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雨の夜 ④


「さーさやーませんせっせー」

 妙に軽快なリズムで式谷が職員室の扉を開く。こいつには暗闇を恐れる心とか、そういうのはないのだろうか。薊原は続いて中に入る。懐中電灯で辺りを照らす。

 かなり不気味だった。

 というのも、教室と違って職員室はそれぞれの机に独特な色があるから。パソコンの近くに置いた文房具だったり、常時椅子に掛けてある白衣だったりジャージの上着だったり――どういうわけか四六時中を生徒たちが暮らしている教室よりも遥かにこっちの方が生活感があって、それだけに昼間と夜中の区別が濃い。端的に言って、人がいきなり全部死んで空っぽになった世界に迷い込んだみたいで、かなり不気味だった。


 ――扉を開けると黒い影がずらっと揃っていて、地獄についての授業をしている。

 ――多目的室の真ん中で目を瞑ったまま十回まわって目を開けたら別世界に飛んでいて、この間から全然知らない歴史を授業で教えられている。


 あいつ、とここにはいない千賀上に対して思う。なんで変化球みたいな怪談ばっかり作ってんだ。ガキならガキらしくトイレの花子さんとかもっと可愛げのある話にしておけよ。

「あれ、いないね」

「式谷先輩が変な呼び方するから拗ねちゃったんじゃないですか」

「じゃあ洪くん呼んでみてよ」

「佐々山せんせー」

「あーそびーましょー」

「うわ何ですか薊原先輩」

 トイレの花子さん、と言ってやる。やめてくださいよ、と洪が半笑いで言う。こういうじゃれつきをしていると結構心が休まる――が、ホラー映画だとこういう奴らは次の瞬間容赦なく死ぬよな、と思い出す。後ろを見る。何もいない。

「校長室見てみよ。寝てるのかも」

 式谷はずんずん奥に進んでいく。机の上には佐々山が浸水に備えて上げておいたのだろう。青いバインダーがいくつも乱雑に積み上げられて、半ば崩れかけている。校長室は職員室と直結だ。洪と二人、薊原はその机とすれ違いながら後に続く。式谷が指の骨で扉をノックする。コンコンコン。返答なし。入っていいですかー。返答なし。鍵かかってなかったら本当に入っちゃいますよー。返答なし。十、九、八、七……。

 〇、で式谷が扉を開ける。

 床に一枚の布団が敷かれていて、それだけだった。

「毛布が蹴っ飛ばしてある……ということは、」

「停電になって慌てて出ていったんですかね」

「いや、佐々山先生がちょっといい加減な性格をしているだけかもしれない」

 やめてやれよ、と薊原は思う。

 が、そこからの式谷の推察は鮮やかなものだった。停電になって布団から慌てて出てくことはないよ。だって布団の中に入ってるならもう電気消してるし、停電になっても気付かないでしょ。今日は寒いからクーラーも点けてないだろうし。

「……確かに。いや、でも俺は佐々山先生の名誉のために戦いますよ」

「名誉の騎士来たね」

「knight of honorと呼んでください」

「洪お前どうした?」

「普通に怖くなってきたんでふざけて誤魔化してます。でも実際、停電が原因でなくても慌てて出ていくことはありえるんじゃないですか。外で何かトラブルがあったことに気付いたとか」

