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19.聖女が今為すべきこと


フランジェシカしか領地に赴いていない───そう聞いてしまったマール。

横たわるフランジェシカの手を取り回復するよう祈ろうとした瞬間。


「マール様、ダメですよ」


天蓋に入ってきたルイスに止められる。

「かなり疲弊していますから、急速な回復は身体に負荷が掛かりすぎてしまうので逆効果なんですよ」

ルイスは薬草入りの食べやすい汁物を手にしていた。

何か言いたげにフランジェシカを見るマール。

「ご心配ですね。しかし、ここに来たのですから…ハウメル伯爵令嬢の頑張りに応えませんと…ね?」

柔らかく微笑むルイスには、マールのことはお見通しのようだった。

「そうですね、折角フランジェシカさんが頑張って閉鎖して感染拡大を阻止していたんだもの。私は私で治療を頑張らないといけませんね」

マールは立ち上がりルイスを見る。

「彼女の───いえ、()()()()()()()のこと、任せても良いですか?」

「はい、勿論です」

「では、お願いしますね」

後ろ髪を引かれる思いだったが、マールはフランジェシカに与えられた天蓋を出て行った。







マールがスノー・ドロップ感染者のいる村へと入ると、既に神官たちの手により症状を示すプレートが掲げられていた。

その中の重篤度を示す赤が掛かっている家に入る。

皮膚の殆どが真っ白になっており、内臓がその役割を終えようとしているのが一目で判る程に症状が進行していた。

「お母、さん…」

横を見れば幼い兄妹も少しだが肌が白く変色し、スノー・ドロップ罹患者だと判る。

「こっちに来てください」

マールは幼い兄妹を母親の傍らへ呼ぶ。

「でも…」

「母さんがうつるからダメだって」

兄妹は母親の言ったことを守り、傍へ行くことを拒否する。

「偉いですね、言い付けを守って。私がお母さんもあなた達も治すから近くに居ていいんだよ」

微笑むマールに兄妹は頷き「母さん」と近くまで寄った。

その姿を確認しマールは″聖女の祈り″を発動する。


白かった親子の肌がみるみるうちに赤みを帯び始め、健康的な色に変わっていく。

衰弱していた母親の呼吸は穏やかになり目を覚ました。

「完治しました。騎士団の方から配給される食事を取り、元気になってくださいね」

マールは兄妹の頭を撫で立ち上がる。

「では、これで…」

「ありがとう、お姉ちゃん」

兄妹が満面の笑みでお礼を述べた。

それに手を振って応え、その家を後にする。




「ふぅ、次はどこかな…?」

キョロキョロと周りを見回し赤いプレートを探す。


「探しましたよ、聖女マール様」

マールの背後から声が掛かった。

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