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星の泪  作者: 塩ライオン
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淡いスクールライフミステリー







猛暑の今日。誰も出歩くことを望まない白昼に彼奴はあのグラウンドの真ん中に立っていた








 午前5時45分。私はいつも通り、祖母に叩き起こされた。眠たい目を擦りながら顔も洗わずに食卓につき、質素な朝食を、見ていた夢を邪魔された不快な気持ちでゆっくり食べる。まあ、祖母は向かいの席で、早く食べないと遅刻するだの、口が動いていないだの愚痴愚痴言っている。これが私の朝の日課だ。ここで私の家族構成を紹介しておこう。私は母、祖母、祖父の四人でまあまあ田舎に暮らしている。前述から私に母が不在と思った方もおられるだろうが、そうでは無い。父もまた然りである。父の事から話そう。父は某大手企業に勤めており、まあまあ田舎なこの地には子会社すらない。とのことで、単身赴任をしているのだ。おかげで、のんびり一人暮らしを満喫していて、自分が父親の自覚はなさそうである。母は自由気ままな人で、自分の娘を自分の親に任せ、好きな時に寝起きし、好きな時に好きなだけ実家のご飯を貪っている。(母は我が家ではハイエナとよばれている。)

さて、前置きが長くなったが、今日は先日卒業した中学校の先生に、第一志望だった高校に合格したことを伝えに行くのだ。

 今日こんにちの私が中学校に行って褒め讃えられた話は皆さんにとってどうだっていい話なので、私の学校の話をしよう。私は、自慢ではないが県一の小中学校に通っていた。この学校は一応小中一貫校で中学校から中学受験を経て入ることもできる。合格した高校は、県一ではないが我が県の御三家とよばれている高校の一つである。先程、第一志望だった高校と述べたが、第一志望になったのは願書を書く直前だ。本当は県一の高校に行きたかったということは心の内にしまっておこう。でも、皆さんもこのような経験はあるのではないか。人生全てが上手く行くわけではない。でも人生が成功するかどうかは、たとえ受験で失敗したとしても、その後の道で成功に変えようという自分の心の持ちようであると思う。批判はあると思うが、受験で思うようになってもならなくても、人生という長期的なスパンで見れば大した問題ではない。むしろ、受験で思うようになったとしても、その後の道で成功するように努力を怠るものは受験で思うようにならなかった者よりもいい人生を送れるとは、断言出来ないだろう。

 これらが、高校受験を終えた私が伝えたかったことで、伝える相手がいないのでここに述べさせて頂いた。




 ちょうど桜が満開の頃。令和元年の入学式と言いたいところだが、平成三十一年の入学式が始まった。進学校から進学校への入学ということもあって、知り合いも多く、すぐに打ち解けることができた。開会式が始まる頃、皆が着席し静まり、私はほしを見つけた。中学のときから、私の中で光っていた星を。その存在の認知が私を安堵に導いた。





 


 星。それは彼奴だ。天堂 晴人だ。 




 晴人と初めて会ったのもこんな季節だったなと懐古する。それは、小四の始業式だった。全校集会でステージにふたりが立っていた。転校生だ。一人は後に私の親友になる、中村 瞳。もう一人が晴人だった。私の学校では、転校生は虐められる存在では甚だなく、むしろ皆から関心を集める対象である。先程から、晴人が私にとって特別な存在であるかのように比喩してきたが、ステージ上の晴人を見て一目惚れしたと言うようなドラマティックな展開は一切ない。乙女心を人並み以上に持つ私は、ドラマティックな展開をもちろん欲しているのだけれど、晴人の容貌は至って普通としか言いようがなく、低身長で目立つ要素は見当たらない。一つだけ他の人と違うところがあるとするならば、声変わりが早かったことだ。その年、私は彼とは同じクラスにならなかった。

 

 

 

 

 

 翌年。クラス替えで晴人と同じクラスになった。その頃晴人は、女の子好きで変態だと言う噂が流れていた。ちなみに瞳は去年から同じクラスだ。仲良くなった瞳と同じクラスになって、クラス替えの時に感じる妙な緊張感が緩みかけたその時、新学級に不穏な空気が流れた。

 その正体は、イベリコ豚である。イベリコ豚が五分遅刻して登校してきたのだ。イベリコ豚というのは、同級生の山田 果夜かよのことで、彼女は人の弱みを粗探しして、弱みを握られた人は地獄の底まで突き落とされるという話だ。おまけにいかにもモテそうな顔立ちで、自分でそれを百も承知しており、それを利用して身の周りの男を振り回す名人だということである。イベリコ豚がいるクラスは、学級崩壊するという伝説まで築き上げた張本人が我が新学級にやってきたのだ。こうして、新しい物語が始まろうとしている。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 事件簿一  イベリコ豚

 

 

 

 

 

 

 

