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サークルθの事件簿  作者: サークルθ
小野宮夢遊の推理記録
14/18

小学生呼吸困難の謎

 今回この回を担当致しました、小野宮ですっ。

 感想を貰えると嬉しいですっ。宜しくお願い致しますっ。

 「うわぁ――っ!酷い目にあったぁ――っ!全くっ、若本先生ったらなんであんなに人使い荒いのかなぁ――っ」

 私は例の如くむすっとした顔付きをして部室へと向かっていた。何が不服かって、若本先生が私的な用事で私を呼び出したことが不服なのだ。

 今回の用はと言うと、安藤先生の下駄箱に今朝ラブレターを入れるのを忘れたから、私に安藤先生を捜して渡してきて欲しいとの事だった。・・・・・・私は一応は事件の解決に一役買って警察にも信頼されているサークルθの部員何だけど・・・・・・っ。万事屋でも無ければスケット団でも無いんですけどっ!

 私と話をしていたはずの君亜は何処かへ消えてしまうし、羽海野も事件の為に外に出ていて居ない。

 「なんで私だけお留守番――っ?何か事件やりたい――っ!・・・・・・ロズウェル事件みたいな?あの物体の正体は何だったのか・・・・・・宇宙人の乗ったUFOだったのか・・・・・・。それとも・・・・・・。しかし真実は謎である――っ」

 そんな馬鹿げた独り言を呟きながら私は部室に向かっていった。安藤先生も見つかった事だしねっ。ちゃんと渡したしねっ。


 そして私が部室へと着き中に入っていくと、何も入っていない事を知りながらも何となく冷蔵庫を開けた。いつもの癖というやつである。と、するとそこにはあるものが置いてあった。私はそれを見ると顔をぱぁっと輝かせる。

 「・・・・・・こっ、これは不二家のケーキではないかぁ――っ!やったぁ――っ!誰が買ってきてくれたんだろ――っ?・・・・・・まぁいっかっ!」

 私はそう呟くと、席に座ってその箱を開け中のケーキを食べ始めた。・・・・・・うんっ、うまいっ!美味しいなぁ――、やっぱりケーキは!

 私は幸せそうな顔をして黙々とケーキを食べ続ける。もふもふもふ・・・・・・。

 と、その時私の携帯が鳴った。それを聞いて、・・・・・・初めは聞かなかった事にした。

 ケーキ美味しぃ――っ!ケーキは誕生日にしかお母さん買ってくれないからなぁ――っ!

 すると止まったと思っていた携帯がまた鳴り始めた。それを聞いて、・・・・・・幻聴だと思いこむ。

 不二家のケーキは考えてみると久しぶりだなぁ――っ、いっつもシャトレーゼのケーキだからなぁ――っ。お母さん高いの買ってくれないから。

 そしてまた携帯が鳴った。私はそれを聞くと、・・・・・・しょうがなく通話ボタンを押した。 

「・・・・・・もしもしぃ」

「もしもし?夢遊ちゃん?お久しぶりねぇっ!と言っても一週間ぶりぐらいだけどねっ」

「・・・・・・なんだぁ――っ、佐々木さんかぁ――っ!お久しぶりです――っ!でも今ケーキを食べるのに忙しいから後でいいですか?さようならぁ・・・・・・」

 「むっ夢遊ちゃん?切らないで貰えるかな?けっケーキなら後で買ってあげるからっ!だからお話聞いてくれない?お願いっ!」

 「本当ですかっ!じゃあ聞きますっ!ケーキはサーティーワンが良いですっ!」

 「うっ結構高額来たわね・・・・・・。まぁいいわっ、事件解決の為だものっ、買いましょうっ」

 「わぁいっ!佐々木さんの太っ腹ぁ――っ!」

 「はぁっ、雀の涙の給料がぁ・・・・・・」

 私はケーキを貰えると聞いて彼女の話を聞くことにした。・・・・・・なんのケーキにしよっかなぁ――っ・・・・・・。

 今通話をしているのは佐々木美鈴という女性刑事だ。私は彼女に事件を教えて貰うことが多い。今日も事件があるらしく私の所に電話を掛けてきた。まだ若くて美人であるのに仕事に熱心で働き者の刑事である。

