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サークルθの事件簿  作者: サークルθ
小野宮夢遊の推理記録
15/18

トランプの謎

 こちら小野宮夢遊の作品でありますっ。どうか宜しくお願い致しますっ。

 「この新発売のキャンディおいひーよっ!なんかねっ、不思議な味ぃーっ」

 「そうですかっ、良かったですねっ」

 「なんかねー、苺とクリームとチョコとカスタードが混ざった味がするーっ」

 「よく分かりましたねっ、それ」

 「・・・・・・あれっ?間違えた?・・・・・・バニラもいる」

 「・・・・・・そうですか」

 「とにかくありがとーねっ!おいひーよっ!」

 「・・・・・・どういたしまして・・・・・・」

 私は飴を舐めながら君亜にお礼を言った。しかし君亜は呆れた表情を見せている。

 というと、この棒付きキャンディは先ほど君亜に「あんたはさっきっから食べ過ぎだっ!」と怒られ、私の口を封じる為に放りこまれたものなのである。しかし私はお菓子を貰った程度にしか捉えていない。・・・・・・うんっ、おいしいっ。このミルフィーユ味のキャンディ。

 今日は久しぶりに大した事件もなく、部員が全員揃っていた。仕事がないらしい結城さんを加え、珍しくのんびりとしていた。こういうだらんとした日もたまにはいいねっ。・・・・・・いつもだらんとしてることが多いけど。

 と言うことで、特にすることもなく雑談をしていたりしていたのだが、・・・・・・やっぱりなにもすることがないというのは退屈である。

 そう思い始めたその時、私はあるものを思いだして突然鞄を漁り始めた。そしてあるものを見つけると、得意げに取り出す。

 「じゃじゃーんっ!実はトランプを持って来て居たのでひたーっ!」

 「おぉーっ!トランプじゃないですかーっ!」

 「やりましょやりましょっ!」

 しかし私はそれを取り出しテーブルに置くと、二人がトランプを手に取る前にシャッとテーブルの上を滑らせて二人の手から遠ざけた。それを見て、二人は不思議そうな表情を見せている。

 私はそんな二人の顔を見ると楽しそうに笑い、そしてそんな二人に向かって言い放った。

 「おっと。まだトランプで遊ばないよ?その前に、まずは余興に、私がトランプマジックをお見せひましょーっ!」

 「「えぇ―――っ!?」」

 私がそう言うと、二人は案の定ブーイングを言った。マジックなどどうでも良さそうである。私はそんな二人の様子に少しむっとした。しかしそんな二人の様子を見るほど、凄いマジックを見せて驚かせてやろうという気が湧いてくる。

 と言うわけで、私はつまらなそうにする二人の前でトランプを出してマジックを始めるのだった。

 「じゃあまず、このトランプを良く切りますっ!・・・・・・でっ、よく切ったので・・・・・・はいっ、じゃあ羽海野くんっ!一枚選んでーっ」

 私がそう言って両手の間に広げたトランプを羽海野の前に差し出すと、羽海野はめんどくさそうにその中から一枚選んだ。私はそれを確認するとくるりと彼らに背を向けた。

 「では、私にその数字がばれないようにその数字を確認してきちんと憶えて下さいっ!憶えたら、机の上にそのトランプを数字が下になるようにして置いて下さいっ!」

 私はそう言うと、彼らが数字を覚えられるまでの間鼻歌を歌いながら彼らに背を向けて待機していた。するとそのうちに彼らが憶えたという合図の声を上げた。その声を聞くと、私は彼らに向き直る。

 「はいっ、でわ私がこのカードを当てて見せしまひょーっ!」

 私はそう言うと、カードの近くに手をかざしながらそのカードの絵柄を凝視した。絵柄には中央に白いイルカが飛び跳ねており、その四隅には縁の右上一カ所が光ったまあるい羅針盤、そしてその中にある針が東西南北の南を示している。

 私はそのカードをまるで透視するかのように凝視すると、その時声を上げた。

 「はいっ!分かりましたーっ!このカードはダイヤの6ですっ!」

 私はそう言ってカードをひっくり返す。すると、そのカードは見事ダイヤの6と書かれていた。

 「えぇっ!?嘘だぁっ!」

 「何で何でっ!」

 「・・・・・・何が起こったんだ!?」

 それを見て、君亜に羽海野、そしてマジックを見物していた結城さんが驚いた。

 私はそれを見ると、得意そうにトランプを纏めて三人の前に置いた。

 「種も仕掛けもございませーんっ!」

 私はそう言うと嬉しそうにまた鼻歌を歌い始めた。三人はトランプを凝視してなにやら考え込んでいる。

 しかし私は、絶対にトリックが見破られないと思っていたのでカードを眺めて考え込む三人を見ながら満足げに微笑んでいた。種も仕掛けも無いとは言ったが、そんな訳は無いのだ。私は魔法使いでは無いから種も仕掛けも無いと何も出来ない。

 と言うわけで、私は三人が降参するのを待ちながら何のゲームをやろうかと思惟していた。ババ抜きか、神経衰弱か、大富豪か・・・・・・。

 しかし、その時はあまり長くはなく、そして私の思うとおりに事は運ばないのだった。

 私がそんな事を考えていると、なにやら後輩二人が訝しそうな顔付きを見せ、そして顔を見合わせた。二人は頷きあうと私の所へ近づいてくる。

 「「・・・・・・先輩っ!」」

 「わっ!なっ何っ!?」

 私がそんな二人に気がつき思わず驚いて声を上げると、二人は顔に不自然な笑みを浮かべながら私に尋ねてきた。

 「・・・・・・小野宮先輩?これの何処が」

 「種も仕掛けも無いんですかね?」

 そう言うと、彼らは何枚かのカードの絵柄部分を私に突き出してきた。私はそれを見るとぎくりとし、そして驚き慌てながらもその言葉に肯定をしようとはせず首を傾げて見せた。