「たとえば?」

「『キャーッ!』と闇夜を引き裂くような猿の叫びが響き……」

「楽しい動物園かよ」

「そして動物に目がない佐々山先生はたまらず布団を蹴って駆け出した。これが俺の推理です」

「妄想の間違いだろ」

「否定はできないね」

「否定できなきゃ何でもいいってもんでもねーぞ」

 薊原は冷静に、

「便所にでも行ってんじゃねえの。つか、このくらいの蹴っ飛ばし方なら普通だろ。こんなんで事件性とか考えてたら男子部屋なんか毎朝全員死んでんぞ」

「そして蘇る」

「夢のある話ですね。俺も無限に生きたい」

 こいつ意外とでけえ夢持ってんな、と思いつつも、もういいだろ、と薊原は校長室から先に出る。それより、

「とりあえずブレーカーやっちまおうぜ。式谷、わかんだろ」

 そだね、と素直に頷いた。こっち、と懐中電灯係として促されるままに薊原は式谷の後に続く。

「ここにまず、キャビネットの鍵が入ってるから」

 言って式谷は、ほとんど荷物置き場みたいにされた端の方のデスクに近寄る。引き出しを無造作に開ける。ちゃり、と何のタグもついていない、代わりに昔はちゃんと開催されていたという修学旅行の土産だろうか、新選組のストラップが付けられたちゃちい鍵を取り出す。

「それでこっちのを開けて、」

 大回りしてコピー機の方に向かっていく。薊原は職員室に来ることがあまりないが、なぜ印刷室があるにもかかわらずこっちにもコピー機があるのだろうと不思議に思う。そんなにコピーするものだらけなのか。式谷はコピー機の裏、キャビネットにそのちゃちい鍵を差し込んで、

「そしたらここに――あれ?」

 首を傾げた。

「どうしたんですか」

「なくなってる。分電盤の鍵」

 んー?と式谷は首を傾げる。それからとりあえずと言わんばかりに壁の方に歩いて行って、金属の箱に手をかける。開かないらしい。

「これがブレーカーのやつですか?」

「そう。ほんとはあそこにあった鍵で開けるんだけど……あ、別に今の覚えなくても大丈夫だよ。そのへん……大体宇垣先生の机の中とかにあるんだけど、退勤簿の裏表紙にやり方貼ってあるから。一年生とか、いたずらしそうな子には教えないでね」

 脱出ゲームみたいですね、と洪が言う。洪くんそういうのやるんだ。千賀上先輩が作ったゲームあるじゃないですか、あれ学年の奴らで去年の冬合宿のとき情報室に集まってやったんですよ。楽しそうなことしてんな、と薊原は思う。えー嬉しいなあれプログラミングみたいなところ結構僕も手伝ったんだよ。マジで楽しそうなことしてんな、と薊原は思う。

「で? どういうこったよ。ブレーカーの鍵がなくなってるってことは」

「ありうるとしたら……」

「何者かが侵入し、ブレーカーを落とした後に鍵を持ち去ったってことですか」

「洪、お前もしかして結構ビビってるか」

「自分で言ってて怖くなってきました」

 否定はできないね、と式谷は苦笑する。が、すぐにもっと穏当な意見として、

「あるとしたら、先生が分電盤の場所を勘違いして体育館に行っちゃったとかじゃないかな」

「体育館?」

「あ、そういえばありますよね。放送室のとこに」

「そうそう。でもあっちは体育館用のブレーカーなんだよ。だから……まあ、全然根拠はないんだけど、」

 こういうのもアリなんじゃないかな、と式谷は口にした。

 佐々山は何らかの理由で停電に気付く。

 うろ覚えの状態で分電盤の鍵を取る。

 が、うろ覚えだから職員室のブレーカーよりも体育館のブレーカーの方が記憶に濃く残っていて、うっかりそっちに向かってしまう。

「で、諸々の鍵とかを開けっぱなしにしておくと良くないと思ったしっかり者の佐々山先生は、分電盤の鍵以外は全部元の場所にきっちり戻してから体育館に向かった。これが僕の推理です」

