幕間
「ねえ、私達にもそろそろ“名前”が欲しいと思わない?」
「“名前”なー…、まあ俺はどうでもいいなー」
「眼鏡だのモヤシだの呼ばれるくらいなら、仮称でもいいですから僕も欲しいですね…」
「私もこう、厳格で大人っぽい“名前”欲しいな」
「…根暗って言われて、返事しなかった際にいびられるよりはマシかな…」
「僕は格好良いやつか、派手なやつが良いな。あの有名なトンヌ…」
「ストップ。それ以上は言わさない。…皆頭文字一文字取って、チ・ス・カ・フ・ヒ・ヤ、 なんてどう?」
『…』
「それ“名前”じゃなくて、単なるカタカナ一文字よ」
「俺が言うのもアレだけど、…もうちょっと頭使えよ」
「命名の本って本棚にあったか探して来ますね…」
「もうちょっと、真面目に考えてよー!」
「…いんじゃない、…君らしいセンスの無…、あ、ごめんなさ、う、嘘です、ギャー!!!」
「アレキサンダー…は、ありきたりか…。やっぱり…トンヌ…」
「…分かった、もう少し真面目に検討する。…うう、畜生、格好良いやつ付けて吃驚させてやるわー!うう…、センスだってあるのに…悔しい」
『…(まあきっと、頓珍漢なやつになるんだろうな…)』
三日後
どっかの試合終えたボクサーみたいな、憔悴した笑みを浮かべて順繰りに発表された。
地の精霊:チノセ
水の精霊:ミノセ
火の精霊:ヒノセ
風の精霊:カノセ
光の精霊:ヒノセ
闇の精霊:ヤノセ
『時間かけた割には安直だった…』
「…あのー、しかも被ってるんですが…」
「え? …本当だ…、気付かんかった…。ええと、えーと…。じゃあ、根暗!お前は 『ひかりの精霊』だから、カノセで!」
「…私と被るよー…」
「ぐ、あー、リノセで!被ってるやつ居たら挙手!居ないね?決定ー!!!」
どう? と言わんばかりのドヤ顔。こころなし目が泳いでいる。…きっと寝てない。
あの後一心不乱に考えたのだろう。微妙にテンションがおかしい。
その場に居たアイスやフロス、シルビアにも問うような視線を投げた。
「え、ええ、素敵ですわね」
「…(どうでも)いいと思う」
「所詮“真名”でないなら、何でも同じだ。区別可能な事が重要なのだから」
他人事なので、深くは触れないコメント。突っ込み入れても無駄と悟っている。
「や、やりきったわー! …どうよ、良い“名前”でしょうがー!」
そのまま睡眠不足で倒れる。直前で支えたのが今回の命名と関係無い3人だった…。
『…色々残念なのは知ってたけど、なんと言うかますます…』
一斉に溜め息が漏れでたせいで、溜め息の雲が数日間雨を呼んでいたそうな…。