妖怪宴会の途中で犬神様がすねこすりを拾ってきた!?
願い事屋へようこそ
今日の願い事屋は少々騒がしいようですね。
何があったのか覗いてみましょうか・・・・
「あ~あ!やってらんない!マジで!なんで私がフラれなきゃいけないわけ!ねえどう思う!」
「そのフラれた理由ってなんだったんです?」
「そこよ小豆洗い!私がフラれた理由は『お前とデートの時、雨降りすぎだからマジでもう無理』って言われたのよ!仕方ないじゃない!だって私雨女なんだから!」
「ホッホホ!その人間の男は『雨女』っていう妖怪知らんじゃろうからな!」
「そうなのよ!今時の子って妖怪自体『はっ!そんなの信じてるのかよ!』って鼻で笑われるのよ~!」
「それは仕方ないですね~時代の流れには逆らえませんから。でも僕は雨野さんが羨ましいです~」
「どうして?」
「だって、人間の世界で普通に生活できてるじゃないですか~僕なんかこっちの世界で傘売るのも大変なのに~」
「そうかしら?私も苦労は沢山してるのよ~まずはテンションが上がった日なんて雨が降るし、風邪で寝込めば最悪寝込んでいる間ずーっと雨なのよ?人間界では『え~今日の天気予報晴れだったんですけど~』とか言ってる女もいたりするのよ!ムカつかない?」
「まあまあ、お酒飲んで忘れちゃったほうがいいよ!」
「そうじゃ、そうじゃ。今日は酔いつぶれるまで飲んで忘れようぞ!」
「そうね!今日はとことん飲むわよ~!」
ワイワイ、ガヤガヤ
ワイワイ、ガヤガヤ
「まったく、なんでニャーたちの家なのかね!」
「今日は大変な夜になりそうですね・・・・・」
————1時間前———
「ねえ!茶太郎様!ソラ!お願いがあるの!」
「どうされたんですか?雨野さん?」
「ちょっと愚痴を聞いてほしいの!酒飲みながら!お願い!」
「はぁ~!?雨女ふざけるな!自分の家で飲めよ!ニャーを巻き込むな!」
「そこなんとか!お願い!ソラ!だってここ願い事屋でしょ?」
「ニャッ!それを持ち出すとは・・・・もうニャーは知らない!茶太郎に任せる!」
「えっ!?う~ん・・・・じゃあ、お酒とおつまみは自分で買ってくるならいいですよ・・・・」
「わ~ありがとう!さすが茶太郎様!じゃあまた後で!」
「こんばんは~」
「失礼します」
「久々に飲めるのぉ~」
「えっ?雨野さんだけじゃないの!?」
「あれ?言ってなかった?酒飲みながらって?」
「いや、酒飲みながらは聞いたよ!でも小豆君に唐傘君に子泣きじいさんまで来るとは聞いてないよ!」
「いやぁ~わしらはいつも雨野の酒飲み仲間だからな!雨野が招待してくれたんじゃ」
「いやぁ~ついつい、いつものメンバー呼んじゃった・・・テヘッ!」
「まあ、来ちゃったからどうぞ、上がってください・・・・・」
「はぁ~あったか~い」
「こたつはやっぱりいいもんじゃのう~」
「そうですね~」
「こたつは傘が燃えないからいいですよね~」
「ギニャー・・・・・ニャーのこたつが・・・・ニャーのこたつが・・・占領されてる・・・・・」
—————現在————
「ちょっと茶太郎様~お酒買ってきて~」
「わしはつまみを買ってきてもらうかな!」
「僕もお酒で~」
「僕はおつまみで~」
「ハイハイ、今買ってきます・・・・いってきます・・・・・」
「いってらっしゃーい」
「はぁ~結局僕はコキ使われる運命なのかな~」
「誰か・・・・助けて・・・・・・」
「ん?今、助けてって聞こえた・・・・こっちかな?」
「寒いよ・・・・・」
ガサガサッ
「あっ!いた!大丈夫かい!ああ!もうこんなに冷たくなって!急いで帰って温めてあげなきゃ!」
タッタッタ!ガラガラッ!
「あっ!はや~い!」
「おかえりなさ~い」
「ソラ!ごめんちょっとストーブ貸してくれる?」
「はぁ!?なんでだよ!」
「頼むから!今一大事なんだ!」
「わ、わかったよ」
「どうしたの~というか酒買ってないじゃん~」
「雨野さん!そこの箪笥から何でもいいから毛布を二枚ほどとってもらっていいですか?」
「え~どうしよっかな~お酒買ってきてないしなぁ~」
「雨野さん!それどころじゃない!死ぬか生きるかの瀬戸際なんです!」
「えっ?」
「いいから早く!」
「あ、はい!」
ガタッ!ガサガサッ!