「その言い方流行ってんのか?」

「流行らせていく」

「よかった……佐々山先生の名誉は守られたんですね……」

 んじゃ、と薊原は話をまとめて、

「佐々山を探さなきゃいけねーってことだな。鍵がなくちゃどうしようもねーし」

「うん。雨も弱まったし、渡り廊下を伝って体育館の方に行ったんじゃないかな。チャットだけ送ってから追いかけてみよっか」

「……なんか、」

 洪が、ひっそりとした声で、

「ホラー映画みたいで、ドキドキしますね」

 思ってても言うなよ、と薊原は思った。

 本当にドキドキしてるから、急に自分がガキみたいに思えてくるだろ。



 ぽん、と大きな音がした。

 空気が震える。が、すぐにそれを手で制したのがいる。

「ごめん、俺っす」

 角見。ジャージのポケットから端末を取り出す。ぼうっ、と暗い中に急に強烈な光が入って、顔が下から照らし出される。

 ワンタップ。

「――洪から。佐々山先生、行方不明らしいっす」

 ひゃああ、と潮が引くように恐怖の声が上がった。

 が、

「角見。そのチャット全部ちゃんと読み上げてみ」

「……『職員室に先生がいなかったから、体育館の方まで見てくる』『遅くなるけど気にするな』」

「ブレーカーの場所わかんなくてどっかで迷ってんでしょ。式谷が行ったのに停電直ってないってことは、分電盤の鍵もなくなってんだろうし。鍵持ってどっかうろついてんじゃない」

 晶が一刀両断、その恐怖を切り落とす。

 おぉ~、と絽奈は感心の拍手をした。何人かが続く。よっ名探偵、と言ったのは小松。古すぎるだろそのあだ名、と晶は言う。お前紛らわしいんだよ、と山田が角見をどついている。すいませんっ、と角見が言う。口元が笑っているから、わざとああいう言い方をしたんだと思う。

「――こういうのがあるからかな」

 それで、ふと絽奈は言うべきことを思い出す。

 角見が振り向いて、

「え?」

「ホラーって、現実との境目怪しいから。色々良くないのかなと思ってやめちゃった」

 沈黙、〇・五秒。

 晶が、

「今みたいに、角見の趣味の悪い冗談をみんなが信じるからってこと?」

「うん。ホラーって『ないこと』を『ありそう』に言うでしょ。なんかそういうのあんまり良くないのかなって」

「でも、」

 角見だった。反応早、と絽奈は思う。小松とアニメの話なんかをしているのはたまに見かけるし、こういう話に対して普段から思うところがあるのかもしれない。それか単に話のテンポが速いか。

「そんなこと気にしてたら何も作れなくないすか。フィクションって結局全部そういうことなような……いや、今のは俺の冗談が悪趣味だったけど。すんません」

「あ、ううん。ごめん。責めてるように聞こえたら」

「千賀上先輩の動画の最初の注意文ってそういうことだったんですか?」

 三上が訊ねてくる。うん、と絽奈は頷く。友人からは軒並み不評で、再生時間の統計なんかを見ると毎回明らかにスキップしている人がいるらしい冒頭注意文。ちゃんと読んでくれているらしい。嬉しい。

