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アンファミリア  作者: 童子ん氏
6/12

タッチ&土下座

ダイバーエースに乗り始めたので初投稿です。

 「ふぅー、緊張しました」


 男はそう言うと指揮官室の席にもたれ掛かる。今日1日だけであまりに大きなことがあり過ぎ、彼は心も体も疲れ切っていた。


 「お疲れ様です。指揮官様」


 ミリアスはそう言うとお茶を男に渡す。


 「ああ、すいませんね。ところでなんですけどちょっといいですか?」

 

 「はいなんでしょう?」


 男はミリアスにいくつか質問をする。


 「自分の指揮能力について誰も何も言って来なかったのですがいいのですか?」


 指揮官なのだから部隊を指揮するものである。ゲームの中でもそのようなことをしてきていたが、あまりに先程の戦闘は違いすぎて自分にはできる自信がなかった。


 「そうですね、ですが大丈夫ですよ。指揮官様はどちらかと言うと我々に対する最終安全装置みたいなものなのですから」


 そう言われ男は首を傾げる。


 「どういうことっすか?」


 「指揮に関しては問題がないのです。元々指揮官様は出撃や、戻れ、などのことしか言ってもらいませんから」


 「そんな簡単なことでいいんすか?」


 「そうですね、指揮に関しては指揮能力に長けた者が元々3人おり、作戦の立案や部隊の指示などはその者達が行っております。指揮官様は最後にその作戦を許可していただければいいのです」


 この基地には指揮に長けた者がそれぞれ指揮権を握っていた。


 「指揮官様がそう決めていたのですよ?」


 「あ、そうなんですか」


 (ゲームの設定的にそういう風になってんのかな?まぁ経験ない俺の指揮なんて部隊全滅不可避だからな)


 男は安堵しつつお茶を口に含みながら少し考える。


 「それで自分は何すればいいんすか?安全装置?」


 男は先程ミリアスに言われた言葉が気にかかりる。


 「そうですね、指揮官様は安全装置、もとい我々が反乱した時の強制命令装置ですね」


 男はあまりよく分かっておらず、顎に手を当てる。


 「どういうことっすか?」


 「例えば指揮官様、考えてみてください。今日この基地にいた人を見て何か思いませんでしたか?」


 ミリアスにそう言われて男は今日あった者を思い出す。


 「あ、男性が誰もいなかったですね」


 「その通りです」


 男が今日会った人、全員が女性であった。多分この基地には男性はいないのだろう。


 「この基地には指揮官様以外にただの人間はいません。指揮官様以外はみなインサイダーなのです」


 「それで指揮官様、そんな中我々が何かしらの理由で反乱した場合どうなると思います?」


 「まぁ簡単にこの基地を制圧できるんじゃないですか?自分一人なんてどうってことないだろうし」


 彼女達が本気で反乱などすればそもそも軍であろうと勝てないだろう。男には軍隊であっても数時間で彼女達に制圧されるのを想像するのは容易であった。


 「そのための指揮官様です。指揮官様には我々に命令を行い、それを強制的に実行させることができる強制命令権があります」


 「なるほどそれで安全装置」


 「そうです」


 「なんと言うか嫌な感じっすね」


 男には彼女達にはそのようなことをするとは思えなかった。


 「仕方ありません。本当にもしもの時のためですからね」


 ミリアスはそういうと、少し笑ってみせた。


 「な、なるほど。でもそれだと思うんすけど自分がいる意味無くないですか?その権限を他の人に移したほうがいいのでは?」


 実際にそのほうがいいのだろう、少しでも経験があるほうがいいに決まっているし彼なんかよりもいい者がきっといるだろう。

 

 そう考えたがミリアスは首を横に振る。


 「指揮官様はここを去りたいのですか?」


 「いや、そう言うわけでは無く・・・正直ここを出て自分の本当に知らないところで生活しなければいけないのはかなりキツイですね」


 男は想像する。この基地では私のことを知っている者がいるが、そこを出れば誰も男のことを知らず、親もおらず、友達もいないそんな世界。そんなところに行くのは男にとってあまりにも恐ろしかった。


