表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/19

12.聖女は許さなければならないの? ―後編―


王都へ帰還後、マールは教会に呼び出されていた。

先日の遠征でのレジーとの一件の聴取の為に。

その為今日の治療はお休みだ。

「では、レジーが聖女様に手を上げたのは事実ということですね?」

「はい」

大神官の顔を真っ直ぐ見詰めるマール。

「私はただ、再度村に被害を及ぼす存在の治療を拒否しただけです。それが間違いなのでしょうか?」

「教会としては救いを求める者拒絶はできないので、処罰を受けますが…聖女様は教会所属の方ではありませんので、咎められることはありません」

「良かったです、間違っていなくて」

心底ほっとした安堵の表情を浮かべるマール。

その様子を見て大神官は溜息を吐いた。

先に同行していたルイスや騎士から、レジーの処遇についての嘆願があった。

マールも真意を知ればレジーの処罰を望まないはずだと。

でも、当のマール本人がそれを口にしなかった。

レジーの行動の真意が彼女に届いていなかったようだ。

かといってこちらからそれを説明して不興を買うのは問題だった。

大神官は重い口を開く。

「聖女様はレジーに対して何を望みますか?」

「重い刑罰を望みます!」

はっきりとそうマールは告げた。

大神官は顔を曇らせる。

「わかりました」

そう答えるしかなかった。

国王からは聖女マールを重宝し、何よりも尊重するようにと仰せつかった。

彼女もそれを知っているだろう。

国王に告げらればレジーの死罪は免れない。

大神官は頭を抱えた。




大神官と面会したマールはレジーと対面していた。

「私に平手打ちをしたから、貴方には重い刑罰をお願いしておいたわ」

にこにこといつも通り話すマール。

レジーは「そうですか」とだけ話した。

あの一件からマール付き神官になったルイスは、マールに見えないところで複雑な表情を見せていた。

「もうお仕えできないのは残念です。今までありがとうございました」

レジーが深く頭を下げた。

「さようなら。もう会うこともないでしょう」

その姿を見ることなくマールは部屋を後にした。

ルイスはレジーに視線を向けたが、レジーから「行け」という視線を返されマールの後を追った。




後日、マールのもとへ神官レジーの訃報が伝えられた。

誰もいない部屋で顔を覆い、レジーを思い浮かべるのだった。

初めての治療で戸惑った自分に優しくしてくれた人。

こっそりお茶会を開いて労ってくれた優しい人。

治療で疲れたときに疲労を軽減させてくれた人。


そして、私を裏切った人。

「レジー、貴方は何で私を叩いたの?」

マールはそっと涙を流した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