SECONDCASE 遺体消失事件
斎藤君亜の作品になっております。
よろしければ、感想などをくれると嬉しいです。
またまたサークルから俺の事件は始まった。
今度は小野宮先輩がいる。
「でねっ、若本先生ってばさー安藤先生待ってる時にそわそわしてたんだよっ!」
「はぁ……」
ちなみに何故先輩が若本先生から「言わないでくれっ!」って言われてた事を俺に言っているのかというと……事件に呼ばなかった後藤さんに対する腹いせと俺への腹いせ、そして仕事を押し付けた若本先生への腹いせだ。見事に私怨だらけだ。
んっ?羽海野……一足先に逃げたよ。
「結城さんに呼ばれたから行ってきます」
って言ってな。俺も都合よく事件がこないかな?
でも来たら来たらでこの先輩が……ついてくるよな。
「はぁ~」
俺はここに来てから何度目かわからない溜息をついた。
それに気付かないのか……それとも無視しているのか、上機嫌で話しを続ける先輩。
こうなったら……
「先輩」
「なに?」
「冷蔵庫のプリン食べます?」
「さっき食べたよ」
「……じゃあ、エクレアとかは?」
「それは一週間前に目の前でみんなで分けて食べたじゃん」
「…………今の冷蔵庫の中身は?」
「えっとね、君亜が買ってきたミネラルウォーターぐらいじゃないかな?」
「はぁっ!?麦チョコは!」
「あれ、賞味期限切れたよぉ」
「まじかよっ!」
「もったないから羽海野くんと食べたよ?」
「だから、なんで?!」
「甘いの好きだから?」
「あっ……」
俺は忘れていた。
この先輩の愛すべき欠点?という物を……この人は無類の甘党なんだ。
だから、俺が管理していたはずなのに……もしかしたら、先輩、俺が後藤さんに呼ばれた時に食べたんじゃあ……。
俺はガクッとうなだれて、サークルの部室を出ていこうとした。
「君亜、コンビニ限定で期間限定のスイーツお願い」
「はぁーい」
俺は生返事で流し、コンビニに行こうとしたら目の前でぶつかった。
「斎藤、後藤という刑事さんが呼んでたぞ」
「だからって、ここに来るなんて……御苦労様です中村先生」
「いや、そう言えばさっき小野宮もいなかったか?どうせなら」
「いいっす!俺一人で十分!」
「そうか……まあ、頑張れよ」
中村はそのまま職員室へと向かった。
俺は不謹慎かもしれないが嬉々とした足取りで後藤さんのもとへと向かった。
◆
「わざわざすまないね」
「いえいえ、全然オッケーですよ」
「にしても、警察が高校生に頼るなんてなんか情けないね」
「別にいいんじゃないんですか?誰だって、他人を頼りにしますから」
「ホント、情けないね」
「あのっ、暗くなりそうなんで、進めていいっすか?」
「ああ、いいよ」
はっとした様子を一瞬だけ見せ、すぐに刑事の顔に戻った後藤さんの話を聞いた。
内容をまとめるとこんな感じだ。
・今日の午後一時に旅館『胡桃館』の店主、有明義弘が首をつったっ状態で見つかった。
しかし、第一発見者が警察を呼びに行った三分ほどの時間に死体は消失。
・被害者に恨みを持つ人物は外にいない。
いるとしたら家族の方らしい。
そこで容疑者として浮かんできたのが女将の有明胡桃さん、一人息子の有明義信さん、義信さんの奥さん有明美代さんの以上三名。
・死亡推定時間は不明。
しかし、一時前後の様子ははっきりしている。
胡桃さんはその時間帯、部屋の掃除をしていたらしい。尚、目撃者は無し。
義信さんはその時間パチンコ店で臨時のアルバイト。帰ってきたのが一時十五分。
美代さんは胡桃さんとは違う場所で客相手に接待。
今のところ一番怪しいのは胡桃さんらしい。
・現場、目撃情報
一時前後にブチッという音が旅館から聞こえたらしい。だけど、確証は薄い。
ロープは電球をつけるプラグにに結ばれていた。
「これって、自殺にしか思えませんね」
「だよね……ほとんど自殺で決まり始めてんだけど、あそこの亭主と知り合いの僕にはなんか納得できないんだ」
「……思いっきり私情ですよね?」
「認めざるおえないね」
「……まあ、後藤さんは自殺の線は薄いと……わかりました」
まずは、気になる点を推理……アリバイがはっきりしている容疑者二名。とくに義信さんは犯行不可能。除外っと……残るは胡桃さんと美代さん。
義弘さんを時間差で殺せるトリック……例えば、外に縄で結んだ石を吊るし義弘さんを縄にくくり、殺す。
でもこれだと、まるで自殺だ。
じゃあ、どうやって?