 「じゃあ、話すわよ?」

 「はぁいっ!」

 彼女は気を取り直してそう私に告げると、簡単に今回の事件について説明をしてくれた。

 

 事件が起きたのはとある小学校。突然生徒達が苦しみだし、呼吸困難に陥った。全校生徒の約1/3が病院に搬送され、今だ治療中。原因は不明。容疑者は学校へ苦情を何度も入れている人物ら五人があげられた。しかし見事に全員アリバイあり。犯行は不可能であった事が証明されている。


 「・・・・・・と言うことなのよっ。今からそっちに迎えに行くからさっ、捜査に協力してくれないかな?」

 彼女がそう説明すると私に尋ねてきた。私はそれを聞いて少し考え込む。

 「・・・・・・でもケーキ食べてるからなぁ・・・・・・」

 「だから買ってあげるって言ってるでしょ!?だからっ、ね?」

 私はそう彼女に言われると、しかしケーキを見て考え込み、そして一つの質問をした。

 「ねぇっ、まだ分かってることはそれだけなんですか?」

 「いいえっ?目撃証言と事件の鍵らしき言葉は分かってるんだけど・・・・・・」

 それを聞いて私は一つの提案をした。

 「じゃあ、これから出来るだけ分かってることを何でもいいから教えてくれますかっ?それを聞いて解けなかったら、そっちに行きますからっ」

 私がそう提案すると、彼女は溜息を吐きながら提案を受け入れてくれた。

 「・・・・・・しょうがないわねっ。じゃあ、話すわよ?まず目撃証言から。これはでも関係無いと思うんだけど、小学生が昨日近くの廃工場の中に入って遊んでいたという目撃証言・・・・・・というか苦情があったわっ。しかしその通報者は現在旅行中。あとは今日学校周辺を彷徨いていた怪しげな男の目撃証言が入ってる・・・・・・けど、これは忘れ物を届けに来た保護者だったみたい。後は学校を睨む老人が一人いたらしいけど誰だかはわかっていないわっ。後怪しげな宗教本を学生に配っている集団がいたらしいけどまだそれは確認中よっ。後は・・・・・・」

 「・・・・・・ん?廃工場?そんなものがあるんですか?」

 私がそう尋ねると、彼女は不思議そうに答えた。

 「えぇっ。あるわっ。半年前に廃棄されたらしいわよ。たしか、蛍光灯を作ってたとかなんとか・・・・・・」

 「蛍光灯ねぇ―・・・・・・」

 私はそう言うとケーキに手を伸ばして再び食べ始めた。

 「・・・・・・で、後は小学生の一人が倒れる前に言った言葉なんだけど、『きれいなの。きらきらで、宝石みたいなやつが・・・・・・それを貰ったんだよ』っていう意味の分からない言葉を残して倒れていったらしいの。・・・・・・どういう意味かしら?何かを犯人から受け取ったらしいことは分かるけど、綺麗なものって何かしら?因みに宗教の本は地味な茶色だったわっ」

 私はそれを聞くと先ほど取ったケーキを最後まで食べ終わり、そして少しの間考え込んでから彼女に告げた。

 「・・・・・・分かりましたよっ。犯人」

 「ええっ!?本当に?犯人は誰なの?・・・・・・って言っても誰も容疑者絞れてないから誰の名前も出てないけど・・・・・・。一体犯人はどんな人?やっぱり近所に住んでいる人かしら?」