 「瑞希ちゃん今日も可愛いね!」

 「天堂くんもかっこいいよ!」

 学年一ぶりっ子の高原 瑞希と女の子好きの晴人が小学生にでもわかりやすいご機嫌とりの決まり文句を言い合っている。晴人がこのようなことを女の子に言っている光景は日常茶飯事なのだ。それを聞いたイベリコ豚が、

 「すぐに口説くな大気汚染。」

 と嫉妬した様子で言い捨てた。自分が一番可愛いというイベリコ豚のポリシーに反してしまったのだろう。その頃晴人は、思春期でニキビが顔面を覆い尽くすほどであったため、イベリコ豚から大気汚染と呼ばれていた。晴人は女の子好きだけれど、みんなに優しく話しやすかったため結構多くの人からモテていた。当時の私はどうして晴人がモテるのか不思議に思っていたけど、今思えば皆は自分の心を満たしてくれる存在を欲していて、心を満たしてくれる晴人に好意を寄せていたのだろう。ということもあって、イベリコ豚の発言で冷たい空気が流れた教室だが、晴人の自慢の陽気さだけはイベリコ豚に勝つことができ、

 「別に口説いてるわけじゃない。ほんとのこといってるだよ!果夜ちゃんもすんごく可愛い!」

という晴人の発言に果夜は、頬を赤らめ

 「そんなことないよ。」

 とだけ言って自分の席に逃げて行った。果夜も晴人のことが好きだったのだ。その後は何事も無かったかの如く、平穏な空気にもどった。

 ある昼休み、高身長の男子が教室の後ろ扉を勢いよくあけた。授業が終わってすぐだったため、まだ席に座っている人が多く、威圧感のある高身長の存在は際立っていた。何事かと皆がその男子に注目していたところ、なんとその男子はイベリコ豚の前でとまったのだ。皆は告白シーンだと思ったらしく、ウキウキとした眼差しで見守っていた。しかし、イベリコ豚は嬉しそうな顔をしていると思いきや、青ざめて今にも泣きそうな顔をしている。いつも自信たっぷりな彼女がだ。その男子はこう言った。「小六の山崎 悟郎だ。君は山田 果夜だね?放課後、番犬の前にきてほしい。じゃあ。」そして、すたすたと出ていってしまった。番犬というのは学校の目の前にある文房具屋の脇にあるラブラドールの銅像の事で、お世辞にも可愛らしいと言えないような顔から生徒たちの間で番犬といわれている。一連の出来事は一刹那のことで皆状況を飲み込めていないが、クラスのカースト制度トップの女子グループは

 「告白じゃない?」

 「うそ!?果夜が六年から?」

 「ありえる話じゃない。果夜は顔()()()可愛いもん。」

 という会話を交わしていた。それをきいた人達が盛り上げ始め、クラス中大騒ぎになった。

 

 

 クラス中が大騒ぎしている中、不安な気持ちでいっぱいな人が一人いた。そう。イベリコ豚だ。どうして私がこんな目に…

 一週間前の放課後、イベリコ豚はお得意の人の弱み握りをし、同級生の中島を脅迫した。中島はサッカークラブに所属していて、そのお世話係をしている六年の原野 希さんに好意を寄せていた。そのため、ちょっとでも希さんと一緒にいたいがために怪我を偽って、よく世話をしてもらっていたのだ。だが、希さんはクラブ長の山崎 悟郎と両想いだったらしい。情報通のイベリコ豚はそれを知った。そこで、

 「中島知ってる?原野さんと山崎くんって両想いなんだってさ。中島が原野さんに一方的に好意を寄せて、仮病使って原野さんに近づいてたこと山崎くんに言っちゃおうかなー。クラブ長が聞いたら中島を排除しようとするかもね!あはははは。」

 と言った。中島は顔を真っ赤にして、図星だったので反論することも出来なかった。沈黙が三分ほど続いた。そして、中島はその間で大きな決断をして、走って帰っていった。イベリコ豚もつづいてゆっくりその場を後にした。その後中島の姿を見たものはいなかった。その後イベリコ豚は姿を消してしまった中島のことをずっときにしていた。

 こんな事があったために、果夜は不安な気持ちを抱かずにはいられなかった。中島は真面目で、次のクラブ長になるだろうと言われていて、先輩からの信頼もあつかったため、一週間も学校もクラブにも来ていないことを心配して、山崎くんが原因を突き止めたのかもしれないと思ったのだ。何を言われるのか。何をされるのか。そんなことばかり頭に浮かんで、その日の午後の授業は何も頭に入らずに終わった。

 終業のチャイムが鳴って、重い足取りで番犬に向かった。番犬の前には既に山崎くんが待っていた。果夜の姿みつけた山崎くんは手招きをして早くこっちに来るように促している。近づくと、山崎くんが口を開いた。

