03.憂鬱な聖女
マ-ル・マリエルの生活は一変した。
先日受けた成人の儀から。
「本日はこちらの封書が届いております」
メイドが持ってくる数え切れない程の封書。
大半が求婚のもので、残りがお茶会のお誘いである。
「はぁ、今まで見向きもしなかった伯爵令嬢に求婚するとは…皆様暇なのかしら…」
大きな溜息と共に、最早自動回答のように求婚の手紙には″友人からお願いします″と書き、お茶会に関しては″こちらで主催する際に是非″と書いて。
長い時間をかけ、返事を全て返していく。
そういえば、と…届いた封書を確認するが、先日友人になったフランジェシカ・ハウメル伯爵令嬢からのものはなかった。
「今日もお返事なかった…」
マ-ルはがっかりしつつ、書いた返事をメイドに届けるよう依頼した。
─────数日後。
待ちに待ったフランジェシカ・ハウメル嬢からお茶会参加の返事が届き、マ-ルは急ぎ準備を進めた。
お茶会当日。
「え………?」
「本日はお招きに預かり大変恐縮です」
驚くマ-ルの右手の甲へ口付けを落とし、挨拶したのはディラン・ハウメルだった。
「あの、今日はフランジェシカ様と…」
「あ-、そうでしたね。生憎フランジェシカに急用が出来、代理で僕が伺わせて貰いました」
真っ赤な薔薇の花束を手渡しながらディランはそう言った。
「でしたらまたフランジェシカ様のご都合に合わせて開催しますので…」
″今日のところはお引き取りください″と続くはずの言葉は紡ぐことが出来なかった。
花束を抱えたマ-ルの腰に手を添え、耳元に唇を寄せるディランが掛けた言葉によって。
「本当は僕と会いたかったのでしょう?」
思わず悲鳴を上げそうになったマ-ルだが、寸でのところで堪えた。
伯爵令嬢らしくにこりと微笑み、(早く帰ってもらおう)と強く心に決めて。
フランジェシカ嬢とのお茶会のつもりだったので、机に並ぶのは色とりどりのお菓子に軽食、紅茶類だけであった。
「フランジェシカを隠れ蓑にしなければいけないからとここまで念入りにご用意されるとは…マ-ル嬢は慎重派ですねぇ」
用意した紅茶をゴクゴクと飲み干しディランは向かいに座るマ-ルをねっとりと見つめた。
居心地の悪さを感じながら、紅茶を一口飲むマ-ル。
(フランジェシカ様とお話ししたかった)
悲しむマ-ルに気付くことなく、ディランは解散するまでずっと自身の話を続け颯爽と帰って行った。
(あんな自信はどこから来るのでしょう…。他のご令嬢はともかく、私にはちっとも面白くありませんでした)
しかし、ディランはまた来ると予告している。
マ-ルは深い溜息を吐くのだった。