 「・・・・・・うんっ、近くに住んでますよっ。確実に」

 「じゃあどんな人物?特徴を上げて貰っても良いかしら?」

 彼女はそう言って私に尋ねてきた。そんな驚き慌てた声を聞いて、私は微笑みを見せた。

 「うんっ、えっとねぇ、小学校に毎日通っててね・・・・・・」

 「うんうんっ。じゃあ保護者か教師かしら・・・・・・」

 「でね、ランドセルを持って毎日小学校に来ててね・・・・・・」

 「・・・・・・相当過保護な保護者かしら?モンスターペアレントってやつだったりするかもね・・・・・・」

 そして最後に私はそんな彼女に告げた。

 「で、毎日学校で勉強に励んでいる子っ」

 「それ小学生じゃんっ!!」 

 私の最後の言葉を聞くと、彼女は驚いて怒鳴った。・・・・・・っ耳が痛い――っ。

 私は携帯を反対の耳に当て変えると、そんな彼女に本当の犯人を告げた。

 「・・・・・・っ、そうですよっ、犯人は小学生ですっ。しかも廃工場に入って遊んでた子たちですっ」

 私はそう言うと耳をさすった。うぅ――っ、鼓膜破れたぁ――っ・・・・・・。ちゃんと聞こえてるけど。

 しかしそんな私を余所に、彼女は驚き慌てて私に尋ねてきた。

 「どっ、どういう事それっ!?小学生たちが犯人なんてっ、一体どんな動機がっ?それにこれじゃ犯人まで倒れているじゃないっ!」

 彼女はそう言って私に疑問をぶつけてきた。そんな彼女の言葉に私はきちんと答えた。

 「それが、無いんですよっ。小学生には動機がっ。だってその子たちはこうなるなんてこと夢にも思わずに、只自分の好奇心に身を任せてすべてを楽しんでいただけなんですもんっ」

 私がそう説明すると、しかし彼女はまだ事の状況が分かっていないようだった。彼女は暫く唸りながら考えていた様だが、ついに諦めたらしく私に尋ねてきた。

 「・・・・・・もう少し詳しく事件を説明して貰えるかしらっ?ことの発端から、事件の発生までっ」

 「・・・・・・しょうがないなぁっ。ケーキがかかってるからなぁ――っ。じゃあ話しますよっ?ちゃんと聞いててくださいね?」

 私は溜息を吐いてそう言うと、事件の推理を話し始めた。

 「・・・・・・事の始まりは、本当に只の無邪気な好奇心だったんですよっ。小学生は、そんな子どもらしい好奇心に身を任せて廃工場に探検に行った。そしてそこで遊んでいる最中に、その子たちはあるものを見つけてしまったんです。きっと工場が閉鎖されるときに処分し忘れたんだと思いますけど、それは子どもたちの好奇心をさらに引き立てるには十分なものだった。それは、銀色にきらきらと光り輝く、ビンか何かに入れられた水銀だったんですよっ。蛍光灯を作っていた工場だったなら水銀があったって不思議はない。蛍光灯の中には水銀が含まれてますからねっ。そしてその子たちはその美しい物体に心を奪われた。それが恐ろしく大変に危険なものなんて少しも思わないで」

 私は真剣な顔付きをして事件の経緯を語る。しかしその表情は話が進むに連れて哀愁を帯びたものへと変わっていっていた。私はそれでもなお推理を続けた。

 「そして次の日、子どもたちは学校へ行くと周りのみんなにその水銀を見せびらかせた。すると案の定、それを見た小学生達は心を奪われてしまった。そこで子どもたちは考えると、みんなにその綺麗な銀色のものを配ろうと思いついた。そしてやってしまったんですっ、子どもたちは。それが善意の行為だと信じて配ったのに、結果としては猛毒をばらまいただけだった。そして今の状況と言うわけですよ・・・・・・っ」

 私は推理を言い終わるとその後少しの間黙りを続けた。彼女も同じように何も話して来ない。彼女も何か思うことがあったのだろう。しかし暫しの沈黙の後、彼女は口を開いた。

 「・・・・・・好奇心が徒となった事件かぁ。何も罪のない小学生がそんな事件に巻き込まれるなんて、なんてこの世の中は無情なのかしらね・・・・・・」

 私は彼女がそんなことを呟いたのを聞くと、最後に言葉を付け足した。

 「・・・・・・学校内を捜索して下さいっ、きっと銀色に光る水銀が見つかるはずですっ。・・・・・・案外神はこの世で一番極悪非道の存在なのかもしれませんね・・・・・・」

