未確認飛行物体の謎
小野宮ですっ。更新が遅れて大変申し訳ございませんでしたっ。
いつも通り下手な文章ですが、読んで下さると幸いですっ。
感想等ございましたらどんなものでも構いませんので頂けると嬉しいですっ。
それではよろしく御願いしますっ。
薄暗い部屋に煙草の煙がたゆたう。その煙は僅かにカーテンから差す日の光に照らされて銀色に光り、そして埃の舞うその部屋の中に散っていった。
物や芥が辺りに散らばったその薄暗い部屋に私は閉じこめられていた。手足は縄のようなもので縛られていて動けない。
そしてそんな私の周りには、同じような状態の子どもが数人。年は私と同じかそれ以下のようだ。
部屋の中心には煙草を噴かす男が一人。顔はよく見えないが、口元が歪んでいる事だけは分かった。
そして男の手には私の携帯が握られている。その画面には、斉藤君亜という文字と11の数字の列が並んでいるのだった。
現在私は監禁されている。
所以はというと、今朝私は不覚にも誘拐されたからである。
後輩たちにあれほど注意されたというのに儘に誘拐されてしまったのだ。
全く情けないことこの上ないが、しかし今になってはどうしようもない。身動きもとれなければ尚更だ。
だから私は自分に出来ることをする。君亜たちがきっと私たちを助け出すと信じて静かに待つ。
ただそれだけしかないが、しかし私はそれを一心に思い続ける。
何故なら約束したから。君亜が必ずプリンを奢ってくれると―――。
・・・・・・まぁ、そんなわけで格好良く述べてみたが、じっとしていられないのが私というものである。さっきの覚悟は数分前に折れた。今は床でごろごろと転がりながら、うにょーっと奇声を発している。犯人らしき男は私のことを訝しげに眺めていた。今度は歌でも歌ってみる。すると今度は犯人がそんな私を見て諦めたように溜息を吐いてそっぽを向いた。犯罪者にまで呆れられるとは、私はやっぱりどうしようもない人間のようだ。
するとそんな私を見て、近くにいた子どもが可笑しそうに微笑んだ。そして呟く。
「やっぱりおねえちゃんって不思議だな。探偵みたいだったり、エスパーみたいだったり、子どもみたいだったり・・・・・・。おねえちゃんと一緒にいると何だか楽しいよ」
そう言った少年の頬には涙の跡がはっきりと残っていた。私はそれを見て悲しく思う。しかし私は少年ににぃっと笑って見せ、そして呟いた。
「私もしゅんくんに会えて本当に楽しかったよっ」
そして私たちは微笑み合ったのだった。
この少年とは今朝出会った。通学路の途中にある公園で出会ったのだ。
偶然にも今日私と知り合ってしまった少年は、私に巻き込まれて共に誘拐されてしまった。君亜に巻き込むなとは告げたが、本当はそれは少年の本心に違いないのだ。
そう、被害者は私じゃない。馬鹿な報復に巻き込まれたこの子たちだ。私はただの警察の捜査にたかが高校生が首を突っ込んだ事による自業自得なのだ。
それを思うと何だか自分や犯人に腹が立ってくる。自分の無力さに嫌気がした。
そして段々その怒りの矛先は犯人へと向かい、私はこの魯鈍犯人について考え始めていた。
それから思い出すのはやはり今朝の記憶だ。
私がこの少年に会った、
私がUFOを見た今朝の記憶―――。
「おねーちゃんっ!あさだよぉー!おきてぇー」
身体が大きく揺れ、目を覚ますと、そこには目の前に弟の顔があった。
「おねーちゃんっ!おきてぇーっ、あさぁー、おひさまがおきてるよぉー」
私を起こすためにそう声をかけながら、私の上に乗っかって馬に乗っているようにぐらぐらと私の身体を揺らしていた。どうりで重いわけだ。
「うー、今起きるから降りてー」
私は眠そうに目を擦りながらそう呼びかけた。しかし弟は何故か降りなかった。
「おうまーさんー、ぱっかぱっかぁー、ひづめのおとがぁー、おおうなばらになりひびくよぉー、なぽれおんがぁー、おうまさーんでやってくるぅー、だけどぉー、なぽれおんはぁー、およげないのさぁ~♪」
突然意味の分からない歌を歌い出した。私の身体をぐらぐらと揺らしている。
困った私は弟にとっておきの必殺技を繰り出すのだった。
「・・・・・・ガッチャマーンが始まっちゃうぞーっ」
私がそう呟くと弟はハッと思いだして勢いよく私の上から飛び下りた。
「おわぁー、がっちゃまんはじまるよぉー、あーいけいけがっちゃまーんっ!びゅーんっ!」
