風の精霊の場合
「私だけでも、真面目にお仕事しないと」
「真面目だなぁ、長所でもあり短所でもあるってのは正にこのことだね」
なでなで。
「子供扱いしないで下さい!」
「ちがうよー。頭の位置がちょうど手の位置と同じなだけだよー」
「棒読みじゃないですか!」
「そんなことないよー」
ぷんすかぷん、と擬音が聞こえそうな膨れっ面である。
この精霊だけ、風の精霊のイメージと合致する点が多々ある。
幼い子供なのだ。けれどその肩には重責が掛かっている。
だからこそ、必死でもあり、他の事が一切見えていない。
先代に少しでも近づく為に、周りからの期待にこたえる為に。
他の三人もそれはよくわかっているからこそ、だらけるのだ。
実のところやるべきことはしっかりとやっているが、あえて彼女の為に
ほんの少しだけ、些細な事をミスするのだ。
そのミスに彼女が気付き、私が頑張らないと!…と意気込ませる仕組みである。
そもそも、先代の存在が大きすぎるのだ。
四元を統べる器はこれまでにも何人もいたが、
それを成した者は彼だけだったのだから。
けれどそれは、やはりこの精霊と同じく本人が望んだものではなかった。
お人よしではあるが、一度決めたら決して引かない頑固者。
感傷に浸りつつ、頭をなでていたが反論が無い。
ぼそっと、小さな声でこう囁かれた。
「…ありがとう」
「どういたしまして」
「この件で、ちょっと悩んでたの。でもおかげで気が楽になった。」
ん?どの件…どれどれ…。ああ、成る程。
「こっちでやっておくよ、無理だと思ったらちゃんと周りに相談すること」
「はーい」
笑顔で手を振り彼女と別れた後、一人ため息。
あの馬鹿が、ちょっとじゃなくて思いっきり手を抜いたな。
こんな件はあの子供には早いだろうに。
後日、とある精霊が日課を自粛し書類と戦っていた。
「違うんだー、もう任せても大丈夫だと…」
「はい、口じゃなくて手を動かせー」
「いや、あの言わばこれは、そう愛のム…」
「さぼるな」
「…はい」
みんな過保護すぎるぜー、と思いつつ自分もその一員なので
あまり強く言えないなと彼女は考えていた。
火の精霊は、モヤシでメガネ。物好きから見れば美形かな…?
風の精霊は、身長は低いが年齢は一緒。精神レベルが子供。並のかわいさ。