13. 聖女と騎士団 ─前編─
レジーの訃報から1週間。
マールは協会側から″喪に服すため治療は一時的にお休みします″と言われていた。
聖女として崇められてから早半年、毎日のように通っていた教会に行くことが出来ず、マールは暇を持て余している。
(教会に行けばガイウス様とお会いできるかもしれないのに…)
そう考えてからふと気付く。
以前自分が治療すら出来なかった騎士団の方々に会いに行けば良いのでは無いか、と。
騎士団の詰め所は王城の一角、あわよくばガイウスに会えるかもしれない。
居ても立ってもいられず、マールは行者に王城へ向かうと告げ、メイドに支度を手伝わせる。
そして急いで王城へと向かった。
**********
(うふふ…ガイウス様喜ぶかしら?)
登城し騎士団の詰め所へと案内されるマール。
そこまでの道すがらガイウスを想っては頬が緩む。
「こちらが騎士団の詰め所になります」
「ありがとうございます」
案内をしてくれた相手にお礼を述べ、軽い足取りで騎士団の詰め所に入っていった。
その後ろ姿を何とも言えない表情で見届け、案内係は踵を返し持ち場へと戻っていく。
「失礼します」
ガチャリと扉を開けるマール。
中には騎士団長と副団長が何やら難しい話をしていた。
「……………っ!」
「これはこれは聖女様、こんなむさ苦しい場所にようこそおいでくださいました」
ノックも無しに突然入ってきたマールに苦言を呈したい副団長をそっと制し、団長は優しく話し掛けた。
制された副団長は出掛かった言葉を飲み込み、黙って団長の対応に任せることにする。
「あの、以前怪我をされた皆様の御加減は如何かなと思いまして…」
「そうでしたか。復帰可能な者は皆復帰し、遠征にも同行させていただきました。お心遣いありがとうございます」
「まぁ!そうでしたの」
口元に手を当てマールは驚いていた。
その姿に副団長は顔を歪ませる。
団長から肘打ちを受け、歪ませた顔を戻した。
「見ていかれますか?今ならガイウス様もご一緒に鍛錬されておりますよ」
「よろしいのですか?是非!」
にこにこと笑うマールを伴い、団長は演舞場へと向かった。
副団長は本来なら共に向かう───率先して聖女を案内するべきだが、そうすることは出来ず団長の優しさに甘え事務処理をすべく詰め所に残ることにする。
窓の外を眺め大きな溜息を吐き、団長の机に積まれた書類の整理を始めた。