「まあ確かに、角見くんの言うとおりそういうの気にしてたら何も作れないっていうのもそうだし、私も徹底してやれてるわけじゃないんだけど」

「これにはな、深い理由があるんだよ」

 小松が言うから、視線がそっちに移る。

 え、と絽奈は口に出す。大丈夫なの。言っていいのそれ。視線を受ければグッと小松は親指を立てて、

「俺が昔――千賀上が作ったトンチキ怪談を真に受けて、恐怖のあまり号泣した」

 号泣まではしていなかった。

 と、思うけど。

 はは、と瀬尾が笑い飛ばしたのを聞いて、どう気を遣ってくれたのか絽奈にはよくわかった。

「うわありそー。小松ってそういうの好きだもんな。どんな話だったんだよそれ」

 逡巡、

「――いや、もう忘れた。この話正直あんまり掘り返したくないんだよ。それでめっちゃ揉めて千賀上学校来なくなっちゃうし」

「あ、いや、別に揉めたのが直接の原因ってわけじゃないんだけど」

「でもさあ、お前ら考えてもみろよ」

 小松が両手を広げる。

 この暗闇とか雨の夜とか、そういうのをまるで気にしていないようなさっぱりした口調で、

「今の角見のちょっとしたやつだって、お前らどっかしら信じちゃったわけじゃん。こんないかにも怪しくて理屈っぽいやつの戯言をさあ」

「ひどくないすか」

「それがさあ、考えてもみろよ。あれ何年のときだっけ、花野」

「小二」

「え、マジすか。千賀上先輩、さっきの作ったとき小二?」

 うん、と絽奈は素直に頷く。

 天才じゃん、と角見が言う。悪い気はしない。へへ、と笑っておく。

「小二なんてさ、七年前だぜ? 七年前なんかお前ら何してたよ。俺なんか消しゴムと段ボールとチョーク全部食って病院送りになってたよ」

「探求心なんなんだよ」

「飽くなき食の旅人だよ俺は。そこにさ、こんな箱入りお嬢様みたいな転校生が東京から来てみろよ。それが『私は全てを知ってます』みたいな顔してぺらぺらぺらぺら毎日毎日地元で生まれた俺らですら知らないような不思議な話を無限にしてんだぜ?」

 一拍。

 心から、という声色で、

「信じるだろ」

「俺も信じるわ……」

 新貝が言った。

 確かに、と他にもちらほら雰囲気が伝わってくる。

「まあだから、千賀上はそういうの封印してる……で、合ってる? なんかその、強すぎる力はこの腕の中に封じておく……みたいな」

 なんかその言い方恥ずかしい、と思いながらも、大筋は合っている。だから「うん」と絽奈が頷けば、今度こそ納得が部屋に広まる。なんで、と絽奈は思う。こんなにみんなで私の作風とかそういうのの話をしてるんだろう。おかしくない?

「絽奈の言うこと、結構わかる」

 しかも晶まで乗ってきた。

「このあいだ式谷とウミちゃんに関する文献がないか調べに行ったやつ。あのとき思った。絽奈みたいなのが……今同じ時代に生きてるならいいけど、古代とかにいたらほんとに手が付けられなかったんだろうなって」

「ねえこの話まだ続く?」

「いや、もう終わり。私が言いたいこと言い終わったから」

「暴君……」

 恐れ知らずの発言は、たぶん桐峯の方から出てきた。果たして桐峯本人のものだったのかはわからない。たぶんそのあたりの女子からだったと思うけれど、よくよく観察する前に「そういや」と瀬尾が言い出したからわからず仕舞いになってしまう。

