火の精霊の場合
「それは、興味深いですね。どうしてそこまで極端な差異が出るんでしょうか」
「さあね、わからない。でも一つだけ確かなことがある」
「なんですか?」
「お茶が旨い」
「それは…ありがとうございます」
「うん」
ずずー。
茶葉の改良がまた上手くいったみたいだ。ようやるよ、本当に。
彼が司るものは火。見た目は残念なことにそうは見えないけど。
モヤシとか、メガネとか、散々な言われようだし。
火の精霊のイメージって、ムキムキの魔人か色っぽい日焼け美人なんだけどな。
さわやかに(言い換えれば気弱に)微笑んでいる彼の趣味は、植物の品種改良。
…生産的な趣味ではあるが、向き不向きで言えば向いてないよ…。
だって、うっかり炭にしちゃうんだから。
その失敗を結構長い間引きずるからなー。前々回は酷かった。
とある精霊が暇つぶしに力を使った所為で、大地の力が急速に減少した。
そのとき(彼が言うには)最高の野菜ができていたとの事。
順調に育っていたのに、これはいけないと慌てて収穫しようとしたのがまずかった。
結果、慌てて収穫した野菜は力の制御不十分で触れた為炭化。
残っていた野菜も大地の力が枯渇し、普通栄養を貰う大地に逆に栄養を取られた為、
虫も食べないような、酷い物になったとの事。
…そのあとしばらく、メソメソ泣いていたのを励ますのは疲れました…。
「もっと、自分の力を前向きに使える趣味にしようよ(面倒だから)…」
「こればっかりは、趣味ですからね。やりがいもあるし止められませんよ」
なら泣くなと、声を大にして言いたい。まあ、
「美味しいお茶が飲めるからいいけどさ」
でもその、そうでしょうって顔で微笑まれると若干腹が立つ。
とある精霊よ出番だー、と心の中で思ったり思わなかったり。