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22 デートしよう! ◉


「リモート授業!?」

「そう、迫河先生が掛け合ってくれて!」


 放課後、みんながお見舞いついでに、今朝学校であったことの報告に来てくれた。

 山本先生は、オレのスマートフォンを持って設定してくれている。

 

「まあ、教壇に向けてカメラを設置するだけだが……。このアプリを開けば簡単に繋がる。これで、出席日数の問題もクリアだ」

「先生、みんな……。ありがとう……」


 柄にもなく、感動で目が潤んでしまう。

 

「あっ、 他のみんなにもお礼言っておいてな!?」


 涙がこぼれないように、両手で目を隠しながら言う。

 聞けば、クラスのみんなが校長室に乗り込んでくれたと言うし、本当に嬉しい。

 

「でも、リモートでも授業となると、制服がほしいな」


 これ以上はわがままだろうか。

 しかし、そんなオレの心を見透かしたように、るきあが紙袋を出した。

 

「そう思って──はい!」


 中には、クリーニングに出された制服が入っていた。

 倒れた時に汚れてしまったのだろう。

 

「るきあ、でかした!」


 さっそく、シワにならないように備え付けのクローゼットにかけておいた。

 

「ねえ、ところでさ。なんで男子は病室に入れないの?」


 一緒にお見舞いに来た神楽さんが、キョトンとしている。

 今、この部屋にはオレとるきあ、山本先生、愛ちゃん、神楽さんがいて、神楽さんだけがオレの事情を知らない。病室の外では、晶と鳴沢が待っているらしい。

 るきあと愛ちゃんも、説明ができずに焦っている。


「あー、説明が難しいな……。香西君は、ちょっと特殊な病気でね……」


 山本先生が言葉を濁す。女性に事情がバレるのは、病状的には問題ない。しかし、神楽さんがうっかり誰かに話してしまう可能性がなくはない。事情を知る人間は少ない方がいいとの判断だろう。

 

「それはわかりますけど。要は、男子が近づけない何かがあるんですね?」

「まあ……そんなところだ」


 神楽さんがそれ以上追求してこないことにホッとするが、彼女はなんとなく勘が鋭い気がする。

 

「香西くん」

「ん?」

「前に、言ったよね。チャンスがあったらって」

「え、あ、うん?」

 

 神楽さんは、足元のベッドの枠に手を乗せて言ってきた。

 たしか、体育館裏に呼び出されて告白された時……だったかな?

 

「退院したら、デートしよう!!」


 またも唐突で真っ直ぐな告白に、開いた口が塞がらなかった。

 みんなも、一斉に神楽さんの方を見て固まる。

 

「────え」


「ええええええええええっっっ!?」


 その場にいた全員が叫んだ。

 個室で良かったと思う。

 

「い、いや、唐突すぎる!」

「だって、香西くん、卒業したらドイツに行っちゃうんでしょ!?」

「そうだけど……!」

「だったら、もうチャンスは少ししかないじゃない! 香西くんとの思い出がほしい!」


 待って、これ男子は女子に言われたら嬉しい言葉なの!?

 

「うーん、青春だねぇ」


 山本先生は感心して見ているだけで助けてくれそうにない。

 愛ちゃんは、口元を押さえて赤くなってるけど、なんだか楽しそうだ。

 るきあにアイコンタクトを取ると、ハッとして間に入ってくれた。

 

「だ、ダメダメ!! ヒロは病気なんだから!」

「落合さんに聞いてない! 私は、香西くんに言ってるの!」

「むぐっ、正論……! でも、ヒロが心配なの!」


 がんばれ、るきあ! と心の中で応援する。

 

「落合さん、あなた、好きな人いるんだよね?」

「どうしてそれを!?」

「新聞部の情報網、舐めるなー」


 神楽さんは、ふふんとドヤ顔で笑いながら攻める。

 

「もし、落合さんの好きな人が遠くに行っちゃう予定で、今後二度と会えないかもしれないってなったら、どうする?」

「それは……」


 ああ、きっと今、るきあはオレの兄貴の顔を思い浮かべているだろう。

 そして、中学の時兄貴がドイツへ行くと決まった時……。

 るきあは同じようなことを言っていたのだ。

 

「デートしたい、です……」

「ほらぁ♪」


 神楽さんの勝利で、カンカンカン! と心のゴングが鳴ったような気がする。

 

「うう、ごめん、ヒロ……」

「いや、まあ……」


 オレも、自分でなんとかしなきゃいけないのに、るきあに頼ってしまって申し訳ない。


「じゃあ香西くん、さっそく連絡先交換しましょ」


 仕方なくスマートフォンを出して連絡先を交換すると、「よろしくね」と言っているキャラの、可愛らしいスタンプが送られてきた。

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