02.聖女誕生ー後編ー
「フランジェシカ・ハウメル伯爵令嬢は風属性です」
神官が先程の少女の属性を宣言する。
ほっとした表情で少女ーフランジェシカ・ハウメルーは祭壇から降りてきた。
マ-ルはフランジェシカに近寄る。
「無事に儀式を受けられて良かったですね」
そう声を掛ける。
笑顔を絶やさないマ-ルに、顔を紅くし、フランジェシカは再度お礼を伝えた。
「困っている方をお助けするのは、当然の行為です。お気にならさず」
「あ、ありがとうございます」
ぺこりとお辞儀するフランジェシカを見ていたマ-ルは、突然手を叩いた。
「私とお友達になっていただけませんか?」
「私で良いのでしょうか?」
名案だと言うように、マ-ルはフランジェシカに提案する。
フランジェシカは困ったように質問に質問で返してしまう。
が、それを気に留めずマ-ルは「もちろんです」と答えるのだった。
「では、よろしくお願い致します」
深々と頭を下げるフランジェシカ。
「友達にそんなことしないでください」
「それもそうでしたね」
くすくす笑い合う2人。
そのままお茶会の約束を取り付ける。
初めて出来た友人にマ-ルは嬉しさを隠せずにいた。
2人が小さな声で談笑している中、成人の儀も進み、最後の一人を残すのみだった。
「皇太子、ガイウス・フォンティ-ヌ・ウェルフレア様、祭壇へどうぞ」
金髪の男性が祭壇へ上がっていく。
マ-ルはその男性をちらりと見て、顔を真っ赤に染め上げた。
皇太子のガイウスは整った容姿をしている。
彼に恋心を抱かない女性は居ないのではないかといわれるくらいには。
「ガイウス様、炎属性」
結果を聞くなり、ガイウスはさっさと祭壇を降りてしまった。
声を掛けたかったと見受けられる神官は、落胆の表情を見せたがすぐに持ち直す。
成人の儀の終了の言葉を紡いだ。
「無事終了ですね」
マ-ルが神官の退室を確認し、隣のフランジェシカに話し掛ける。
「私達も帰りましょうか」
「そうですね」
2人で扉の方へ歩みを進める。
「おい、フランジェシカ!」
フランジェシカを呼ぶ男性の声。
マ-ルはその場に止まる。
「あ…」
相手を確認するなり、表情が暗くなるフランジェシカ。
「どなたですか?」
「我がハウメル伯爵家の次期当主、ディラン・ハウメル様です」
マ-ルの問いかけに淡々と答えるフランジェシカ。
「ふ~ん………」
ニヤニヤと品定めをするかのような視線でマ-ルを見るディラン。
「聖女ってのもなかなか…」
呟いた言葉がマ-ルの耳に届くことはなかった。
ただし、絡みつくような視線には嫌悪感を抱くマ-ル。
「帰るぞ、フランジェシカ」
「はい」
ディランが踵を返しさっさと歩き始める。
フランジェシカはマ-ルに頭を下げると、ディランを急いで追いかけた。
その姿を見送るしかないマ-ル。
成人の儀が執り行われた部屋にはマ-ルがひとり取り残されるのだった。