私の部屋を勢いよく飛びだしていく弟を見送ると、私は伸びをしてベットから飛び下りた。
「のわぁー、ガッチャマンが始まっちゃうよーっ!」
テテンテテンッ、テテンテテンッ、ガッチャマーン~♪
「がっちゃまーんっ!しゅびゅんっ!」
「しゅびゅんっ!」
私は弟との朝の日課であるアニメを見ながら朝食を食べる。今日のメニューはトーストに目玉焼きという通称ラピュタパンにコンソメスープだ。セルフサービスにヨーグルトも食卓に並んでいる。ヨーグルトはすでに確保済みだ。
私が朝食をもぐもぐと食べていると、アニメはすぐに終わりを告げた。流石1分番組は終わるのが早い。
すると弟がテレビの前から帰ってきて食卓に着いた。そして当たり前のように目の前にあったプリンを取る。私はそれを見てあーっと驚きの声をあげた。
「祐ーっ!それこの前出た新作プリンだよぉー!何処にあったのーっ!?」
すると弟はプリンの蓋を開けながら答えた。
「ずっとここにあったよぉー、おねーちゃんはみえなかったんだよぉー。あんぐっ」
「あぁーっ!食べたぁー!一口っ!一口ちょーだいよぉーっ!」
「えぇー?いやーだぁー。もぐっ」
「うにゃあーっ!ずっとそれ食べたかったのにぃーっ!」
私が弟のプリンに騒いでいると、その時台所からやってきた母親が呆れたように呟いた。
「もぉー、夢遊ちゃん大人げないわよー。食べたいなら買ってくればいいでしょ?それは諦めて祐に譲りなさい。ほら、お金あげるから」
「うぅー、わかったぁーっ」
そう言って、私は渋々ヨーグルトを食べるのだった。
「ありがとうございましたー!」
私はコンビニを出ると、学校へと続く道を再び歩き出した。顔は幸せそうに綻んでいる。その手にはコンビニの袋が握られている。中身は何を隠そう新発売の北海道ジャージー牛乳100%生キャラメルミルクプリンだ。発売される前から気になっていたものである。
今朝は不覚にも弟に取られてしまったが、幼稚園生の弟にプリンを強請っていたところその様子を見かねた母が私に150円をくれた。それなので私は母の好意に甘えてプリンを買ったわけである。私のお小遣いの残金は325円なり。・・・・・・アニメイトとナンジャタウン行ったら私のお財布が貧乏になった。
そんなわけで上機嫌に鼻歌を歌いながら歩いていると、その時私の視界の隅に何か妙な物が映った。私は首を傾げると足を止めて空を仰ぎ見た。
空はいつものように青く透き通っていた。白い雲がわたあめみたいにふわふわと浮かんでいる。・・・・・・わたあめ食べたい。
しかしそれとは別に妙な物が空には浮かんでいた。私はそれを訝しむように見つめた。
それは黒かった。黒くて円盤のような形をしている。それがゆらゆらと宙を泳ぐように飛行していた。くるくると回転しているようにも見える。
私はそれを見ると目を輝かせてその円盤を見つめた。
「おぉーっ!あれがもしや噂のUFOっ!?あれはヴァレーの分類タイプIIIの・・・・・・bかなっ?っやったぁーっ!初UFOだよーっ!乗ってるのは異星人かな?未来人かなっ?はたまた他国の偵察かっ?」
私はその円盤を興味心身に見つめた。初めて見たことが嬉しくてしょうがない。私は甘い物同様不思議なものにも目がないのだ。その中の1つにUFOも含まれていた。
「うきゃーっ!感動だよぉーっ!今日はツイてるねぇー。お母さんからお小遣いも貰っちゃったしっ。UFO遭遇なんてまたとない好機だよーっ!君亜と羽海野くんに自慢しよーっとっ!あっ、そうだっ、写メ写メ」
私は携帯を探そうと鞄の中を漁り始めた。こういうときに携帯はなかなか見つからない。
と、そんなことをしているうちに円盤は下降を始めてしまった。私はそれを見て慌てて鞄に手を突っ込んだまま走り出す。
「あぁーっ、待って待ってっ!まだ写メ撮ってないよぉー!・・・・・・あれ、日本語通じるのかなぁ?プリーズウェイトっ!ウェイトっ!」
私はそう叫びながらその円盤を追いかけていった。
「うぅー、見失ったよぉー。確かここら辺に落ちてったと思ったんだけどなぁー」
案の定円盤を見失ってしまった私は、辺りをきょろきょろと見回していた。足は速くないのだ。
「ゆーほーゆーほー、どこじゃーろほいほいっ!」
妙な歌を歌いながら私は捜索を続ける。と、その時私は近くに公園を見つけた。ちょっとした円盤が着陸するのにはもってこいの場所かもしれない。・・・・・・ちょっとした円盤ってどんなのなんだろうね?