 そう言って、私は今日も憎いほどに青く透き通った美しい空を部室の窓から見上げた。




 「・・・・・・っで、なんでこういう事になったんですかっ?小野宮先輩っ」

 そんな悲しい事件があった翌日。私は部室で後輩二人に問いつめられていた。

 そんな私の目の前には一つの箱があり、そこには『先輩方。ケーキです。十個入ってます。賞味期限は三日後までなのでお早めに!ウミノ』と書かれた手紙と共に、中身が二つしかないケーキの箱が置いてあった。

 私は後輩たちの前で必死に弁解をしていた。

 「だっ、だってほらっ!・・・・・・お早めにって書いてあったし・・・・・・。今メモの存在を知ったんだけど・・・・・・」

 私はそう後輩たちから目を背けながら弁解していた。しかし二人の視線からは逃れられない。

 「早めって言ったってですねっ、まだ賞味期限は二日もあるんですよっ?なのに先輩ったら全く・・・・・・」

 「・・・・・・一人でケーキ八個とか尋常じゃないでしょ・・・・・・」

 「・・・・・・はい、ごめんなさい・・・・・・っ。反省してます・・・・・・」

 私はとうとうそんな二人の迫力に負けて頭を垂れた。・・・・・・だって、美味しかったんだもん・・・・・・。

 私が素直にそう謝ると、二人はふぅっと溜息を吐いて仕方なさそうに言葉を漏らした。

 「・・・・・・まぁ、小野宮先輩の甘党は今に始まったことじゃありませんしね・・・・・・」

 「・・・・・・いつもの事っちゃ事ですし・・・・・・、しょうがないかぁ・・・・・・」

 そう言って二人は首を横に振って残りのケーキをそれぞれ手にとって食べ始めた。

 ・・・・・・あれ?これ許して貰えたのかな?私もっと鬼のように説教されると思ってたのに・・・・・・。

 私がそう思って顔を上げキョトンとしていると、その時二人はなにやら部室の奥の方からごそごそと取り出してくると、そんな私にそれを笑顔で渡してきた。

 「ということで、先輩っ!」

 「罰として部室掃除、宜しくお願いしますっ!」

 「・・・・・・えっ?・・・・・・うぇ―――っ!?」

 私はそんな二人の突然の様子に驚き、そして頭を混乱させていた。

 ・・・・・・なんだっ!?この展開はっ?罰って何っ!?聞いてないよっ?でもって罰が何で部室掃除っ?部室の掃除は当番制でやってる筈なのに・・・・・・。確か、今週は君亜で、先週は羽海野の筈だ・・・・・・よね?

 私はそう思って部室を見渡してみると、すると今まで気づかなかったが、思った以上にゴミが溜まっている。それを見て、私はある考えに辿り着いた。

 ・・・・・・なるほどっ、二人は掃除をサボっていたというわけだ。

 それに気づいた私は二人を問いつめようと先ほどまで二人が居た方向を振り返ったが、時すでに遅し。二人はもうとっくにケーキをくわえて部室から飛び出していた。

 私はそれを見て、追いかけようとも思ったが自分のした罪を思いだして踏みとどまると溜息を吐いた。

 「・・・・・・まったくっ、なんでこんなにこの世は無情なんだろうねっ。もっとお菓子みたいに甘くったっていいと思うのになぁ――っ」

 私はそう言いながら一人掃除を始めた。外では小鳥たちが幸せそうに囀り合い、色とりどりの美しい花たちが風に促されて穏やかに揺れている。

 しかしそんな小鳥や花たちにも、埃の舞う部室の中にいる私にも、やはり太陽は皆平等に照らしているのだった。




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