光の精霊の怠慢
「…なんで今度はモグラなの…?」
「え、…暗いところって落ち着くじゃないか」
「…」
「…」
「仮にも光の精霊の言う台詞じゃないよね」
「…別に自ら望んで、そう呼ばれるようになった訳じゃないしね」
こいつ…。
この間は畑に力を貸して欲しいって言われて、てっきり太陽の光で協力するのかと思ったら、ミミズになってきた事があった。(見たくはないが)実物より巨大な姿で協力するならまだしも、変哲もないミミズ一匹が畑の土壌にどれだけ影響与えると思ってるんだか。
「でも、考えてみなよ。巨大なミミズが土を排泄処理して土壌改善するんだよ?ホラー話にしかならないよ」
「人の心を読むんじゃない」
この根暗な奴が、光の精霊。彼は常に何か他の生き物の姿をしている。…大抵夜行性だったり、今回の様にむしろ光を苦手とする生き物の姿を。
「…まあ、いいや。お茶淹れる」
「いいよ、要らない。…君の淹れるお茶は熱くて飲めないよ」
「? 自分の分しか淹れないよ?」
「ええー…、どうせなら一緒に淹れてよ、温めでね」
「嫌だ」
「ええー…」
コポコポコポ…。
ふう、お茶がうまい。なんか言いたげな目でジトーと見てるが気にしない。
「…ケチ、ドケチ、貧乏性、甲斐性無し、不細工、チビ、デブ、ハゲ…」
「なんか言ったか、この野郎」
「…いいや、何も…」
しょうがない、もう。
「…熱いよ、もっと温くし…、何でもないです」
「よろしい」
横暴だ、我儘だ何だとグチグチ聞こえるが、淹れて貰って文句を言うな。
どうせ自分じゃお茶も淹れられないんだから、この駄目精霊め。
「…違うよ、疲れているんだよ。人間は自分勝手に『もっと光を』なんて言うけど、それがどれだけ大変な事か分かっちゃいないんだから」
「他の精霊だって、同条件で力の行使してるけど」
「…」
「…」
「…どうしてあんなに真面目に働けるんだろうね、不思議だ…」
「こっちとしては、どうしてそこまで人間臭い言い訳出来るか不思議だよ…」
「どうせまともに働いたって、働かなくたってさして差は出な…、冗談だから目にペンライトの光は止めてー…、目が、目がー…」
ふう、すっきりした。
「ドS…、あ、いや何でもないです、はい。ほ、本当に冗談だ、ギャー!」
「うう、生きてるのがつらいよう…、ちなみに…ペンライトはどっから出したの?」
「ん?きっと、どんな姿になっててもこれが効くだろうと」
「…(鬼、悪魔)…」
「考えるだけにしときなね、…もう一回されたくなければ」
「人の心を…」
「読めるわ、馬鹿め」
ずずー…。
「さて、それはさておき。 この間、わざと手を抜いただろ?」
「? …ああ、当たり前だろ。あんな事に協力出来る訳ないじゃないか」
「よくやった。…それでいい」
「???」
まだ時期早々なのだ。こいつが本気を出していたら、少々まずかった。
「そろそろ、黒猫が来る。精々準備しといた方がいい」
「…大丈夫だよ、アレが張り切って歓迎するに違いないから。…やだなぁ、又仕事増えるのかー…」
「まあね。そういえば、フロスとアイスには会いに行った?」
「…挨拶だけは」
「どうせそっぽ向いて、ボソボソとよろしくです、とか言ってきただけなんだろう?」
「エスパーめ…」
分かるわー、そんな事!