私はそんな馬鹿なことを考えて公園へ行ってみることにした。すると、そこにはドーム型の遊具の上に座っている少年の姿があった。傍らにはランドセルが置いてあり、膝に何かを抱えている。
私はその少年を見つけると、真っ先に尋ねたのだった。
「ねぇねぇ君っ!UFO何処に行ったか知らない?」
すると少年は目を丸くして私に尋ね返した。
「・・・・・・ゆーふぉー?」
「うんっ!なんかこうねぇー、黒くって円盤状で回転してて飛んでるやつっ!ここら辺に落ちてったと思ったんだけど・・・・・・」
私が身振り手振り必死にそう伝えると、そんな私を見てぽかんとしていた少年が突然笑い出した。
「あははははっ!あははははははははっ!!」
「・・・・・・嘘じゃないもんっ、本当だもんっ!」
私は腹を抱える少年に向かってむすっとした表情で言った。するとそんな私を見て少年が首を振る。
「違うよおねえちゃんっ!それUFOじゃないよっ!」
「・・・・・・にょへぇ?」
私が不思議そうな顔で首を傾げると、少年が膝に抱えていた物を手にとって私に突き出した。
「さっきのはこれだよおねえちゃんっ!ぼくのロボットだよっ!」
少年はそう言いながら顔一面に嬉しそうな表情を浮かべていた。
「なぁーんだっ!ロボットだったのかぁーっ。そんなものがこの世に存在していたなんてびっくりだよぉー」
「えへへっ、いいでしょーっ!お誕生日のプレゼントにお父さんに貰ったんだぁーっ!」
「ずるいよぉー、私も欲しいなぁー。・・・・・・お金無いけどねっ」
「じゃあおねえちゃんもお誕生日に頼んでみれば?」
「あぁー・・・・・・先月終わっちゃったよぉー。あと一年来ない・・・・・・」
「じゃあサンタさんは?クリスマスの方がまだ近いでしょ?」
「あぅー・・・・・・おねえさん中学生からサンタさん来てくれなくなっちゃったんだよねぇー」
「えぇっ!?じゃあぼくも来なくなっちゃうのかな?・・・・・・あっ!そういえばゆずるくんがサンタさんの姿を見ちゃったからもう来ないって去年泣いてたかも・・・・・・。おねえちゃんも見たのっ!?サンタさんっ!」
「うーん・・・・・・おねえちゃんはサンタさんは見なかったけど、姿は知ってるんだよー」
「えぇー?なんでなんでっ?」
「ひみつーっ!」
「えぇーっ?」
今私の隣には少年がいる。名前はしゅんで、小学5年生らしい。
そしてその少年――しゅんが膝に抱えているのがUFO騒動の正体―――しゅんが父親に買って貰ったというUFO型飛行ラジコンZ―UFOらしかった。父親に買って貰ったので、嬉しくてここ最近毎日飛ばしているらしい。
というわけで、どうやら私はUFOを見ていなかったようだ。残念。
私がそういうわけで少し無念そうにそのしゅんの膝の上にあるロボットを見つめていた。するとそれを見てしゅんが私の事を上目遣いに見つめてそして尋ねたのだった。
「おねえちゃん、もしかしてUFO好きなの?」
私はそう尋ねられると一瞬キョトンとした表情をみせて、それからコクンと頷いた。
「う、うんっ。好きだよ・・・・・・?」
するとその瞬間しゅんの顔が輝いたのが見えた。小学生の純粋な感動は目を瞑りたくなるほどに眩しい物だった。
「本当にっ!?うわいっ!やったぁ!!こんなところでおねえちゃんみたいな人に会えるなんてぼく感動だよっ!」
そう言って私の手を取って縦にぶんぶんと振る。そしてしゅんはとても嬉しそうに告げるのだった。
