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兄様は平和に夢を見る。  作者: T138
南部興亡篇
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商会の思惑

 夕方過ぎにアデル達は天馬の湖から店へと戻って来る。

 その頃にはその日の店の業務は滞りなく終了しており、売り上げと配達終了の確認を行う。

 やはり売り上げの主力となっているのは小型の魔具が殆どだ。着火や灯明、時間で自動補充される水筒などの日用品を中心に、冷蔵庫、コンロと言った大型で高価なものも数日に1~2台は売れる。

 また、最近店頭に並び始めた、耐久強化――【防護】の魔法を付与――された刃物や武具も徐々に売り上げを伸ばしている。この辺りはポルトではなく、カンセロやレサス、イスタやエストリア等、対他国や魔物・魔獣を相手にする機会がありそうな売り上げはさらに伸びるだろう。残念ながら冒険者等、個人で営む荒事屋が多くないポルトでは、割安で魔法付与が施されているとは言え武具販売はやや伸び悩んでいる。武具を使うのは専ら治安維持の衛兵や兵士であり、彼らの装備品は必要最低限の物は全て町、コローナから支給されているので、「長持ちする」という理由でわざわざ若干高めの装備を買おうと言う者は少ない。

 そう考えればオズードやエズルードで支店を出すことができれば、間違いなく売り上げは飛躍的に伸びるだろう。だがその場はまだ地権どころか安全すらまだ保証されていない場所だ。可能性はあっても実現性は怪しい所である。


 明日から2~3日、アデルはドルケンを中心に武具の買い付けに奔走することになるだろう。そんなことを考えているとトルナッドへ向かっていたオルタが帰って来る。

 あと数回となるであろう、今の面々での夕食を取り終えるとアデルはまずオルタから話を聞く。

 まず|レインフォールとしては(・・・・・・・・・・・)正規に買い取ったグラシア以外、カールフェルト王家に関する話は一切知らないとのことであった。『で、実際の所は?』と聞くとルーベンが何かを用意・画策しているであろうことは察していたようだが、フローラとローレンスの出自に付いては流石に予想外だったそうだ。本音を言えばグラシアに接触してくるだろうと踏んでいたのだが、フロレンティナがグラシアの“処分”を側近にすら伝えていなかったのは予想外だったとのことである。レイラとしてはグラシアに影響力を持つことでその後の大陸南部で有利なポジションを得るつもりだったのかもしれない。

 アデルとしてはもう少し詳しい話を聞いておきたいところだったが、この場で話すことを避けたかったかオルタはやや強引に話を切り替える。

「で、ヴェントブルーノのタルキーニ――エズルードだな。への進出は望むところである様だ。実質グラン・・・・・であるポルトよりは相手にしやすい様だしな。」

「実質グラン?実質コローナじゃなくてか?」

 オルタの言葉にふと疑問を持ったアデルがそう尋ねる。

「事実上の飛び地・・・だからね。それこそレオナールがカンセロを抑えられるなら問題ないのかもしれんが……|ファントーニがそう言う動きを見せている(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)。カンセロからトルリアーニ派を追い落としたのが裏目になりそうだ。ミリアムだっけ?レオナールがえらく気に入っているらしいし、グラン国に対して強硬手段には出ないだろうと踏んでいるらしいな。」

 オルタはそこでチラリとマリアを見て声のトーンとボリュームを下げる。すると察したマリアが片づけを手伝うと立ち上がると、フローラとグラシアも同様に席を立つ。

最悪・・正妃派を焚き付けることも必要になるかもしれないってさ。」

 オルタはアデルにしか聞こえない声量でそう言う。正妃派と言うのは恐らくはレオナールの正妃であるジャネットのことであろう。最近はミリアムを寵愛するあまり、正妃やその実家筋が不満やら危機感やらを持ちつつあるというのは水面下で耳にする。ただアデルの耳に入るくらいなら、レオナール本人がそう言う話を知らない、又は気にしないということはないだろう。アデルにはその噂が“釣り針”である気がした。

 アデルがそう言うとオルタも頷く。『だから|取りうる手段の中で最悪・・・・・・・・・・・って話さ。レイラもそれは認識している。その釣り針の狙いがレインフォールなのかファントーニなのか、或いはコローナの中にあるのかはわかりかねる。』だそうだと。

 アデルは直感的にその狙いはファントーニだろうと感じた。根回し(半強制)が得意なレオナールが博打染みたことをするとは思えない。そう思うと同時にマリアンヌをアデルの下に寄越した意図を勘繰り始めてしまう。ロゼールは兄の打つ手に反感を持ちながらも国の為に犠牲になった。マリアンヌはどうなのだろう?と。基本的にマリアンヌが一人になる時間はほとんどなく、マリアンヌがどこかと連絡を取っているような気配はない。ただ相手はレオナールだ。マリアの無意識に何かを仕掛けることも出来るのではないかと心配になる。

 アデルの思考がどこかへ飛んでいることを察したかオルタはすぐにまた次の話題に移る。

「邪神に関してはやっぱり話を聞いたことあるが具体的にはほとんど何も知らないそうだ。『ただ手を打つべき相手なら打てる手を考える。動きや情報があれば逐一知らせろ。』だそうだ。」

 テリア教の影響は受けていなさそうなレイラであるが、自分の生まれよりも前、しかも相当の情報統制の向こうの存在の話であるためか、詳しい話は分からないらしい。口ぶりからすると、大陸南岸に影響が出るようなら何かしらの対策は考えるとのことだろう。

「で、旧ブリーズだが『あるべき姿に戻る・・』のが希望らしい。恐らくはちゃんとした後継が旧来の形と勢力で……ってのが大筋だとな。それにはコローナの影響力が拡大しないことも含まれていて、ローレンスやサラディーノではそうするのは無理だろうと見ていた様だ。理想は『フィンから切り離されたフロレンティナがブリーズ3国を抑えることで、ルーベンはその系統として期待していた。』とさ。恐らくはグラシアを売りつけて裏で影響力を持つつもりだった様だが……」

「フローラの正体で少し話が変わってきたってところか。」

「だろうね。ただルーベンの”カールフェルト王家への忠節”っぷりはそれなりに評価したみたいだ。とはいえ……本命はやっぱりグラシアだったみたいだなぁ。」

「フローラは完全に想定外か。難しい所だな。」

「いろいろとね……」

 オルタはそう言うと肩をすくめる。

 オルタはもう一つ、レイラからの“指令”を受けたのだが、そちらに関しては一切口にすることはなかった。


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