幕間
「それにしても驚いたな、お前が自ら動いていたなんて。あいつらに話さなくてよかったのか?」
「問題ありません。生徒の失態はわたくしの責任です。それに、今回の事件については予想できて然るべきでした。落ち度があるのはわたくしの方ですよ」
「そうなのか? そりゃ蜜峰はもともと変わり者だったとは思うが―――」
「いいえ。彼女の性質的な部分ではなく、関わりを持ってしまった事柄について知っていれば自ずと導き出せたはずなのです」
「どういうことだよ。まさか、あいつが本当の犯人じゃないとでも?」
「いいえ、今回のことは間違いなく蜜峰さんが行ったのでしょう。それについては否定いたしません。ですが、これはそれだけの話ではないのですよ」
「お前と一緒にいた黒服達と何か関係してんのか?」
「それは……難しい問題ですわね。関係があるかと問われると無いとは言えませんが、直接関わっているかと言うとそうではありませんので」
「ややこしい言い回しだな。それで奴らはいったい何者なんだ? この敷地内に男を招き入れるなんて正気の沙汰じゃない。アタシだって生徒達の安全を任された寮監だ。自分の仕事に支障が出るようなら、いくらお前が百瀬百合花であっても手加減はできない」
「今回はやむを得ずの緊急措置です。これっきりにしますので許して下さらないかしら、濠野美咲さん」
「……ったく。もしウチの摩咲が動いてなかったらアタシだって気付けなかった。既にお前が手を打っていたとは言え、紅条のやつは助けられなかったかも知れないぞ。あいつ、お前のお気に入りなんだろ?」
「紅条さんなら大丈夫です。いえ、むしろいっそのこと彼女には一度でいいから本気で誰かを好きになって貰いたい、とすら思っていますので。それが蜜峰さんの媚薬による効力であろうと、まあそれほど大した差はないような気がしますわね」
「……はぁ。お前に人間の気持ちとか理解しろなんて言うのが間違いだな。ま、結果オーライってことで今回は見過ごしてやる。蜜峰の処遇についてもお前らに一任するよ。何にせよアタシにはわからないことだらけだ、大人しく寮に戻って引きこもり生活を満喫させて貰うとするさ」
「ええ、頼りにしていますわ。美咲さん」
「調子狂うよまったく。……ああ、そうだ」
「あら、なんでしょう?」
「昨日から寮に入った例の……ええと、三日月絵瑠だったか? あいつはなんだ。昨日様子を見に行ったんだが、少し話をして違うってことはまあ解った。だが、あれはあまりに―――」
「なるほど。貴女が何を気にしているかはわかります。けれど、彼女は少し特殊な事情があるのです。その上でわたくしは彼女の保護を引き受けました。ですので、貴女にも寮監として協力して頂きたいと思っていますが……」
「これもまた話せないような内容なのか? ま、こんなアタシでもここまで関わってくると見えてくるものはあるけどさ」
「…………」
「なあ百瀬、ひとつだけ聞きたいんだが」
「はい」
「三日月絵瑠は、本当に人間なのか?」