「ぼくもUFO大好きなんだっ!学校にはあんまり好きな友達いないからすっごく嬉しいよっ!ねえおねえちゃんっ、おねえちゃんは何説派?」
「うんとね・・・・・・、やっぱり小さいときからの憧れでエイリアンクラフト説派かなぁー。タイムマシン説も捨てがたいけどねっ」
「やっぱりっ!?ぼくと一緒だぁっ!ぼくもやっぱり宇宙人派だよっ!やったぁ!UFOは存在しないっていうのはナンセンスだよねっ!」
「あっ!それは同意見だよぉーっ!存在しないって言うのはおかしいよねっ!」
「ねー!」
しゅんと私の意見は見事合致していた。馬が合うというのはこういう事なのかも知れない。私としゅんは楽しそうに笑いあった。
と、その時私はあることに気が付いた。しゅんの顔をまじまじと眺める。
「・・・・・・おねえちゃんどうしたの?」
しゅんがそんな私に首を傾げた。私はそれを見てくすっと微笑む。そして私はしゅんにあることを尋ねるのだった。
「しゅんくんの今日の朝ご飯パンだったでしょっ!ジャムは苺かな?おいしかった?」
しゅんはきょとんとした表情で私の顔を見つめた。そしてその後とても驚いたように答える。
「・・・・・・えっ?そうだよっ!イチゴジャムトーストだよっ!なんでおねえちゃん分かったの!?」
「にゃははっ、ひみつーっ!」
「えぇーっ?ひみつばっかしー」
しゅんはむすっくれた。私はそれを見ると笑いながら答えた。
「・・・・・・お口にジャムがくっついてるよぉー」
「え・・・・・・あっ!本当だっ!だから分かったのかぁー」
口の周りについていたジャムをしゅんは舐めると、納得したように手を叩いた。
私はそれを見て笑うと、ついでに、と質問を続けた。
「しゅんくんお姉ちゃんいるでしょ?たぶん2人。それと・・・・・・ペット飼ってるよね?うーんと・・・・・・犬・・・・・・猫・・・・・・猫かな?品種は・・・・・・ロシアンブルーとか?」
私がそう尋ねるとしゅんは驚いたように目を丸くする。そして私に向かって強く頷いたのだった。
「うんっ!そうだよっ!おねえちゃんが2人にロシアンブルーのネコが一匹っ!なんでっ!?なんでおねえちゃん分かったのっ!?」
私はそのしゅんの表情を見て満足そうに笑うと、その後笑いながら説明を始めた。
「にゃははっ!おねえちゃんは凄いからねーっ!・・・・・・ほらっ!しゅんくんが持ってるその青い手提げ袋の名前のところっ!名字の隣にしゅんくんの名前と、他に黒い線が2本引っ張ってあるでしょ?その下には・・・・・・多分ゆいと・・・・・りさって書いてあるのかな?そのバック、多分お姉ちゃんのを貰ったんでしょ?だからおねえちゃんが2人いるのかなぁーって。後、しゅんくんのお洋服に動物の毛みたいのがくっついてるから、多分ペットがいて、毛の色が灰色・・・・・・それも少し青っぽいから飼っているのは毛色の種類の豊富な猫で、その毛の色はロシアンブルーかなってっ。・・・・・・まぁ、私は猫にはあんまり詳しくないんだけどねっ」
私がそう説明すると、しゅんはぽかんとした顔で私を見つめていた。そしてその後目を丸くすると、驚いたように声を上げるのだった。
「すっ、すごいよおねえちゃんっ!そんな事だけで分かっちゃうなんてっ!おねえちゃんって本当に普通の高校生っ!?もしかしてエスパーとかだったりするのっ!?」
私はそんな言葉を聞くと、可笑しくって笑った。その様子を見てしゅんが少しぶすっくれる。
「エスパー・・・・・・じゃないけどっ。強いて言うなら・・・・・・探偵・・・・・・かな?」
私はそれを見て笑いながら答えた。