 男が顔を歪めていると、ミリアスは優しく言う。


 「扇さんはあんなことを言っていましたが実は我々はあなたに残って欲しいのですよ」


 「え、なんでですか?」


 特に大したことをしていないのになぜ?と思いながら男は聞く。


 「指揮官様は我々と一緒に戦ってきた戦友です。指揮官様によって負傷率も下がりました。皆貴方様の人柄が気に入っていますし、貴方様を助けたいと思っているのですよ」


 ミリアスは男の目をまっすぐに見つめる。見つめる瞳は吸い込まれてしまいそうなほど美しく、その微笑みは太陽のように眩しかった。

 

 それにと言うとミリアスは男の頬を撫でる。


 「やっと顔を見ることができたのです。まだ話したいことも沢山あるのですから」


 最後の言葉はミリアス個人のことであったのか


 男は今にも湯気が出てきそうなほど思いっきり顔を赤くする。


 (な、なんだ?なんなんだ?え?え?え?あーこれ風邪ひいたのか?頭が熱くて心臓がめっちゃ鳴ってるんだが)


 「ふふ、冗談ですよ」


 ミリアスは男の反応をみて小さく笑う。


 男はあたふたしながらも冷静になろうとする。


 「あ、あはははは!そうっすよね!いやーすんませんね!こんな自分を助けてくれるなんて、この御恩は一生かけて返させていただきますよ!」


 男は変なテンションになりながらも何かできないか考える。

 

 「そ、そうだ!自分に何かできないことないっすか?なんでもしますよ!」


 男はそうミリアスに尋ねる。


 「なんでも?今そう言いましたか?」


 ミリアスはそう言うと目を細める。


 (やべっなんかミスったか?もしかして一生操り人形になってもらうとか言われて本当に反乱とかするのか!?)


 「あっ、いや、その、も、もちろんなんでもですよ!どんと来てください!」


 男は緊張しながらもミリアスの返答を待つ。

 

 「そうですねでしたら」


 男が唾を飲む。


 「そ、その、過度な、エッチなスキンシップは控えて頂くとそ、その、ありがたいのですが・・・」


 ミリアスはうってかわって頬を赤らめながら恥ずかしそうに言う。


 「は?」


 男はその言葉に今までの感情全部場外ホームランされ、残った感情で真顔になる。それすらも残っていなかったなら顔から表情どころか顔が消えていただろう。


 「え、あのーそのーあのー・・・例えばですよ?自分どんなことしてましたか?」


 男はギギギと錆びた機械のように顔を動かして、ミリアスを見る。


 「そうですね、そのー普段からよくスキンシップをされていましたが誰彼構わず胸を触わろうとしてきたりと、その、少し抑えてもらえると有り難いのですが・・・」


 それを聞き今度は男から色素が抜け落ちる。


 地球の破滅を数十回経験したようなその絶望に満ちた表情は、ある者には微笑んでいるようにも見えるかもしれない。


 男はそんな表情からなんとか声を出す。


 「・・・・・・皆様は今何していらっしゃいます?」


 「今ですか?今はもう各自寮に戻っている頃合いかと思いますが・・・」


 「・・・今すぐに全員集まってもらうことってできます?」


 「はい?大丈夫ですが・・・」


 「今すぐ放送で第一演習場に集めてください、緊急なんです!」


 「は、はい!」


 男の迫力に押されながらもミリアスは急いで部屋を出る。


 しばらくして放送が流れる。


 男はそれが流れる前からもうすでに演習場についていた。


 それからしばらくして基地にいた者が集まり始める。


 全員が集まる。男のただならぬ雰囲気に皆気圧される。


 物音一つ立たない空間には緊張感が漂っていた。


 男が動く。


 皆その一挙一挙に注目する。


 台の上でなく彼女らと同じ高さに立つ男はゆっくりとゆっくりと膝と両腕を地面につけ四つん這いになる。


 その直後、男は頭をものすごい勢いで下げ額を地面に擦り付ける。


「皆様!大変失礼致しましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 男はゴチン!というあまりにも大きな音を立てながこれまた喉が潰れるのでは無いかと思うほど声を出す。


 土下座


 男は今、人生で最大級の土下座をしていた。

ダバエースめっちゃ楽しいです。

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