九州北部海戦
二〇五十年 人類は二回の世界大戦を経験し、人々の心を欲望、憎しみのみに変えた。二回目の世界大戦である第二次世界大戦、太平洋戦争が終結した後に一部の除く各国が国際連合に加盟し永年の平和を誓った。
しかし、その平和はそう長くは続かなかった。突如、日本国が第二次世界大戦の恨みを晴らすべく、国際連合に反旗を翻した。今日まで、日本国は敗戦国として戦勝国に頭を下げ続けてきた。国民の不満と国際連合の概念が崩れ続け、戦争に突入してもおかしくない状況だった。各国は密かに軍備を拡張し続けてとうとう一国の国民の不満と共に、軍備が解放された。しかし、一国だけでは、到底相手しきれないので高額の賠償金を払わされていた国に目を付けた。大使館が、政府の要求に対する回答を翌日までに出すように伝えた。
二〇五〇年一〇月二日 日本国内では、自衛隊を軍に変換すると同時に国名を大日本帝国と変えた。陸上自衛隊は帝国陸軍、海上自衛隊は帝国海軍となった。国名、自衛隊から軍に組織が変わっても民主主義であることが条件で総理大臣の代わりに天皇が国家の主導権をもつことになった。
翌日、日本国に今後の運命を決める返答が返ってきた。返答は出来る限り援助し、周辺国に対し翌日から攻撃すると返ってきた。日本国は、同盟を締結し、同盟の名を日独二国同盟と称した。同盟の相手はかつてヨーロッパで最強強と恐れられたドイツだ。
日本国は大使を通して宣戦布告し、中華人民共和国の上海を攻撃すべく奇襲艦隊を編成した。その数三二隻の艦隊だ。
航空母艦一二隻 艦載機二一〇〇機
巡洋艦艇一五隻
駆逐艦十五隻
潜水艦隊五隻
作戦の艦隊として含まれていないが、輸送船艦隊二二〇隻が二〇四〇年八月一日に出撃したのである。
ドイツはイギリスを攻撃すべく、艦隊を編成し、宣戦布告した。ドイツも同日の宣戦布告及び艦隊編成だったため国連加盟国は慌てた。各国は国際連合が圧力をかけ続けた結果として離脱し、隣国に宣戦布告した。
八月一日、帝国海軍は奇襲艦隊を出撃させた。帝国海軍は、旗艦である航空母艦赤城を中心に上空から見ると単横陣の艦列が縦に二列になって並んでいる複縦陣で、空襲を受けても対空火器によって被害が抑えられる陣形だが、電探に引っかかる。しかし、それは従来の艦で帝国海軍の艦はステルス艦となっている。同日、中華人民共和国の大日本帝国九州を攻撃に向かっていた。帝国海軍の艦は一応、対水上電探を装備していたが敵艦がステレス艦の可能性があるため正午に二式艦偵を正規空母飛竜から発艦させた。帝国海軍の航空母艦隊の司令官は今か今かと空母発見の電信を待っていた。敵艦隊の発見の電信が入ると共に艦載機が発艦できるように飛行甲板に整列、魚雷、爆弾を装着して待機している。一五時三二分に索敵機から衝撃的なことが入電した。
『敵艦隊多数見ゆ。我が艦隊から南南東一二〇浬付近。空母二〇隻、他艦一一隻。八艦隊が我が艦隊に向かって急速に接近中。』
司令官が迎撃命令を下した。
「全機発艦開始」
第一波攻撃隊
第一航空戦隊
旗艦空母加賀 零戦改三機 流星改五四機 彗星改四三機
空母 赤城 零戦改十五機 流星改四五機 彗星改四〇機
第二航空戦隊
旗艦空母飛竜 零戦改五機 流星改三〇機 彗星改六五機
空母蒼龍 零戦改一〇機 流星改四四機 彗星改四五機
第三航空戦隊
旗艦 軽空母瑞鳳 零戦改一三機 流星改二二機
軽空母鳳翔零戦改二二機
第四航空戦隊
旗艦 軽空母飛鷹 流星改 三三機 彗星五機
軽空母隼鷹
第五航空戦隊
