17. 聖女と不穏な事件の始まり─後編─
あのお茶会から一週間が経過した日の早朝。
「お嬢様、騎士団の方々がお嬢様にお話があると…。その、お見えになってます。どうされますか?」
メイドのカレンが恐る恐る様子を伺ってくる。
「わざわざいらしたのでしょう?お会いします。用意を手伝って」
「かしこまりました」
カレンに手伝ってもらい、夜着から着替えたマール。
騎士団の面々がいるという談話室に向かった。
「お待たせして申し訳ございません」
談話室にマールが入ると、騎士団の面々は立ち上がり会釈をした。
「朝から失礼します。少しお話をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「は、はい…。お掛けください」
「失礼します」
向かい合うように座るマールと騎士団員。
カレンの用意したお茶が目の前に置かれる。
「御用件とは…」
マールが話を切り出す。
目の前の騎士が少し躊躇してから話を始めた。
「一週間程前にハウメル伯爵家へご訪問された、と伺いました。その後不審な者等見ておりませんでしょうか?」
「え!?い、いえ…何も…」
「そうですか…」
話し始めた騎士は安堵の表情を見せる。
「マール様が訪問された日にハウメル伯爵家を訪れたご令嬢がならず者に襲われました」
「っ!?」
思わずマールは口を押さえる。
「まさか…私をお疑いに?」
「とんでもない!」
もう一人の騎士が口を挟む。
「あの時のご令嬢が3人も襲われていますので…」
「口を慎め!」
ペラペラと喋り出した騎士を最初の騎士が窘める。
肩を掴まれ強い口調の叱責に喋っていた騎士も、マールもびくりと肩を震わせる。
「も、申し訳ありません」
「マール様、失礼致しました。今のことは他言無用でお願い致します」
「わかりました。大丈夫です、私誰にも言いません」
ぎこちなく笑顔を作りマールは答えた。
「つきましては、騎士団から護衛を派遣させていただきます。窮屈な思いをさせてしまいますが、ご理解ください」
「わかりました」
「後ろに控えてます騎士が付きますので、よろしくお願い致します。では、私共は次の任務がありますので失礼致します」
「ありがとうございます」
マールがお礼を述べる。
お喋りな騎士を連れてマリエル邸を後にした。
「「マール様、よろしくお願い致します」」
「こちらこそよろしくお願いします」
二人の若い騎士と挨拶をし、マールは日課になっている治療の為教会へと出掛けるのだった。