 「中島から聞いた希の事。あいつ希のことが好きだったんだな。俺はそれに気づかずに、中学にいったら希と付き合うこと言ってしまったんだ。だから、あいつ俺に言う事が出来ないでコソコソ希に近づいてたんだって思った。多分、君から脅迫された後すぐ俺のところに相談しに来たんだろう。君の噂はサッカークラブでは有名だ。希に嘘ついて近づいていたことを知られたくなかったらしい。あいつは俺の邪魔をしたくないから、姿を消すって言っていた。止めたんだけど、決心したから変えないって。君のおかげで俺の中の希を愛してるっていう気持ちも一層はっきりしたし、希にあいつが好意を抱いていた事だけはつたえておいた。そしたら、謎が解けたような様子だった。希も中島の怪我の多さを不思議に思っていたらしい。こんなふうに俺たちの関係に区切りをつけるきっかけを作ってくれたのは君だ。一言お礼を言おうと思って今日呼び出したんだ。」

果夜の目は涙でいっぱいになった。自分が面白半分で脅迫したことがこんなにも大きな事になるまで膨らんで、誰かの人生を変えてしまうことになるなんてちょっとも予想していなかったのだ。

 「君も早く大人になるといいね。」 山崎くんはそれだけいってその場を立ち去った。果夜はその場で泣き崩れ、日が堕ちるまで番犬の前から離れられなかった。番犬の顔をみて我が身を重ね合わせ、自分の行いを反省して気持ちを入れ替えた。その後、果夜をイベリコ豚と呼ぶ人はいなくなったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 


事件簿二 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある放課後。

 黒い影が学校近くの川沿に現れた。そして、なにかを投げ捨てて立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 学園前の一つ前のバス停、畑山から学校まで私は瞳と話しながらあるいていた。すると、川の中にある靴が私の目に止まった。私は思わず

 「あれ、私たちの学年の内履きじゃない??」

と叫んでしまった。突然叫んだ私に驚いて、瞳は目をキョロキョロさせて、

 「どこどこ?」

ときいた。

 「ほら、川の中!緑色の内履きだよ!私たちのと同じやつ」

 「本当だ!え!誰のだろう?」

 「内履きって踵と爪先に名前書いてるよね。見える?」

 「あ。黒で塗りつぶされてる。出席番号も名前も。」

 「まじ!?すごくまずいやつじゃない?」

 「「いじめ??」」

私たち二人が思うことは同じだった。顔を見合せて辺りを見回したがこのことに気がついている者はいなかった。

 「とりあえず、学校に早く行こう!内履き無くて困ってる人がいるかもしれないし。先生に相談しよ!」

と瞳が言い、急ぎ足で学校に向かった。

 私と瞳が学校に着いた時、内履きがなくて困っている子はいなかった。まず、教官室に行こうという話になり下足箱を開けた瞬間。「あ!」という声が聞こえた。横を見ると瞳が困った顔で

「私のだったのかなあ。」

と言った。瞳の下足箱を見てみると、靴の姿はなく代わりに封筒が置いてあった。私は恐る恐る

 「封筒開けてみたら?」

と言った。封筒を開けると、くしゃくしゃになった紙がでてきた。

 

 

 

 

 裏切り者。

 これだけ書いてあった。私は不安になり、どうしていいか分からず、

 「とりあえず教官室行ってみようか。」

と言った。先程の元気はどこに行ったのやら、瞳は軽く頷いて俯きながら、教官室に向かう私についてきた。私たちが相談したのはみんな大好き担任の草野 つよし先生だ。先生はすごく優しく面白くて、出張先のお土産を生徒達に買ってきて分けてくれたり、オルガンを片手で持ち上げて皆を驚かせたりしてくれる。何よりも生徒思いの先生だ。まず先生はスリッパを貸してくれた。そして私たちを椅子に座らせ、落ち着かせた。

「状況を整理します。お二人さんが一緒に登校してくる時に川に靴が捨てられているのを見た。そして、その靴は名前のところと学籍番号のところが黒色のマジックで塗りつぶされていた。学校に急いで来て、下足箱を開けると中村さんの内履きがなくなっていて、代わりに封筒に入った裏切り者とかかれた紙があった。ということですね?」

私たちは激しく同意するために頷いた。

「一応聞いておきます。中村さん何か心当たりはありませんか?裏切ってしまったようなことは。」

その言葉を聞いて瞳は過去を振り返るような顔で考え始めた。時間が経っても答えがでなさそうである。草野先生は、

 「心辺りがないのなら解決するのに時間がかかりそうですね。でも、きっと解決する鍵はこの手紙にあるような気がします。」

と微笑みながら言った。

 「先生の予想ですが、この紙がくしゃくしゃになっているのは書いた人が実行するかしないか悩んで一回この紙を捨てたからだと思います。犯人という言い方はよくありませんが、悪の心からだけというわけではなさそうです。ですから、これ以上中村さんを傷つけるような真似はしないと思いますので、ゆっくり解決していきましょう。」

この言葉を聞いて瞳からの安堵の空気が伝わってきた。〝キーンコーンカーンコーン〟始業のチャイムがなり始めた。私たち三人は急いで教室に行った。





続編をお楽しみに!

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