 「ななっ、何のことかな――っ?」

 私がそう言いながら彼らから目線を反らすと、しかし彼らは私の視線を追って視界の中に入ってきた。・・・・・・うっ、目が怖い。

 暫くするとそんな彼らを見て観念した私は、彼らのことを少し怯えたような目で見上げながら尋ねた。

 「・・・・・・なっ、なんで分かったの?」

 私がそう尋ねると、二人は溜息を吐きながら話し始めた。

 「そんなの簡単ですよっ。先輩が、じっくりとトランプの絵柄を眺めてくれたおかげでっ」

 「そこから絵柄に何かの仕掛けがあることは容易に分かりましたっ」

 彼らはそう言うと、数枚のトランプを取り出して説明を始めた。

 「まずこのカードを見て下さいっ。これはさっき先輩が透視・・・・・・もといいかさまをしたダイヤの6のカードですっ。そしてこっちは、ダイヤの9。絵柄を確認してみると、前者は縁の右上一カ所が光った、南を示している羅針盤。そして後者は、縁の右上一カ所が光った、西を示している羅針盤。これから分かるように、このカードには明らかに細工がしてあるんですっ」

 「きっと右上が光っているものがダイヤのカードなんでしょうっ。そしてこの他のカードを見て分かるように、それぞれクラブが右下、ハートが左下、スペードが左上のようですっ。そして南が6、西が9であるということは、その間には二つの数字が存在することになる。というわけで、東西南北の間を三等分して、その等分した線を東西南北の線と共に数えるとその数は12。これはぴったりトランプの数と同じになるんですっ。そしてその線に時計と同じように数を割り当てると、ちょうど南が6、西が9になるっ」

 「と言うわけで、先輩はその法則を憶えて、俺らの前であたかも透視して数字を当てたかのように見せかけた・・・・・・その通りですよね?先輩?」

 私はそうきっぱりとトリックを暴かれると、うにゃーっとおかしな悲鳴を上げながら立ち上がりそしてむすっとしながら言い放った。

 「なぁんでそうやって簡単にトリック見破っちゃうかなぁっ!それじゃあマジックやってもつまんないじゃんっ!せっかくこれでやっと二人にトランプで勝てると思ったのにぃーっ!」

 私はそう言うとトランプを片付け始め、そして何やらぶつぶつと呟きながらあらかじめ持ってきておいたいつもの正規品トランプを出した。・・・・・・だっていっつもトランプ勝てないんだもんっ。ちょっとぐらい勝たせてくれたっていいじゃんっ!

 私はそう思いながら、しかし今度こそは勝ってやろうと意気込んでトランプを人数分配り始めた。・・・・・・最初はババ抜きだっ!これならババが来なければ勝てるもんねっ!・・・・・・あっ、ババもう居た・・・・・・。

 私がそんなこんなで一念発起したり意気消沈したりしていると、その時部室内にある声が響いた。

 「・・・・・・さっきのトリックは一体どういう・・・・・・」

 私はその声を聞いて顔を上げる。と、そこには部室の隅でうろうろとしながら考え込んでいる結城さんの姿があった。どうやら先ほど二人が話したトリックは聞こえていなかったらしく、真剣に考え込んでいる。

 私はそれを見ると、手元にある自分のカードと交互に見比べ、そして顔に楽しそうな笑みを浮かべると、先ほどのいかさまトランプを持って結城さんの所へと近づき、そして今度はまた別のマジックをやり始めた。

 「結城さんっ!結城さんっ!この中からカードを一枚引いて下さいっ!」

 「・・・・・・えっ!?カードを引くの?・・・・・・えっと、じゃあこれを・・・・・・」

 「そうしたら私に見えないように確認してこの中に何処でもいいので戻して下さいっ!」 「・・・・・・うんっ。憶えた。・・・・・・じゃあここで」

 「はいっ。では切りますっ!・・・・・・切って・・・・・・切って・・・・・・。すると知らないうちに・・・・・・はいっ!貴方の選んだカードは一番上に浮かんできますっ!そして今やっと一番上に辿り着きましたっ!貴方の選んだカードはっ、このクラブの3ですねっ?」

 「えっ、えぇ―――っ!!どうして分かったんだっ!?」

 「種も仕掛けもございませんよ――っ!」

 私が結城さんにマジックを披露しながら嬉しそうな表情を浮かべていると、二人は残念そうな表情で結城さんを見つめ、そして互いに向き合うと溜息を吐いた。

 「・・・・・・トランプでもしましょうかっ」

 「・・・・・・そうだなっ」

 私の楽しそうな表情とと、結城さんが浮かべる懊悩の表情。そして真剣そうな君亜と羽海野の表情が見えるその部室には、笑い声と驚愕の声、それに落胆の声に歓喜の声と、様々な声が響き続ける。

 それは何とも平和そうな学生生活の様子だった。




 何だか雰囲気で平和そうだったので殺人は起こさずに部室でのんびりと。

 推理もの→トリック→マジックと言うことで、家にあるマジック用のトランプで書いてみました。

 どんなものでも構いませんので、感想を頂けると嬉しいですっ。

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