簡単に殺せるんだ?
「現場に行くかい?」
「あぁ、はい」
俺が苦戦しているのがわかるのだろう後藤さんは俺を車に乗せ、現場へと運んだ。
「んっ……?」
「来たのかい?不審点が」
「ええっ、恐らくですが……被害者が消えた謎の仮定が一つできました」
「それは後で聞こうか」
「そうしてくれると嬉しいです」
某名探偵たちも警察を驚かすのが好きなように俺もそういうのは好きだし。
ということで現場へ到着。
いやぁ、本当に何にもない。
さて、まずは一つの疑問を解消と行きますかね。
俺は足で床を少しづつ小突いていく。そして、ある点に達した時、その床を開く。
その下には
「排水溝……しかもかなり急な流れだ。しかし、なんでこんなのがむき出しでこの旅館の下に?」
「恐らく、昔の川でしょう。埋まっていたのを掘り当てて、今回の事件に利用したのでしょう。あと、これも恐らくですが、犯人は二人組ですよ」
「なんでそんな事が……?」
「いや、それより、犯人が遺体を回収する前に……後藤さん!GPSの反応追えますか!?」
「ああ、追えるけど……」
「じゃあ、この付近一帯の、川を流れ物を探して下さい!」
「そうか!そこに遺体が!」
「恐らく、ですが……早くしましょう!」
「わかった!」
俺たちは車に乗り込み、走った。
走った先になにがいるか、それは簡単だ。
このくだらない事件とそれを実行した二人の元へと。
◆
「そこまでだ!」
「もう貴方の仕業だってわかっているんですよ」
俺たちは犯人に向かって話しかけた。
犯人は義弘さんを放り、こちらを見る。
「あら、何のことかしら?」
「この場面を見られて、その余裕ぶり……顔の皮の厚い事だな」
「おほめにあずかり光栄です」
「褒めてねぇよ。だが、うっかり騙されるところだったよ」
「なににですか?」
「これは結構穴だらけの作戦だった。まず穴の一つ目、それは時間差に見せる事が必要という事。次に自分の痕跡が残ってしまう事。更に言えば、この事件は準備より後処理に困る事事」
「お見事ですわ。新米の刑事さん?」
「違う。俺はサークルθの一員で自称探偵だ」
「良くはわかりませんが、私を逮捕するのでしょう?」
「ええ、貴方と美代さんをね」
「美代さんには犯行は無理よ」
「いいえ、可能です」
「無理よ!」
「彼女は貴方が警察を呼ぶその前に、義弘さんを流した」
「それは……」
「なぜか?そんなのは簡単だ。理由は自殺に見せかける事ができないから。それだけだ」
「そんなの……」
「あなたは後ろから義弘さんの首を絞めたんだ」
「そうよ」
「それで本当は警察を呼んで事情を話し、自首するつもりだった」
「……」
「だけど、美代さんのせいでそれはできなくなった」
「……」
「もう、認めてください」
「ふっ、証拠は?」
「今、貴方の車の中にある美代さんの携帯ですよ。多分彼女はなたにこう言って渡したんでしょう「これをたどってあいつを山に埋めれば完璧だ」と、それに付け加えて「私も一緒にやるから!」ですかね?」
「ふふふ。やっぱり、私には無理だったのでしょうか?殺人なんて……」
「正直な感想を言えば、美代さんがいなくて、貴方が捕まる気が無ければ……この事件は迷宮入りのはずだった」
「力を合わせたのが裏目に出たのですね」
その後、後藤さんから動機を聞いた。
美代さんは義信さんと結婚する前に義弘さんに性的暴力を受けたらしかった。それで、たまたま見かけた胡桃さんの犯行を手伝ったそうだ。
胡桃さんは義弘さんの女癖の悪さを最近になって聞いて、それが美代にまでわたったと聞いて殺すまで至った。
それは酷く、義信さんの心を傷つけた。
だけど、「母さんと美代が戻って来るまでには新しい仕事を見つけますよ。みんなで仲良くできる仕事を……」
そう言っていたそうだ。