を抱いたのだ。
だけど、
「どしたの?暗くなっちゃって」
「別に何でもないですよ」
この先輩の無駄に明るいところはある種の救いであるには違いないだろう。
だけど、その明るさだけでは解決できない事はある。それは……
「おーい、誰かいるか?」
「いまーす!今、開けるんでちょっと待って下さい」
「今日は全員いるのか?ちょうどいいな。悪いが、少し大変なことになったんで手伝ってくれ」
面倒事だ。
「なにがあったんですか?えっと……なかむー先生」
代表して小野宮先輩が質問してくれたが……
(めっちゃ目が輝いてるよ、この人……)
その顔は期待で満ちていて、先生すらも軽くひいていたのは本人だけが知らない事だろう。
だが、中村先生はすぐに気を取り直し、すぐ近くのいすに座り話し始めた。
「今日ここに来た理由はな、明日の小テストの事なんだ。……情けないが、昨日盗まれてしまってな。それに問題は今から作り直すわけにもいかんし、こんな不祥事が保護者の皆さまにばれた場合は面倒なことになりかねん。そこでだ」
そこで一度話を切り、テーブルに頭をつけながらまた話し始めた。
「頼む!犯人を捕まえてくれ!とは言わんが、どうしてもテストだけは取り返さなければならないんだ!」
「はぁ、またなんともメンド……」
「「わかりました!」」
「そうか頼むぞ!」
「あれぇ~、俺の意見は?まあ、やるからいいけどさ」
「じゃあ、頼んだぞ」
それだけのやり取りを交わし、中村先生は部室を出ていった。
それをすごい笑顔で見ながら、二人は意気揚々としていた。
正直、恐い。
「な、なあ、なんでそんな上機嫌なんだ?」
「わからないの?」
「君亜先輩。これはもう、先生たちだけの問題じゃないんですよ」
「はぁ?」
「何故なら……この事件で盗まれたテストは」
「君亜の学年のテストだけのはずなのよ!」
「ああ!という事は俺、明日テストやんなくていいんじゃ……」
「そう、だからこそ……」
「必ず見つける。君亜だけ逃げるなんて許さない」
二人からは黒く淀んだオーラがとめどなく溢れていた……ように見えた。
「まあいいや、まずは状況整理だな。テストは昨日盗まれて行方不明……って言い方もおかしいけど、要は見つからないという事だな。じゃあ、なんかないか?」
俺はそう言いながら紙を取り出し、事件状況を書き始めた。
「シュレッターで紙くずにしたんじゃない?」
「それもそうか、じゃあ確かめ「てきました!」早くねぇ!?」
「テスト思われるものはないですね。それよりも、いい事がわかりました。これです!」
「それは……高等部の校章?」
「そうです!という事で、犯人は高等部の人に絞れますね」
「つまりは容疑者は千チョイか……更に言えば俺の学年だとしても三百強かぁ」
さっと、それらを目の前の紙に書き込む。
「外部活の生徒は除いて考えてみない?だって、昨日はすごく晴れたし、ほとんどの部活動がやってたんだよ」
「そうなると、帰宅部と室内部活。結局は俺が犯人であることを考慮しても、百人いくかいかないぐらい……それに、校章をつけていない生徒か」
それもひたすらに書き込む。そうして気付けば、もうほとんど事件は終わりを迎えているように思えた。
だからこそ、羽海野からあんな言葉が出てきたんだと思う。
「それなら早く終わりそうですね」
「ああ、案外あっさりだったな……拍子抜けするほど」
「たまにはそれでもいいじゃないですか。先輩は警察とのかかわりが俺たちより多いせいで少し深読みしすぎているんですよ」
「それも、そうか……」
俺はふぅ、と息を大きく吐き出す。
そしてもう一度紙を見直して、中村先生へと渡した。
―――次の日。
結局テストは行われなかった。目星をつけた生徒全員が無罪で、誰もテストなどは持っていなかった上にアリバイすらあるという状況だった。
「やっぱり、何か見落としてる。でも、なんなんだろう?」
俺はもう一度紙を見て考える。
・一昨日にテスト用紙が盗まれる。しかし、破棄された様子はなく、職員室には校章があった。
・一昨日の天気は晴れ。全ての外部活が活動をしていて、帰るとき以外には校舎に入った者は無し。
・以上の事から中部活で校章をつけていない生徒と推定。だけど、犯人はいなかった。
うーん、こういうときはどうすればいいんだっけかな?