「これでいいかしら?」
「はい!大丈夫だと思います・・・・頑張れ・・・頑張れ・・・・!!」
「うぅ・・・・・温かい・・・・・」
「誰か手が空いてる方!白湯を作ってくれませんか!」
「わかった!わしが作ろう!ちょっと待っておれ!」
———数分後———
「ほれ、白湯ができたぞ!飲めるか?」
「白湯だよ。温かい飲み物だよ」
ペロッ、ペロペロ、ピチャピチャ
「ほぅ・・・・これだけ飲めば暖まるはずです。皆さんお手数をおかけしました」
「いやいや、私も酔ってたからごめんね」
「この子、すねこすりだね」
「そうです。酒屋に行く途中で『誰か、助けて』って聞こえて脇道の草をかきわけたらこの子がいて・・・」
「ふ~む・・・・この子はまだ子供ですな・・・母親が近くにいるはずなんじゃが・・・茶太郎様近くに母親は?」
「それがこの子しかいなくて・・・・」
「ここ・・・・どこ・・・・?」
「ここは、願い事屋っていうお店だよ」
「願い事屋・・・・・?」
「うん。願い事を叶えるお店だよ」
「じゃあ・・・僕ちゃんと辿りつけたんだ・・・・」
「辿りついた?ここ目指してたの?」
「お取込み中悪いんですが、そいつから人間の匂いがプンプンするぜ。きっとそいつ人間界からきたんだと思うぜ。ニャーの鼻は誤魔化せないからな」
「人間?まさか育てられてたとか!?」
「嘘!?」
「確かめる必要がありますね・・・・少しあなたの記憶を覗かせていただきます・・・・」
————すねこすりの記憶———
一匹の痩せたすねこすりが横で眠っている。
「ママ?ママ!」
揺すっても起きない。
「ママ!ママ!」
ママはすでに死んでいた。
ママは食べる物がなく僅かなエサを僕に与えていた。
僕はひとりぼっちだ。
きっと僕もママみたいに死ぬのかな・・・・
ガサガサッ!
「おやまぁ~こんなところに可愛い子がいるなんて・・・私が拾ってあげるからね」
僕はその時ママと離ればなれになるのが嫌だったが生きていくには仕方がないと思っていた。
そして僕はおばあさんに拾われた。
おばあさんは僕にまずエサをくれた。そのあと僕の体を優しく洗ってくれた。
そしていつも寝る時は一緒の布団で寝ていた。
おばあさんはいつもいろんなことを話して聞かせてくれた。
おあばあさんの娘が結婚したけどおばあさんは行けなかったこと。
飼っていたペットが死んでしまったこと。
そのペットが亡くなった日に僕を見つけて運命を感じたこと。
とにかくいろいろなことを話してくれた。
いつしか僕はおばあさんのことが大好きになっていた。
だけどお別れは突然やってくるものだということを僕は忘れていた。
おばあさんはその日の朝、布団から起きることはなかった。
僕はママが死んだ日を思い出してしまった。
そして僕はこれからどうしていいかわからなかった。
その時ふと、声が聞こえた
「願い事屋に行きなさい・・・・そこですべての真実がわかるわ・・・」
その声が消えたと思ったら僕は全く知らない場所にいた。
そこはすごく寒くて前が見えないくらい高い草が生い茂っていて、僕はとにかく歩いた。
だけど一向に視界は開けない。
寒いよ・・・・怖いよ・・・・誰か・・・・助けて・・・・・
————現在————
「なるほど・・・・」
「何かわかったの?茶太郎様?」
「ちょっと、この子を見ててもらえますか?」
「ええ、いいけど?」
「ありがとうございます」
「うぅ・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁん!」
「あ~あ、やっちまったよ・・・・」
「ちょ、ちょっと、ど、どうしたの?どうしよう・・・・じいさん、小豆君、唐傘君、ヘルプ!」
「僕に任せて!すねこすり君、ほらビー玉だよ」
「うぅ・・・・綺麗・・・・」
「綺麗でしょう?これをこうやって遊ぶんだよ」
パチン!コロコロ・・・・
「うわぁ!すごーい!ねぇねぇ!これ転がして!僕取りに行くから!」
「うん!いいよ!じゃあいくよ~それ!」
コロコロ・・・タッタッタ!
「なんか、遊び方違くない?」
「まぁ・・・仕方ないんじゃない・・・すねこすりだから・・・そういえばソラさんがやけに静か・・・」
キラーン!
パシッ!パシッ!コロコロ・・・・パシッ!
「アハハッ!よおし僕も負けないぞ!」
パシッ!コロコロ・・・パシッ!