旗艦 空母翔鶴 零戦改二二機 流星改一五機 彗星改二二機
空母瑞鶴 零戦改一一機 流星改三五機 彗星改 五四機
第六航空戦隊
旗艦軽空母 竜驤 零戦改二二機
攻撃機が飛行甲板をから滑りだし大海原のどこかに存在する敵艦隊を叩きに出た。
敵艦隊は、帝国海軍連合艦隊最前列イージス艦群の前方二五五浬先で迎撃態勢を取っていた。
そして、全機発艦終了から二〇分たったころ、攻撃隊が空襲を開始する時刻だ。
攻撃隊の誰もが笑みを浮かべる状況が目の前に広がっていた。敵空母の飛行甲板では飛行機に魚雷や爆弾の装直作業を行っていた。撃沈が無理でも機銃掃射をして一機破壊すれば他機が誘爆して飛行甲板は火の海となるだろう。
敵空母は近接新刊付きの対空砲を容赦なくぶっ放してくる。こちらも負けずに敵艦めがけて一直線に突っ込んでいく。とうとう三機の爆撃機が火を噴いて落ちていった。雷撃機隊は二〇の群れに分かれた。最も近い空母を狙う雷撃隊は江草隊長機を先頭にして矢のように飛んでいく。雷撃隊が高度を下げて海面ぎりぎりで雷撃敢行態勢に入った。あと、百メートルもすれば魚雷の射程に入る。隊長の江草はあと少しだとはやる気持ちを抑えながら操縦棒を握っていた。江草の祖父は太平洋戦争で第二航空戦隊の蒼龍で雷撃隊に入っていた。江草の雷撃は古今東西変わりなく、申し分のない精度だった。今の江草は祖父と同じ感覚でいた。少しでも集中力が切れると海面に激突する。魚雷の射程に入った。次々と魚雷を投下して魚雷は敵艦に向かって疾走していく。魚雷を投下した直後に一機が海面に突っ込んだ。魚雷は全弾命中し、飛行甲板では、
衝撃で誤作動を起こした機が勝手に動き出し、他機と衝突した。衝突された機はこともあろうことに魚雷を装着した機だった。衝突された瞬間に爆発を起こし、他機も次々と爆発している。江草が機首を立て直し戦場から離脱するために上空に出た時には敵空母からは黒い煙が天まで届くくらい立ち上り、飛行甲板は火の海と化していた。整備員は懸命に消化していたが、焼け石に水だった。整備員は火に飲み込まれたりしていたが艦長の無茶な命令でまだ火が回っていない機までの道を作っていた。乗員が火の海に飛びこみ、愛機にたどり着いた時には対空砲は完全に沈黙していて、帝国海軍の機が空を覆っている。火の海の中では仲間がのたうち回っている。その乗員は初めて戦争の真実を悟った。仲間を殺した日本に一矢報いるために飛び立とうとした時に帝国海軍の戦闘機が機銃掃射を浴びせた。
また、大爆発し甲板に残っていた健全な機を一機残らず破壊した。
帝国海軍は、空母一隻を大破させたが四機撃墜されていた。死んだ仲間のためにと闘志がさらに燃え上がった。
急降下爆撃隊は健全な敵空母上空三〇〇〇メートルに来た。そして急降下爆撃隊は一斉に急降下を開始して、高度三〇〇メートルになった瞬間、爆弾を投下した。爆弾を無事に一機も撃墜されることもなく投下できたが機首を立て直して上空から出来るだけ素早く離脱できるかが問題だった。敵空母は爆弾の存在に気付き、舵を執ったが遅かった。次々と投下された爆弾は徹甲弾だったため弾薬庫付で近炸裂して、船底から大量の海水が流れると共に船体が二つに裂けて海中に爆発が断続的に発生し、三分後には完全に海上から姿を消した。流星改のその他の敵空母を空襲の開始命令を出そうとした瞬間皆、目を剥いた。前方に信じられない大きさの敵空母を発見したのだ。巨大空母の対空防火は凄まじくたちまち二〇機が火を噴いて落ちていった。かろうじて撃墜を免れた機も多くが被弾していた。