「どうだったん。花野大先生の考古学調査は」

「関係してそうな文献は取れるだけ取ってきたけど、役立つかは微妙。あれ、瀬尾はまだ見てないんだっけ」

「あ? それオレ以外は――ああ、」

 そうかバイトの日に見たのか、と瀬尾は自分で納得する。

「一応そこのパソコンに全部データ入れといたから、見たかったら見ていいよ。このあいだ話したの以上にウミちゃんに関係しそうな情報はあんまなさそうだったけど」

「マジか。んじゃやることもねえし――って、」

 停電してるからダメじゃん、と瀬尾は浮かしかけた腰を下ろす。

 それから、

「つーかいい加減ウミちゃんの友達探しも進めてやりてーよな。オレあれ感動したもん」

 わかる、とあっちこっちから同意の声が飛んできた。

 特に小松が、

「マジですごかったよな、あれ。ファーストコンタクトだよ俺ら。歴史に名前残っちゃうぜ」

「二々ヶ浜中学一同って? ……いや、チカちゃんと式ちゃんの名前が残って終わりだろ」

「え、いや、私は別にいい……」

「おや謙虚」

「でも進めるっつってもムズいよなー。IRの方に出なくちゃいけないのに、うちで潜入調査できそうな奴らって大体全員IR出禁じゃん。瀬尾とか湊とか」

「おう、顔見せたら一発でフクロにされる自信あるぜ。刺し殺されるわなフツーに」

「何やらかして来たんだよこえーよ……」

「先輩らの代って武闘派多いっすよね」

「オマエらにもいつだって武闘派になるチャンスは与えられてんだぜ。角見、行ってこいよ。式ちゃんみたいに殺し屋ぶっ飛ばして伝説になってこい」

「死ぬでしょ」

「角見は貧弱だからなー」

「んじゃ新貝」

「いや無理死ぬ死ぬ死ぬ」

 んじゃ、と順番に瀬尾が下級生の男子の名前を呼んでいく。みんな言う。勘弁してください。悪い先輩だなあ、と絽奈は思う。自分だって勘弁してほしい。IRだけでも犯罪発生率がおかしなことになってる上に配備されてる地域警察が驚異の不祥事発生率〇パーセントなのだ。これは本当に文字通り不祥事が発生していないということではなく、不祥事が発生していても〇に書き換えているということを指す。湊はこの間まで「平気だよ」なんてへらへら笑って色々買い物に行ったりなんかしてくれていたけれど、結局あんなことになったわけだし。もっと普段からちゃんと止めておけばよかった。

「でも実際、どうしましょうね」

 今度こそ桐峯の声だったと思う。

「私も流石にそういうところに行くのは怖いですし……でも、そうしなかったらウミちゃんの友達を取り戻したりなんてできませんよね」

「取り戻すのは無理でしょ」

 晶がばっさり言った。

「場所を突き止めてウミちゃんに教えるところまででしょ、私たちができるのは。それ以上は無理。気持ちがどうとかじゃなくて、現実的に。向こうの方が断然人数多いし、私も詳しくないけどIRのあたりを拠点にしてるってことは武器とか抱え込んでるんだろうし。薊原がもうちょっと立場が良いままだったらそっちの伝手が辿れたかもしれないけど、情勢もわかんなきゃ手の出しようがない」

「……そうですね。確かに」

 それに、と桐峯は付け加える。隣の女子――そこで絽奈は気付いた。さっき「一人ずつ怖い話をしませんか」みたいなことを言っていた子。髪型がいつもと違うからわからなかった。羽生さんだ。寝るときはあんな感じなんだろうか。全然シルエットも雰囲気も違うから暗い中だとわからなかった。桐峯は羽生に同意を求めるように言う。その羽生は絽奈が見ていることに気付いたのか、暗闇の中で小さく手を振ってくる。振り返す。このあいだ「全部観てます」と言ってくれた。それなのにさっきまで「誰だっけ」とか薄情なことを考えていたことに罪悪感が湧いてくる。怪談の一つくらい披露してあげた方がいいかもしれない。いきなり「じゃあ怖い話します」と急舵を切ったらどんな空気になるだろう。

「ウミちゃんなら大丈夫そうですもんね。いざとなれば恐竜にだってなれるわけだし」

 ね、と桐峯が言う。うん、と羽生が答える。三年生と違って一年生はちょっとおっとりした子が多いなあ、と絽奈は思う。でも言ってることはもっともだな、とも。友達探しの方ばかりに考えがいっていたけれど、確かにそうだ。いざ場所を突き止めたところで中学生の自分たちが奪還作戦なんてやるわけにはいかない。湊ならやりそうだけれど、そのときは自分が止める。

 結局最後は、ウミちゃんのあのすごそうな力に任せるしか――

「――あれ、」

 ふと、思い至った。

 どうしたの、と晶が言う。いや、と絽奈は答える。思い至ったはいいものの、なんだかすごく当たり前のことな気がする。そもそもの前提だった気がする。晶ならもうとっくの昔に気付いていそうだし、他の皆にも「今更この世間知らずは何を」とか思われてしまうかもしれない。

「あのさ、」

 だから、他の人たちが話している間にこっそりと、


「もしかして、ウミちゃんの友達ってそういう風に利用されたりするの?

 ――その、変な言い方だけど、敵を潰すための怪獣みたいな」


 しん、と静まり返る。

 これ怖い話始まってますか、と羽生が言うから、絽奈は思い出す。

 昔、そんな話をしたことがある。


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