「あ~ソラも猫又だから反応しちゃうんだ・・・・」
「まっ!似た者同士ですな!ワハハッ!」
「あった!これだ!」
「なにか見つけたの?」
「はい!すねこすり君のお母さまからお手紙をいただいておりまして、息子がきたらこの真実を教えてくださいとこの手紙を預かっておりました」
「へぇ~そうだったんだ・・・すねこすり君~ちょっとおいで~」
「は~い!なあに?」
「これから、あなたのお母さまが僕に託した手紙を読むので聞いていてください」
「ママの・・・手紙・・・・・」
『 私の愛する息子へ
あなたがこの願い事屋に辿りついたということは私はもう死んでしまっていますね。そしておばあさんも。あなたがここに辿りついた時に私とおばあさんは真実を明かそうと話して決めたのです。
きっと、あなたもおばあさんから聞いたことがあると思いますが、『おばあさんのペットが亡くなった』というのを聞いた事があるでしょう?あれは私にエサを分け与えてくれていた犬だったのです。その犬は私がお腹を空かせている子どもがいると言ったら『私のエサをあげるわ』といって半分くれていたのですが、もうあなたはその犬のエサでは栄養が足りなくてどうしようと考えていた私には選択肢が一つしかありませんでした。それは・・・私の残りの命をあなたにあげるというものでした。
もう私の頭の中にはそれしかなく、お世話になった方へ挨拶に行ったときでした。たまたまエサの時間だったらしくおばあさんが外にいて見つかってしまったのです。
そして私はもうしかたなく全てを話し『私は息子をどうしても助けたいのでここで殺されるわけにはいかないのです。どうかお見逃しください』と言ったらおばあさんが
『じゃあ、あなたが亡くなったあと私が拾いに行ってあげる』
と言ったのです。私は目が点になりました。
『私の息子を育ててくれるのですか?』
と聞くと
『ええ』
と曇りのない瞳で私に言ってくれたのです。そして
『だから、あなたはこちらに未練を残してはいけませんよ』
と言ったのです。そのおかげで私は未練なくあなたに命をあげることができました。
そして、私が死んだ日、犬も病気だったらしくたまたま一緒の日に逝くことになり私は寂しくなく未練もなく逝きました。そして私は天からずーっと見守ってきたのですが近々おばあさんがこっちへ来ることになると知ったので天の方にお許しをもらい『願い事屋』へと赴き手紙を託したのです。
そしておばあさんが亡くなったあとに『願い事屋へ行きなさい』という声は私の声です。天の方にお願いしたら『そのくらいならいいでしょう』とお許しをもらい声をかけたのです。
最後になるけど、こんなダメなお母さんでごめんね。でもこれだけは知っていてほしいの・・・・・・・・おばあさんも、お母さんもあなたの事を心から愛しているよってことを。
これからの人生何か困った事があったら『願い事屋』に相談にいきなさい。愛してるよ。
お母さんより』
「ママ・・・・うぅ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「・・・・いい話ね・・・グスッ」
「いい話じゃ!」
「泣けるね・・・・」
「いいお母さんだな・・・・」
「すねこすり君、この手紙はあなたに渡します。大事にしてあげてくださいね」
「はい・・・・大事にします・・・・・グスン・・・」
「そうだ!すねこすり君!家がないなら私の家においでよ!私一人でさみしかったんだぁ~」
「う~ん・・・でも雨野さん住居は人間界じゃありませんでしたっけ?」
「そうね~すねこすり君が私の家に来てくれるならこっちに住居移動してもいいわよ!」
「仕事はどうするんです?」
「こっちから通うわ!」
「なら・・・問題はなさそうですね・・・・酒以外は・・・・」
「何か一言多く言わなかった?」
「いえいえ!なにも言ってませんよ!どうですか、すねこすり君?」
「うん!お姉さんのとこに行く!そうすればいつでもみんなに会えるんでしょ?」
「もちろん!いつでもみなさんに会えますよ」
「じゃあ、お姉さんよろしくね!」
「ええ!こちらこそよろしくね!」
「あれ?ソラはそういえばどこにいるんですか?」
「そういえばソラさんならさっきビー玉で遊んでましたけど・・・・・」
パシッ!パシッ!コロコロ・・・
パシッ!パシッ!パシッ!
「はぁ~今回も何の役にも立たずに終わりましたね・・・・ソラ!」
「はっ!もしかしてニャーは一人で遊んでいたのか・・・・・?」
「そうですよ・・・・・全く何をしてんだか・・・・・」
ガーン!
「ニャーはただ遊んでいただけだなんて・・・・」
「まぁ~猫っぽいところ見れて私は面白かったけどね!」
「僕もです~ソラさんの猫っぽいところみれたの面白かったです!」
「今度はねこじゃらし買ってくるか!」
「そうですね!今度はねこじゃらしで遊びましょうか!」
「やめろ~ニャーは見世物じゃなーい!!」