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緑池の少年  作者: 紀希
1/2

男の子



何がある訳でもないド田舎。


仕事が忙しい両親は、


よく僕を祖母の家へと預けた。



同学年の友達もいなければ、


近所に歳の近い子供達もいない。



例え、そのような子供達がいたとしても。


コミュ障だった僕には、


自分から話し掛ける事すら無理だったのだろう。



祖母は畑をしたり。


近所の人と世間話をしたりして。


僕と遊んでくれる訳でもなかったし。


今の時代の様に、


テレビゲームがあった訳でもなかった。



とにかく。時間だけが無駄にあった。



近くには山があったが、


危ないから1人では行ってはいけないと、


口を酸っぱくして言われていた。



どうしてか。



行ってはいけないと言われてしまうと、


何故だか、行きたくなってしまうのが子供だ。



祖母「山には入っちゃあかんえ~?」


「は~い。」



なんて言って。


朝食を食べてから、こっそり山へと向かう生活が続いた。



最初は怖かった。


独特の雰囲気に、風で木々が揺れる音。


でもそれも。何回も行けば、慣れてくる。



山は広く。


ビビりだった僕は、そんなに上には行かなかった。


近い民家の人達に見付からない様にして、


うるちょろとしていたぐらいだった。



僕は見た事のない景色や風景を絵に残した。


そうやって時間を過ごしていた。



ある時。


いつもの様に山に入ったが。


大体の場所の絵を描いてしまっていた。



まだ12時すら回ってないだろう体感を信じ。


今日は少しだけ登ってみる事にした。



始めて行く場所に。久しぶりに興奮と緊張を覚え。


何だかワクワクしていた。



しばらく歩いていると、目の前に池があった。


綺麗な緑の池だった。



「わぁ、、


綺麗だなあ。」



水面は木々から入る光でキラキラとしていて。


水も綺麗で名前の知らない魚がいた。



僕は腰を掛け、夢中で絵を描いていた。



それぐらい。凄く綺麗だった、、



集中して絵を描いていると。


「何をやってるの??」


と、不意に声を掛けられた。



僕はビックリした。



怒られる、、



と思ったが、


次には。



「へえ。



絵。



上手だねえ??」



と、褒められた。



ゆっくりと振り向くと。


僕より少し大きい男の子が居た。



こっちに来て初めて会う歳の近い子供に。


僕は正直ビビっていたのかもしれない。



僕は紙とクレヨンを渡した。


男の子「んっ??


貸してくれるの??」


僕は首を縦に振った。



その子は僕の隣に座った。


僕はその子が描くのを見ていた。


男の子「あらら。


こりゃ、難しい、、



君。


すごいねえ??」


男の子の顔は近く。


とても、綺麗だった。



彼は僕を褒めてくれた。


それが。嬉しかった。



日が傾いてきたから。


僕は立ち上がって帰ろうとした。


男の子「ん??



、、もう帰るの??」


僕は頷く。



男の子「これは、?」


「、、持ってて。」


男の子「また来る??」


「、、うん。」


男の子「またね??」



僕は手を振った。



僕は嬉しかった。


ニコニコしながら家に帰った。



祖母「お帰り。


何か、良い事があったのかえ??」


「うん、、」


祖母「そうかいそうかい。


そりゃ良かったよぉ、、」



それから。


僕は毎日彼と一緒に居た。



男の子「よっ??」


池に行くと彼は居た。


「、、よっ?」



少しずつ。


僕は彼に心を開いていった。



男の子「上手いねえ??」


彼はいつも褒めてくれた。


嬉しかった。



彼は一緒に絵を描いた。


彼は上手く無かったが。


彼の絵を。僕は好きだった。



そんなある日。


いつもの様に帰ろうとすると。


男の子「明日は、来ちゃいけない。



と言うか。。


しばらく来ちゃいけない、、」


と言われた。


「どうして??」


僕は少し悲しくなった。


男の子「大丈夫。


また会えるから。。」



僕は彼と僕を描いた絵を切って、彼に渡した。


「また。会おうね??」


男の子「うん。」


彼は笑った。



次の日から記録的な豪雨が続いた。


祖母「雨が。


すげえな、こりゃあ。」



祖母は落ちてくる雨水にたらいを置いた。


ポツン、、


ポチャン、、



ガタッカタッ、、



家は揺れながら雨が屋根を叩く。



彼は大丈夫だろうか、、



その日から。



ずっと雨だった。



僕は彼に会いたくて会いたくて仕方がなかった。


家にこもる時間はとても退屈だったのだ。



ようやく雨がやみ。


僕は山へ走ったが。



目の前には、崩れた山があった。



いつも通っていた場所は全て閉ざされ。


まるで、"来るな"と言われている様だった。



何とかして彼と会いたかった僕は、必死に道を探した。


「何処か行ける場所は、、



何処かに、、」


一生懸命探したが、その時に大人に見付かってしまった。


大人「土砂であぶんねえから。



子供はちげーとこさ遊べ??」


僕は下を向きながら歩いた。



こんな事になるなら、、


もっと。話しておけば良かった。



もっと遊んでいれば、、



僕は涙が出てきた。



彼に会いたい、、



その気持ちだけが溢れ出た。



大人の目を避けて、ようやく辿り着いた時には。


土砂で池は埋もれてしまっていた。



「、、。」


僕は立ち尽くした。


彼はこの事を言っていたのだろうか。



人がいない田舎では。


埋もれてしまった池の土砂を浚う事はせず。



そのまま。


何も無かったかの様に放置した。



僕は悔しかった。


池が埋まってしまった事で。


彼が現れる事が出来ない事を。


僕は何処かで知っていた。



けれど、もし。


そう、気付いている事を話してしまったら。



彼に言ってしまったら。



もう、二度と会えない。



と、自分で分かっていた。


だからそう接してきたのだ。























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