「どうしたんだ、斎藤?」
「ああ、海老先。いや、ちょっと煮詰まっちゃいまして……」
「テストの件かい?それなら一ついい案があるよ。何事もあるがまま捉えないで捻くれて捉えるといいよ。逆転の発想とかね」
「……捻くれた考えに逆転かぁ。そうすると……」
・一昨日にテストが盗まれる。誰も人目につかないで処理しているかもしれない。職員室には校章。しかし、犯人の物ではない可能性がアリ。
・一昨日の天気は晴れですべての生徒が部活に出たとは限らない。だが、限りなく低いとみてよい。
・以前は校章の有る無しで犯人を選んだが、実は校章を持っている。校章の無い人は犯人の共犯の可能性がある。
「そうか、共犯でアリバイを作ればいいんだな。それならできる」
俺はそうつぶやくと真っ先に中村先生のところまで走った。
「中村先生!昨日の容疑者全員、いますか?」
「ああ、いるけど……どうしたんだ?そんなに慌てて」
「わかったんです。犯人の手口が……」
それに目を丸くしながら、言葉を紡ごうとする中村先生。
「それは一体……」
しかし、俺はそんな先生の声を遮り、続けた。
「今から言います。まず、皆さん。俺の質問には正確に、嘘を入れずに答えてください。一つ目、一昨日、もしくはその前の日にまでに誰かに交渉を貸した人はいるか?二、三人な。二つ目、それを誰に貸したかをこの紙に正確に書いてくれ。そして三つ目、外部活の人?以上だ」
俺はほとんど捲し立てるように言い切り、質問に残ってしまった最後の一人を見つめた。
「白井さん。あなたはなぜ、他人に罪を着せてまでこんな事をしたんだ?」
「い、いいがかりよ!それにアンタ、昨日は外部活は犯人じゃないって言ったじゃない!」
「ええ、実行犯ではないという意味で言いましたね。あなたはサポートした側だ。だから、実行犯になれるはずがないんだ」
「証拠は!?証拠がないなら戯言じゃない!」
「では、証拠提示のためにあなたが書いた人を直接呼んで話を聞いてみますか?」
「うっ」
そして見つめたまま言いきった。「あなたと実行犯、水田さんがこの事件の犯人だ」と……。
言いきった途端、白井さんが膝から崩れるようにへたり込んだのを俺は無視した。
犯人確定の日、水田さんの自宅からテストは見つかった。俺が想像していた束の物とは違い、ギリギリまでは原本化していたから持ち運びは楽だったらしい。
それから、テストは翌日に行われた。
なぜ、テストを盗んだかは意外なほど簡単だった。
部活をやめたくなかった。二人とも共通の意思だったのだ。
だから、俺は少しだけお節介をした。
今は白井さんと水田さんに勉強を教えている真っ最中だ。
「えっと、この原子の値が2?」
「そうそう、それからこの原子の値を引けばいいんだ」
「斎藤くん、これは?」
「この問題は、キツネが虎に「私が先行する」って言った時のキツネのたくらみはなんだっていう問いだから。答えはウの「虎を従えるように見せることでキツネは百獣の王を演出する」だな」
前に羽海野が女子を二人侍らしていたが、正直これは辛い。
だけど、自分でまいた種だ。自分でなんとか「「あの(じゃあ)、これは?」」できればいいなぁ。
これは斎藤君亜が書きました。
感想等お待ちしております。
次回の羽海野先生に色々期待してください。
次はもっとまともな推理物を書きたいと心から思っていますから!