「あわわわぁっ!ちっ、遅刻するよぉー!次遅刻したら親召喚だったんだぁー!」
「わわわっ!ぼく今日一時間目体育だったんだー!早く行って着替えなくちゃいけないのにーっ!」
私としゅんは公園を飛びだして一旦しゅんの家によってロボットを置いてから、それぞれの学校に向かって走っていた。
公園で雑談していて学校のことをすっかりと忘れていたのだ。その結果遅刻しそうになってしまって慌てているわけだ。
しゅんの小学校と私の高校は方向が同じだった。その結果一緒に走っているわけである。
「はっ、早く行かなくちゃーっ!」
「遅れちゃうよー!」
息を切らせながら一生懸命走っていく。しかし私の足は例の如く速くない。しゅんの速さとどっこいどっこいだ。そして体力もあるわけでない私の身体はもう限界に近くなってきていた。
と、その時、私の足は止まった。それを見て不思議そうにしゅんの足も止まる。
「・・・・・・おねえちゃん?」
しかしそんなしゅんには気付かずに私は何かに惹かれるようにして横道を歩いていった。そしてその足は段々と速くなっていく。そして私はある所まで行くと―――飛び跳ねた。何回も何回も飛び跳ねる。
「おっおねえちゃんっ!?どどうしたのっ!?」
しゅんが心配そうに私の所に駆け寄ってきた。そして近づくに連れてその顔は段々呆れたものへと変わっていった。
そこにあったのは――まるでパン食い競争のように木にぶら下がっていたドーナッツだった。私はそれを取ろうとぴょんぴょん跳びはねている。
「・・・・・・おねえちゃんなにしてるの?」
「くっ!クリスピークリームのドーナッツだよっ!よいしょっ!こっ、こんな所にあったら危ないからっ!よっとっ!食べてあげなくちゃ!」
「おねえちゃんそれ危ないのはおねえちゃんじゃないのかな!?絶対何かの罠だよ!・・・・・・最近誘拐犯がいるから気をつけなくちゃー!ねぇーっ、だから早く学校いこうよー」
「もうちょい!もうちょいだから!・・・・・・よっと!やったぁー!捕れたよ!・・・・・・もふもふ・・・・・・にゃはぁー!やっぱりおいひぃーっ!」
「もうっ、おねえちゃんったら!」
私はやっとの思いでドーナッツを手に入れるともぐもぐと咀嚼し始めた。・・・・・・にょはぁーっ!やっぱりおいひぃー!生き返るよぉー!もうこんな所に置いておくのは何処の何奴だよぉー!もったいないじゃないかぁー!
しかしその時だった。私は身体に妙な違和感を感じ始めた。私は頭を抑える。
「・・・・・・うっ・・・・・・なっ・・・なんだか身体が重くなって・・・・・・なんだかあたまが・・・・・・目が・・・・・・目が開けてられない・・・・・・」
私は地が揺らぐような感覚を覚えながら、そしてその時地面に倒れた。それを見てしゅんが驚いたように駆け寄ってくる。
「おねえちゃんっ!ねえおねえちゃんどうしたのっ!?」
薄れゆく記憶の中でしゅんがそう心配そうに叫ぶのが聞こえる。しかし少しするとその声が悲鳴に変わった。そしてその悲鳴も消えてゆく。
そしてそこで、私の記憶は途絶えた。
薄暗い部屋。そこに私の意識はまた舞い戻った。
君亜たちは私たちを助けに来てくれるのだろうか。私たちは無事に家に戻れるのか。
そう言った心配が襲ってくる。
しかし、きっと君亜たちなら大丈夫だろう。きっとすぐにやってくる。この部屋に光が差すのもきっと遠くは無いはずだ。
私はそれを静かに信じた。確かにそれしか出来ないが、しかし一心に思い続ける。
早く私を――
この子たちを助けてっ!