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兄様は平和に夢を見る。  作者: T138
南部興亡篇
372/373

蠢く

1話あたり何文字くらいが読みやすいんだろう……

 フローラの出発から3日が経過した。

 タルキーニ情勢はシモンらカールフェルト軍とタルキーニ反乱軍の最初の衝突が行われ・・・とりあえずの膠着状態に持ち込んだ・・・・・


 八百長である。

 表向き多数の負傷者が出たが死人は出ていない。精査すれば不自然な所が出てくるのであろうが、生憎今のタルキーニ占領軍にそこまでの分析ができる人員も余裕もない。

「我らの利が何もない戦いで無闇な損耗は出来ない。」

 シモンは周囲にそうこぼす。勿論、軍監の体で紛れ込んできたフィンの貴族――タルキーニ占領軍の使いに対するアピールである。フロレンティナ将軍、そしてフィデル王亡き現在、タルキーニ占領軍は実質上トップはローレンスになっていた。

 そのローレンスを欺くための“嫌々戦っています”アピールである。この状況でヤる気満々で遠征に臨めば逆に怪しまれるだろう。

 衝突の初報を聞いてネージュが『両軍死者を出したくないならここに無差別治療の適任がいるじゃない。』などと言い出す。するとマリアも同調しかけたが今はまだ・・そのタイミングではないとアデルとティナに止められた。

 ただ、そのタイミングが来れば『白竜に乗った聖女』は全ての陣営・・・・・に強烈なインパクトを与えられるだろうとティナは何かを含んだ言葉を覗かせた。


 シモンら本隊・・がタルキーニ反乱軍に圧力を掛ける中、背後で蠢いているのはルーベンとフローラらである。ルーベンの密偵らはすでにフィン貴族旗下のカールフェルト人に対して可能な調略を着々と進めていたのである。

 一方でアデル達だが、フローラが去ったものの業務の引継ぎは問題なく行われ、店の運営は滞りなく行われている。

 ロランドらから追加で入った注文も、主に着火・発光の携帯魔具を始めとし概ね順調に調達が出来ている状況だ。

 ところが4日目、少々予想外のところから“話”が入る。

 ネージュ、アンナと共にドルケンに武具の調達に向かった際、モニカが直接その“話”を打診してきたのである。

 少々深刻そうな表情のモニカの様子にアデルとネージュはすぐに対皇国、ドルケン南東部で何かしらの動きがあったのだろうと察した。

 そしてそれは実際にその通りだった。モニカが言うには例のケンタウロスリーダー、ルイーセから打診があったというのだ。

 モニカが言うにはルイーセが『とある人物の救出・保護が成されれば『対邪神』に於いて共闘、協力をする。その人物は対邪神の鍵となり得る者だ』と言うものである。

「対邪神の鍵となりる人物……ね。」

 言葉の端に何かを感じたアデルが少し皮肉気に言う。ルイーセや第1皇女アンシェラの話を鵜呑みにした結果が今のエストリアである。

「どんな人物か聞いてるんですか?」

「翼人の少年であると言う。何でもフェルベルネ王国の生き残りである可能性が高いとのことだが……」

「フェルベルネ王国?」

 モニカの言葉にアデルが首を傾げると、すぐにアンナが反応した。

「ティナさんが言っていた……フランベル公国の元?源流である国の名前だったかと。」

「あー……確かそんな感じだったか……生き残り?400年以上前の?翼人が人間よりは長命だとは聞いているけど精々150~200だったよな?」

 アデルの言葉にアンナは頷いた。

「だいたいそれくらいとは聞いています。私はまだその寿命を迎えた翼人を見たことがないので本当かはわかりませんが……」

 アンナがやや表情を曇らせながら答えた。

「……カミラのあっち・・・版て可能性は?」

 アデルとアンナが押し黙ったところでネージュがそう言い放つ。

「あー、有り得るな。フェルベルネ王国は邪神――吸血鬼?カミラの本体にやられたって話だし、その辺りの可能性はなくはないが……」

 アデルは少し違和感を覚えつつもネージュにそう返し、モニカの様子を窺う。

 するとアデルと視線が合ったモニカも小さく頷き言う。

「そんな旨を示唆する様な言葉もあった。そして――ルイーセはこの救出作戦について、お前たち、特にティナとか言ったか?今日はいない様だが――に頼みたいと言っていた。」

「ティナに?」

 モニカの言葉にアデルは首を傾げる。確かに当時のフランベル――今のグルド山北東の情勢に詳しいのはティナである。ロゼールの下、カミラと過ごした時間が長かったと言うのもあるのだろうが、その辺りの知識量はアデルやモニカ、恐らくはルイーセの比ではないのだろう。アデルはロゼールがティナを押し付けてきた本来の意味を少し理解した気になった。決して、マリアンヌに対する当てつけだけ・・ではなかったのだろう、と。

「その話、ドルケン的にはどうなんですか?」

「可能なら受けてもらいたい。あのケンタウロスの第2皇女に対する憎悪は本物だろう。それに加えて『対邪神』というからには、やや拡大解釈気味ではあるが『対第1皇子派』と捉えることができる。状況からして第2皇子派の先はそう長くないだろうが、その先に生きてくる可能性が十分にある。また、『対邪神の鍵になり得る』という人物を特に第1皇子派に奪われるのは危険だと考えている。」

「なるほど。そう言われると確かに……話くらいは聞いておきたいところですね。状況的には――ブリーズ情勢よりも優先しておきたい感じですし。2日後くらいに繋ぎが取れるでしょうか?」

 アデルがそう答えるとモニカは少し思案し頷く。

「ああ。2日後の夕方、例の村で集合という事で話を進めたい。」

「わかりました。」

 モニカの言葉にアデルは頷いた。


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