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18.聖女と親友


ハウメル伯爵家への訪問後、マールはフランジェシカと手紙のやり取りを重ねていた。

他愛ない出来事や近況を伝え合う───今はフランジェシカからの手紙を読んでいた。


【マール・マリエル様

 お元気でお過ごしでしょうか?

 ~中略~

 私の領地にも遂にスノー・ドロップ罹患者が出てしまい、その村の罹患者は増加の一途を辿っています。

 心苦しいですが、風の魔法は拘束が得意な属性なので、村一帯を封鎖することにしました。

 その為しばらくは王都には戻れません。

 マール様、また戻れましたらお会いしましょう。

               フランジェシカ・ハウメル】


フランジェシカの手紙を読み、マールは立ち上がる。

出掛ける準備を整え教会へと赴いた。






***********






「マール様、まさかいらっしゃってくださるとは…」

数日後、マールはハウメル伯爵領に来ていた。

教会に属する神官数名と、マールの護衛騎士を含めた一小隊で。

「スノー・ドロップの治療は私しか出来ないんですよ?友人…いえ親友が困っているのに来ないはずがありません」

フランジェシカの手を取り、マールは微笑んだ。

「ありがとうございます」

2回目の遠征となれば、各人も手慣れたもので天蓋の設営や配給品の準備等を進めていく。

「本当に、ありがとうございます」

設営された天蓋を見ながらフランジェシカはお礼を述べていたが、突然その場に倒れた。


「フランジェシカさん!?」


マールが慌ててフランジェシカに駆け寄った。

「マール様、動かさないでください」

ルイスが駆け寄りフランジェシカを診る。

ゆっくりと水魔法を巡らせた。

「過労ですね。かなり無理をして魔力を使用していたようです。今、疲弊した体力を少しだけ回復させましたから、後は十分な食事と休養を取れば大丈夫ですよ」

フランジェシカの様子を聞いてマールは胸をなで下ろす。

天蓋に移動させフランジェシカを寝具の上へと横たえる。


「ただ、ハウメル伯爵家の方は風属性が多いのですが…この封鎖魔法はフランジェシカ嬢の魔力しか感じられませんね。他の一族の方はどちらに…?」

ルイスが呟く。

すると………。


「フランジェシカ様以外の方はお見えになってません。伯母にあたるタービン伯爵夫人も、従兄にあたるディラン・タービン様もおいでになってませんから」


強い口調でメイドが口を開いた。

「え?ディラン様はハウメル家の次期当主で、ディラン・ハウメル様では?」

「旦那様と奥様がお亡くなりになり、フランジェシカ様だけになってしまった途端に我が物顔で好き勝手しているだけです」

「え………?」

この地にフランジェシカだけしか来ていない───そう聞いてマールの心はザワついた。

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