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07.聖女と皇太子

「ここなら良いか」

ガイウスは引いていたマ-ルの手を離し、にかっと笑った。

「見てみろ!」

中庭の咲き誇る花々。

マ-ルはうっとりと花に見とれ笑顔になった。

「ようやく笑ったな」

「え?」

「先程は騎士団の者がすまなかった…。聖女殿の力が万能と思っている節があったようだ」

ガイウスの言葉に胸がチクリと痛む。

マ-ル自身も聖女と言われ、身体の欠損も治せるのではないかと思っていたからだ。

「私の言葉に他意はない」

「え?」

マ-ルはガイウスを見る。


「酷なことを言うが、欠損してしまった身体は元には戻らない。聖女の力についても未知数で何もわかっていない。それなのに、治せると勝手に期待し勝手に絶望するなど…貴女に失礼にも程がある」


ガイウスの言葉にマ-ルの目頭が熱くなっていく。

(わかってくれた…)

溢れそうな涙を必死に堪える。

「泣いても良いんだぞ?婚約者がいる身の上だから、胸は貸せないが…背中は貸してやろう」

「ふっ、うう…うわぁぁぁぁぁ」

マ-ルは人目も気にせず大声で泣いた。

貸して貰ったガイウスの背中に顔を埋めて。

(治せるなら治したかった、治したかったよ…悔しい…)




どれだけの時間が過ぎたか定かではないが、マ-ルも落ち着いたようだった。

「すみませんでした…」

泣きすぎで少し鼻声になってしまったマ-ル。

「はは、気にするな」

ガイウスはそれを気にも留めずに笑った。

高鳴るマ-ルの鼓動。

最初に見たときも同じように胸が高鳴ったのを思い出した。

(やだ…殿下には婚約者がいるのに…)

心臓の音を聞かれないように、マ-ルはぎゅっと胸元を押さえる。

(落ち着きなさい)

「戻ろうか」

「はい」

ガイウスに導かれ、マ-ルは負傷した騎士がいる部屋へ戻った。






*******************






「戻ったぞ。セリカ、皆の状態はどうだ?」

「お帰りなさいませ、殿下」

セリカが一礼する。

「比較的軽症の方は数日中に戻れるでしょう。火傷の酷い方もいますが、跡は残るでしょうが痛みが引き患部が乾けば戻れます。ただ…」

ちらりと負傷した箇所が欠落している者に目を向けるセリカ。

同じようにガイウスもその者に目を向ける。

「欠損がある方は騎士には戻れません。陛下と殿下の許可を頂けるのでしたら、義手・義足等の補助具をお作りし、私のアトリエでお仕事を任せたいのですが…」

「任せる。父上には私から話を通そう」

「ありがとうございます」

深々と頭を下げるセリカ。

マ-ルには二人に強い絆を感じ、先程とは違う胸の痛みが生じるのを感じていた。

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