敵空母は対空ミサイルを発射してきた。爆弾を抱えた爆撃機は見つかると即で撃墜される。そのため、回避の訓練が施され、滑空するのがとても上手い。だから、回避など楽勝だった。発射された対空ミサイルを回避して爆撃隊の機上空に全弾が昇って行った。真下に巨大空母がある。爆撃を開始するべく急降下を開始した。対空砲火によって十機が火を噴いて落ちて行った。急降下爆撃隊第二群から投下された徹甲弾二〇発を避けきれずに五発が至近弾となって巨大な水柱が上がった。敵巨大空母の飛行甲板は海水でびしょ濡れになり、乗員は外れたかと思ったが違った。まだ着弾していないだけで空気を切り裂く悪魔の音が響いている。やっと目に見えて舵が利いたがもう遅く、飛行甲板中央部左舷と後方部中央に命中し格納庫を突き破って一発が船底を突き抜けた。その他の爆弾は飛行甲板下で空襲が終わるのが今か今かと待っていた乗員と機と整備員を吹き飛ばし、艦橋の中には火災が発生しているという敵艦からすれば絶望の状況を作った。艦は大量の海水が侵入して復旧不可になり一〇度傾き立っているのが厳しい程になった。全員退艦の許可を出したが目の前で起きている火災の中をくぐるのは至難の業だ。兵士はどうしても生き残りたく、火の海に飛び込んだが全員火の中でもがいている。
その時、艦が二つに裂けた。もう誰が見ても運命は分かる。五分後には完全に海中に没した。血の海を残して。
帝国海軍第一波攻撃隊戦果報告が各部隊を指揮した隊長によって行われた。江草雷撃機隊長は自信ありげの口調で言った。
「我が、雷撃部隊は三機失いながらも防空巡洋艦四隻、空母1隻大破させました。空母は速力一二ノットに低下させ、四時間以内の復旧は不可能です。」
次の報告では友永爆撃部隊隊長は必ず司令官は驚くだろうと思った。
「我が、爆撃隊は一隻目の空母を攻撃する寸前に前方五〇〇メートルで巨大空母を発見し、二軍に分け、攻撃を敢行し、二隻の空母を撃沈しました。」
流石の司令官も驚いた。しかも戦果でなく、敵が巨大空母を建造したことだ。
前方を航行している。第十一駆逐隊旗艦吹雪の電探が敵攻撃隊を捕捉した。
すぐさま迎撃準備を命じた。五センチ連装砲には小型の三式弾を装填し、その他の対空火器に人員の配置が完了したことを告げる報告が艦内電話を通して聞こえる。指揮官が第一対空戦闘指揮所のある艦橋最上部の全方位が見渡せる場所に行った。
敵機は四浬までに接近した。主砲三式弾を装填した全六艦の主砲が一斉に火を噴いた。
主砲から発射された三式弾をたちまち一四機が落ちていった。主砲と共に全対空火器が火を噴いた。駆逐艦を小型なのでいたるところに置かれている機銃でハリネズミ状態だ。
敵雷撃隊十機が低空に舞い降りた。それを見た兵が機銃を向ける。二機撃墜したものの残りの八機が魚雷を投下した。見張り員が左舷から魚雷接近と報じ、艦長が回避運動の開始を命じた。
「面舵いっぱい。」
副艦長が復唱し、舵が利き始めた。
無論、高速の駆逐艦に雷撃を命中させるのはとても難しいため一本も命中しなかった。急降下爆撃機が回頭しきった時に爆弾が命中して十一駆逐隊二番艦暁が沈没し、三番艦曙が甲板で火災が発生して中破していて速力が二ノット減速した。暁の乗員の救助を曙以外の艦が始め、二〇分後には終了するだろう。全員助かるには空襲が無かったらだ…
帝国海軍空母からは第二次攻撃隊が発艦を開始していて米空母からも艦載機が発艦していた。空母決戦の最大の航空決戦が始まる。