あとがき
最後まで読んで下さった皆さま、
気になって先にあとがきを読んでみた皆さま。
こんにちは、在処です。
ここからはネタバレ配慮せずに思いの丈をぶちまけるので、未読の方はぜひ!本編を……!きっと後悔はさせないものになっていると思いますので……!
それでは本題。
拙作『天使の棺』、本編+α
およそ50万字にも及ぶ長編となりました。
本来なら設定の半分くらいを出して、ある程度ぼかした部分を残した状態で、スパッ! と終わらせてしまったほうが良いかな? という思いもあり、本編部分は30万字、全八章にて幕を閉じました。
しかしながら、私自身がキャラクター達への愛着が湧きすぎてしまい、続きを書きたくなってしまいまして。
『無粋で蛇足なモノになってしまうかもしれないけれど、オレが書きたいから書く!!』
とまあ、完全にノリと勢いによってスタートしたのが『エンジェル・ラダー編』でした。
ある程度の舞台装置、設定だけを作っておいて、あとはキャラクター達に勝手に動かせてみたらどんなお話になるだろう? などという無謀な思いつきからチャレンジは始まりました。
本編は主人公・紅条穂邑の視点を中心に進めていました。所々で別キャラ視点を混ぜたり、四章は三人称視点に切り替えてみたりと変化を付けてはいましたが、本筋としては間違いなく紅条穂邑の物語として描いてきたつもりです。
しかしながら、本作には様々なキャラクター達がいます。私は彼女達の誰もが主役になれると感じていて、そうなるように書きたいという意思が根底にありました。
特に黒月夜羽は第二の主人公として意識しながら書いていたところがあります。表が穂邑、裏が夜羽というイメージ。
その二人と密接な関わりを持ち、物語の舞台となる茨薔薇女学院を設立させた百瀬百合花もまた、彼女らに続いて主役級のキャラクターであると感じています。
ヒロイン枠は言わずもがな、渋谷香菜と三日月絵留の二人です。濠野摩咲に関しては悪友ポジというか、当初の予定ではそこまで活躍させるつもりのなかったキャラクターで、それは蜜峰漓江や船橋灯里にも言えますね。いわゆるサブキャラ的な。
ただ、これは私の悪いクセかも知れないのですが、キャラクターを生み出した以上は活躍させてあげたいという気持ちがありました。
百瀬アリカもそうですが、そこらへんは主にアフターストーリーで十分やれたかなと思っています。
さて、話を戻しましょう。
本編はあくまで穂邑の物語。彼女が『虚ろな罪人』の立ち位置で、絵留が『無垢なる少女』に当てはまります。
ただ、続編をやるにあたって、本編と同じことをやるわけにはいかない。けれど、別に読まなくても問題ないような内容の薄いものにしたくはない。
それなら視点を定めず、多くのキャラクターそれぞれに主役足りうる役割を与え、群像劇をやってみよう! という結論になりました。
主人公である穂邑の出番が突出して多くはなく、どちらかといえば三日月絵留に焦点が当たっていて、誰が主人公かわからない! と思わせてしまっていたら申し訳ありません、それが狙いでした(笑)
そんなこんなで、私の役目はとにかくキャラクター達の思想を固めること、そして、そんな彼女達ならどう動くか? を想像し、ただひたすら文章に起こすというものでした。
見切り発車、広げた風呂敷をきちんと仕舞えるかどうかもわからないような無謀な挑戦。
その結果として生まれたのが『エンジェル・ラダー編』です。物語を通して描きたかった部分が少女達それぞれの葛藤、行動する理由、目的といったものでしたので、必然的にそういった描写が多くなっていたと思います。
そんなこんなで、書いているうちに、
『これはマズい。風呂敷広げ過ぎちまった。
本編レベルのがっつりしたヤツを書かないと収拾がつかねえ……!』
などと気が付きまして。(遅い)
キャラクター達に自由に動いて貰うお話はここまでで、最後はしっかり本編に負けず劣らない『物語』を書いてみよう、と決意しました。
それこそが『ヘヴンズ・ゲート編』です。
このお話で意識したのは、群像劇として各キャラクターをしっかりと活かすこと。本編でやりきれなかった部分、半分ぐらいしか出さずにスッキリしていなかったところを全部出し切ってやろう、と。
結果的に本編と地続きなお話が出来上がりました。ですので、この50万字すべてが『天使の棺』という作品です。アフターストーリーとか言ってますが、第二部みたいなものですね。完結編とも言う。
さて、ここからは物語において私が主役級の扱いを与えたいと思って書いていたキャラクターそれぞれについて語ってみます。
・紅条穂邑
本編の主人公ですが、今回はどちらかというと周りのサポート役。
主役ではあるけれど他を引き立てる立ち位置に収めたいと思って書きました。
・百瀬百合花
番外編にて彼女の心情を書きつつ、本編の裏側、散りばめられていた伏線の回収を担当して貰いました。
主役というよりは舞台装置としての役割が強かったかもしれません。
・三日月絵留
このミカエル・プロトタイプは、ふたつの記憶を持つとても難しいキャラクターです。
しかしながら、記憶を主題においた作品ですので、彼女のような存在は異質であり、面白い立ち位置だなと思いながら、今回はかなり彼女視点を多めに書くことで、この物語の特異性みたいなものを描けたらいいなと。
・百瀬アリカ
今回の主役として強く意識したキャラクターですね。
本編においては敵役であり良いところのなかった彼女ですが、アフターストーリーを通して良い方向に成長するところを見せられたのではないでしょうか。
個人的にかなり好きなキャラクター設定で、本編登場時からテンションあげあげで書いていた覚えがあります。
・渋谷香菜
本編でもそれなりに活躍しましたが、なんというか物足りない感があったキャラクターの一人です。
ヒロインという立ち位置でありながらイマイチパッとしない彼女でしたが、今回の彼女は如何だったでしょうか?
