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風の精霊の野望

「うふふ…、うふふふふ…」


「…ええと、どうしたの?正直さっきから笑いっぱなしで怖い…」


「だって、私がお姉ちゃんになったんだから!」


「?」


「アイスとフロスの事。私の方が年上なの、だから私がお姉ちゃん!」


… … …見た目だけで言うなら、フロスは明らかに年齢上に見えるし、アイスはどっこいかな。精神年齢は明らかに他3人に近いフロスと、…私見交えなくてもアイスの方が成熟してそうだ…。そんな事言えないが。


「今まで、一番子供扱いされていたけど、これからは違うのよ。私が二人を可愛がるの」


「そうだねー」


「二人にお姉ちゃんって呼んで貰うんだー!」


「ソウダネー」


「うん!」


…棒読みに気付かない程興奮している。よっぽどうれしいんだろうな。微笑ましいなぁ…。


「この後一緒にお茶しようって、約束してるから一緒に行こうよ」


「いいよ」


なんとなく、この後の流れが読めるけどね…。





雪のかまくら…ではなく極々普通のこじんまりとした一軒家。そこに二人は住んでいる。彼女達はそれこそ、元々の生成過程から考慮すれば姉妹と言うより片割れ同士がニュアンス的に近い。基本が巨人かゴーレムか、それだけ異なるだけなのだ。


「ようこそいらっしゃいました、歓迎致しますわ」


「…」


「駄目よ、アイス。後ろに隠れていないで挨拶しないと」


「…こんにちは」


「こんにちは!」


「こんにちはー、はいこれ茶葉とお茶うけ。あの眼鏡生産品だからおいしいよ」


「まあ、うれしい。早速頂きましょうか」


フロスがお茶の準備に行く際、ついて行きそびれたアイスに向かってうれしそうに


「私の事はお姉ちゃんって呼んでいいからね!」


言ったー…。


「…」


表情の起伏があんまりないけど、…困ってるように見える。結果出た言葉は…ぷふ…。


「…お母さん?」


「おか…!」


地に伏す風の精霊と、笑いを堪える為に変な顔になってしまった客人を見て、途中経過を知らないフロスは一体何が起こったのか直ぐには分からなかった。














「…お姉ちゃんですか、ま、まあ確かにそうですね…」


「そう!私が二人のお姉ちゃんなんだから何かあれば頼ってね!」


「…お母さんは、駄目なの?」


「うくく…、苦しい…」


「笑うなー!…お母さんはちょっと違うんだよ。お姉ちゃんなの!」


アイスがフロスに向かって、どうしたらいいのって目配せ。察してあげなさいと言わんばかりの返答。うーん、まさに姉妹ってこっちの方がそれらしい…。


「…お姉ちゃん」


「そう、お姉ちゃん!決してお母さんじゃないからね」


「お姉ちゃん」


「うん!」








「微笑ましいなぁ…」


「ですね…」


「まあ、二人は置いといて。暮らしはどう?もう…色々慣れた?」


「はい、いつも皆さんによくして貰ってます」


「退屈凌ぎにからかわれたり、なんか戦闘に関する事仕込まれそうになったりしてない?」


「まあ、程々に」


ふふ…と優雅に笑う。    アレ?   意外とおっかないかもしれない…。


「未だにアイスは、…あなたを見ると後ろに隠れてしまいますね」


「…それはしょうがない、アイスの方が感受性高いからね」


「今ここでこうして幸せなのを、目一杯受け入れています」


「…」


「だから、それがずっと続くといい。贅沢ですね、何よりの我儘です」


「それは…」


「フロスも私の事、お姉ちゃんって呼んでいいんだよ!」


「あらあら」


話を遮るように、小さな背を伸ばしてのたまう。…さっきまであっちにいたのに。


その後もなんやかんやで、のらりくらりお姉ちゃんとは決して呼ばないフロスであった…。





「また来るから、その時はフロスにもお姉ちゃんって呼んで貰うからね!」


「また、楽しいお茶にしましょうね」


「それじゃ、また頃合い見て様子見に来るよ」


「…さようなら」























「お姉ちゃん」 「なあに?」 「アレ…?何?…怖い」 「可愛いじゃないの」 「そっちじゃない」

「…分からない、でもアイス、あなたに害為す事はないから安心して」 「はい」



そう、害為す存在では無い。少なくとも私達の生みの親と言っても過言ではない。


でも、…確かに一抹の不安がしこりの様に心に染みている。







穏やかだけど、時は過ぎる。どう転ぶか、賽の目は読めない。


アレ?風の精霊、完全に蚊帳の外だった…。

タイトル貰っても主役を張れない子が頑張ったけど、前回に続いておいしいところ持って行かれてる…。



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