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最推しの声優さんのキャラが攻略できない?!

作者: 八神シュウ

私は叫んだ。


「最推しの声優さんのキャラが攻略できないなんて!!」



元々はファンタジー少女漫画が原作の恋愛シミュレーションゲームアプリ「ブルースター」。

原作ではベンジャミン王子と元庶子で主人公クラリス男爵令嬢がくっつき、ベンジャミン王子の婚約者筆頭候補でクラリスを虐める悪役令嬢メイリリー侯爵令嬢を断罪する。イケメンの当て馬キャラたちも人気があったため、王子を含めた彼らと恋愛ができるシミュレーションゲームアプリとしてリリースされた。主人公のデフォルトネームと初期アバターはクラリスで、名前は自由に変えられるが、アバターはイベントや各キャラルートのクリアの報酬、または課金で変えられる。

ハーレムルートは排除され、複数のキャラで親密度が増しすぎると、誰ともくっ付けなくなるという、中々に堅実というか現実的な内容だ。ゲームアプリでは王子の婚約者としてメイリリーは登場し、どのキャラのルートでも悪役令嬢としてクラリスの恋路を妨害する。そして断罪されて、亡くなってしまう。原作のメイリリーは死なないのに、何故か亡くなってしまう。そして、その墓に花を手向ける若き王弟オリヴァー。


オリヴァーの中の人が私の最推し声優さんだ。


隠しキャラとしてルートがあるのでは?!と各ルートを徹底的にやり込んだ。最推しの声優キャラだから推していたところが初めは大きかったが、やり込むうちに段々とオリヴァー自身も好きになっていった。ファンブックや攻略本も買った。考察サイトや掲示板、SNSも漁った。オリヴァーの美声をもっと聞きたい、悲しい顔だけでなくいろいろな表情を見たい一心だった。

ファンブックの第二弾に掲載されているインタビューで「オリヴァーは攻略キャラではない」と原作者と開発者から断言され、私は叫んだ。


「最推しの声優さんのキャラが攻略できないなんて!!」


絶望しかない。

それならメイリリーが主人公のゲームを出して欲しい。彼女が主人公なら、原作ではオリヴァーとの絡みがふんだんにあったので、彼の美声と変わる表情を拝むことができるはずだ。ゲームアプリのブルースターも原作同様に人気だし、亡くなってしまうメイリリーに同情する声も大きいので、彼女が主人公のシナリオがリリースされるかもしれない。

私は僅かな希望を胸に、SNSで悲しみを呟くと眠りについた。オリヴァー推しの民に幸あれ。



「大丈夫かい?」


はっと顔を上げると、テーブルを挟んで対面に座ったオリヴァーがこちらを心配そうに見つめていた。


「は?オリヴァー……?」


驚いてそう言葉を漏らすと、彼はくすくすと小さく笑う。最高。何て美声なの。くすくす声なのに破壊力抜群よ!と心の中でガッツポーズを私はキメる。何これ夢?


「淑女の鏡といわれた君らしくないね」


そう言いながらオリヴァーは優雅に紅茶を飲む。テーブルの上には色とりどりのケーキや高級そうな茶器、所謂アフタヌーンティーセットが並んでいた。淑女の鏡?彼の言葉に首を傾げつつ、私は視線を落としてティーカップの中の褐色の水面を見下ろす。


「えっ?!」


そこに映ったのは私ではなかった。


「な、何でメイリリーになってるの?!」


両手で頭を抱えて立ち上がると、オリヴァーや控えていた近衛兵や侍女が目を丸くしてこちらを見つめているが、それどころではない。ただベッドで横になっただけなのに、何故メイリリーになっているの!いや、これは……夢?


「メイリリー!」


驚きの余り目の前が暗くなる。私は遠のく意識の中で、あぁ、何て素敵な声なの、夢ならまだ覚めないでと、少しスパイシーで奥深いウッディな香りに包まれながら願った。



目が覚めても私はメイリリーのままで、どうやら異世界憑依?してしまったらしい。元のメイリリーはどうなったのか。この世界は原作軸なのかゲームアプリ軸なのか、知りたいことは山積みだが、メイリリーを心配そうに見下ろし、声をかけるオリヴァーの美声と美貌に、思わずにやける口元をキルトで隠した。

初投稿になります。

お読みいただき、ありがとうございました!

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