・船橋灯里
本編では結局、謎の存在のまま終わっていた彼女ですが、今回のお話においては鍵となる存在です。
ただ主役というよりは、物語になくてはならないキーパーソン的な立ち位置を目指しました。
・黒月夜羽
今作第二の主人公である彼女ですが、アフターストーリーでは『虚ろな罪人』としての役割を担って頂きました。
プロトタイプではなく、本体の方は本編で活躍していたとは言い難いものでしたので、こちらで思いっきり活躍して貰おうと画策した次第です。
もちろん私は全キャラ大好きですが、特に夜羽は人気投票とかやったらトップに君臨しそうな感じがします。
こんなところでしょうか。
サブキャラの立ち位置に収まった濠野摩咲や蜜峰漓江、倉敷八代などその他円卓メンツ、敵役としての百瀬憂零やジェームズなど、登場人物は多いものの、私が主役として描こうと考えていたのは彼女達が主ですね。
寮監である濠野美咲、百瀬財閥直属メイドのクリスなど、味方側の大人組が最終章であるヘヴンズゲート編で登場しなかったのは、本編と違って『アリカが生徒達と共に立ち向かう』展開にしたかったので、お助けキャラ的な彼女達には今回は大人しくしておいて貰いました。
語りたいことはまだまだ沢山ありますが、そろそろ3000字近いのでこの辺りで。
こんなあとがきまで読んで下さった皆さま、ありがとうございました。
ここまで来たらブクマ、評価などひとつ。
気軽に感想頂けたりすると、嬉しすぎて飛び跳ねながら感謝の返信などさせて頂きますので……!
P.S. ※ここからは追記です
ヘヴンズゲート編で摩咲の活躍があまりに無かったので、本当は書こうとしたけどお蔵入りになってしまったエピソードを。
彼女も香菜と同様に百瀬憂零へ対抗すべく動いていました。
その役割は実はかなり大きくて、第一に『濠野組を動かすこと』、続いて『寮監室に軟禁されている姉の美咲を開放すること』でした。
紆余曲折様々ありまして、結果的に濠野組は動き、美咲も解放されています。
ただ、そのくだりをやってしまうと明らかに話数も足りず、本編、特に描きたいテーマには直接関わりのないものだったため、泣く泣く割愛することとなった次第です。
『優れた姉を持つ妹が、姉を超える』
これが本作における百瀬アリカの議題ですが、実は摩咲にもその片鱗はあり、裏設定として香菜にも存在しています。(香菜が渋谷本家でどのような立ち位置にいるのか、本編だけで察されている方もいるかもしれません)
物語の余白、想像の余地、あわよくば次回作への伏線的な設定は実は結構ありまして。
穂邑や灯里がどうして捨て子だったのか?
蜜峰漓江はなぜ二重人格になったのか?
アリカだけ何故カタカナ表記なのか、その父親は誰か?
万能メイド・クリスの正体とは?
百合花が美咲を救った時の話
五月雨や双葉などのその他円卓メンバー
三日月絵留(ミカエルⅩⅢ)が他のシリーズ達とは違い特別扱いされるキッカケとなった事件とは?
などなど、本編で語られていない裏設定、実はめちゃくちゃあります(笑)
これらはいずれ私が我慢できなくなって番外編として描くかもしれませんが、今の段階では読者の皆さまに想像して頂くための余白として残しておこうかな、と思います。
以上、追記でした。
私のアマチュア作家人生、恐らく最初で最後の長編作品。
少しでも、読み手であるあなたの心に響くものがありますように。