表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/25

【第21話】「ホルモンうどんの匂いと、優しさと」

柔道は技術だけでなく、環境が育てる。

飢えの夏、そして出会い。

小さな命が見つけた、心を満たす優しさの味。


四年生の夏休み。

小猿にとっては「きつい休み」の始まりだった。

理由は一つ――給食がない。


道場でもらえるパン一つで飢えを凌ぐ毎日。

猛暑の中、体重も増えず、練習に力は入らない。

本調子ではない父は外で働いている様子だが、

まだ借金があるのか、食卓は潤わない。


そんなある日。

道場からの帰り道、小猿はふと足を止めた。

古びたトタン屋根の小さな店――

「ホルモン」とだけ書かれた赤提灯。

そこから立ちのぼる香ばしい煙と笑い声。


空腹に刺さる匂い。

ダクトから漏れる香りに誘われ、

小猿は思わず目を閉じ、胸いっぱいに吸い込んでいた。


すると裏口から一人の女の子が現れた。

空き瓶を運んでいたその子が、目を丸くして言った。


「小猿……?」


咄嗟に逃げようとした小猿に、彼女は言った。


「ちょっと待って!」


クラスメイトらしいが、あまり関わったことはない。

けれど彼女は、小猿を“あだ名”で呼んだ。

その響きは、どこか優しくて、逃げる気持ちを止めた。


「待っててね」


彼女は店の中に消えると、数分後、

使い捨ての皿に盛られた料理を差し出してきた。


「これ、食べな」


そこには――

野菜炒めと少しの肉、ホルモン、そしてうどん。

まさしく「ホルモンうどん」だった。


「また柔道帰り、この時間においで。匂い嗅ぎにくるんでしょ?」


恥ずかしさも、見栄も、今の小猿には関係なかった。

その一皿が、何よりもありがたかった。


思いもしなかった出会い。

この娘とのやり取りは、やがて小猿の心を強く支えていく。

それは、ずっと後に語られる物語だ。


家庭では…


一方、家の中も少しずつ変わり始めていた。

父親は酒も煙草もやめ、外に出る姿も見かけるようになった。

まだ働いているのかは分からないし、

給食費も払えていないが、

罵声の飛び交う日々はなくなった。

静かで、ただ、それだけでも幸せだった。


学校では…


学校では、変わらず人との距離を保ちつつも、

道場での稽古は欠かさなかった。

食料事情は少しずつ改善し、

新しい友達もでき、

年相応とはいかずとも、

確かに――成長していた。


ホルモンうどんの匂いと、たった一つの優しさが、

小猿の人生を少しだけ変えました。

栄養ではなく、心を満たしてくれる味。

出会いは突然ですが、物語に深く繋がっていきます。

この先の「絆」の芽吹きを、どうか見守ってください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