研究室に行かずに
私は都大学に通っている学生、と言っても正直不真面目で学校はサボりまくっていた。別に大学に行くのが嫌いなわけではない。ただ空想の世界に浸るのがほんの少し、ほかの人よりも好きだったのである。
今日も私は魔法についていろいろ考えている。
「今現在のように娯楽にあふれ通信網が発達したなかに存在する『魔法』というファンタジーは概念としては紀元前まで遡ることができる。それは神の概念と同様、互いに全く交流を持っていないはずの初期の文明においても同時多発的に魔法が存在する。”火のないところには煙はたたない”もしかすると現実的に存在する力なのかもしれない・・・」
などといつものように空想をしていたが、今日は少し空想力が強めにかもしれない。
「RPGでも一般的に使われている炎系の魔法は、化学的にあり得る範囲で考えると”空気中の水素と酸素と水素を反応させる”という現象で説明できる。ただしこの際のハードルは、酸素はまだしも、ごく微量しか存在しない水素を殺傷能力を持たせるレベルで集積することが現実的ではないということにある。」
----ではこの魔法を発動させる条件は何でしょう----
脳内にもう一人人格を形成して自問自答を試みる。
「この問題を解決するためには、空気中の分子の運動エネルギーを操作するためのエネルギーとはじめの着火をするための熱エネルギーをどこからか供給する必要がある。」
----では、そのエネルギーをどこから供給すればいいと思いますか----
「まぁ魔法が使えると仮定すると、人間の体内からというのが自然な発想となるだろう。ただし、通常のATPを用いたエネルギーではどう考えても必要なエネルギー量を補えるとは思えない。」
----では、通常以外の方法なら?----
「質量を直接エネルギーに変換することができれば、膨大なエネルギーを使って反応を起こすことは可能だと思う。しかしこの方法だとそもそも人体がその膨大なエネルギーに耐えられないだろう。」
----では、そのエネルギーに耐える方法は?----
「物理的バイパスを作ることは現実的ではない、人体に収まるサイズでそれを作ることは現代科学ではおそらく不可能。ここで行き止まりになる。別次元にバイパスを作って安全にエネルギーを供給するルートを確保できない限り『魔法』は発動と同時に人体が消滅することになる。多分四次元では無理なのだろう。」
----五次元ならばそれが可能と?----
「神の奇跡や魔法と言ったものが存在するなら、それは高位次元の存在で四次元に存在する人間には知覚すること自体むつかしいものなのかもしれない。何とか知覚可能な表現で精神世界と言う次元があるのかもしれない」
----行ってみたいですか?----
「まぁ興味がないと言ったらうそになる(ん?なんか違和感が)」
----高位次元の認識に成功しました
転送の意思確認完了しました
これより転送の準備に入ります。----