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兄様は平和に夢を見る。  作者: T138
南部興亡篇
346/373

迫る闇

評価・ブックマーク有難うございます。

 時は少し溯る。


 アデル達ヴェントブルーノの者達が南海へと向けてトルナッドを出港した頃、ベルンシュタットでは第1王子と隣国コローナの第3王女との結婚式が盛大に執り行われた。


 ここ1~2年、北方で連邦の再侵略により国土を削られ、南では一度蹴散らしたはずの蛮族たちがまた息を吹き返し、また経済力向上の為に外洋進出を企図した大型船団による航路の開拓も失敗に終わったりと散々な状態となっていたベルンシュタットの民の多くは国の安定、発展に大きく寄与するとみられる重大な慶事に近年の鬱憤を晴らすかの如くそれは盛大に、熱狂的に祝った。


 今でこそ、連邦と言う共通の主敵がいるが、コローナはベルンシュタットにとって元仮想敵国。その国民たちの歓迎ぶりにロゼールはまずはひとまず緊張から解放されると、その胸を撫で下ろした。

 勿論ここ数年のベルンシュタットの情勢は前もって調べ、そこにレオナールが本当に・・・上手く捻じ込んだという事実も承知している。


 しかしすぐに次なる心配事がロゼールを見舞う。

 まずはベルンシュタット国王、アーベル・トーマス・バーンシュタインが、その重要な式典の前に全く姿を見せなかったことだ。

 先の新年祭には、第1王子をコローナに派遣した手前と、世情が低迷する中、病気を押して式典に参加しその存在を示したものの、結局その無理が祟ったとの事であったが、式典の最後の方に姿を見せ、祝いを述べる国王にロゼールは違和を覚えた。

 そしてその後、改めて国王に拝謁したロゼールはその違和を確たる異常と断じるに至る。

 国王はもはや1人で立って歩くのも辛いらしく、民衆の目に触れない時はずっと両脇を侍従に支えられて歩行し、玉座に座ると静かに、ゆっくりと呼吸を整えてから、そして十二分に威厳のある声色でロゼールの結婚を祝い、両国間の発展と共栄を祈り、最後に小さく窮状とも言えるベルンシュタットへの輿入れに感謝を示した。そしてその後に表情を歪め大きく咳き込むと、侍従が慌てて何かの入った筒を持ってきて国王に吸わせた。

 程なくして咳が収まり、呼吸が落ち着くと国王は謁見の終了を宣言し玉座の間を退出していく。

 弱々しい歩みで退出する国王を家臣たちはほぼ表情を変えずに見送る。既に彼らの興味は国王から次へと移っているのだろう。そんな雰囲気を感じた。

 そして、謁見の後に“家族”だけの場になると今度は第3王子と第2王女に支えられるようにされていた国王だが、ロゼールにはその国王から“病気”の気配が全く感じ取れなかったのである。

 聞けば一昨年から体調を崩し、昨年の度重なる国の失態についに体が限界を迎えたとの話であったが、ロゼールはすぐに違うと感じた。

(あれは毒?違う。何かしら呼吸器系に損傷を与え蝕んでいるみたい……)

 血色自体は悪くない。ただ肺か気管か、どこかその辺りが激しく痛むような様子であり、またロゼールなりの“魔力視”によると、肺周辺の魔素が極端に弱っていた。

 さりげなく尋ねてみれば、第1王子、第2王子、第2王女、第3王女らがそれぞれ・・・・に国内でも高名な医者や神官らを、招き、治療や治癒に手を尽くしたが、一向に良くなる気配がないと言う。医者は呼吸器系の疾患、神官は回復魔法も解毒魔法も、あらゆる状態異常を解くと言われる【快癒】の魔法を使ったものの効果が表れず、肉体の限界が近いという判断に至っているそうだ。国王はまだ40代後半、大国の王が老衰と言うには余りにも早い。

 ロゼールは改めて国王を見舞い、自らがレア教の高位神官だと名乗り出、国王や伴侶である第1王子の許可を得ると、制御できる魔力の全てを祈りに乗せて国王に【浄化】と【快癒】を行使する。

 勿論、ここまで体力と生命力を削られた国王がいきなり立ち上がる事はない。国王はそのロゼールの配慮に、そしてこの不安定・・・な情勢のベルンシュタット王国、王宮に嫁入りしてくれたことに改めて強い感謝の意を伝えると、またそれぞれの手を借りてその場を辞した。


 結婚関連の行事・式典が一通り終わると、ロゼールに伴をしていたコローナの一団がコローナへと帰っていく。

 以前から輿入れの条件として聞いていたが、ロゼールの元に残されたのは出自と実力が確認できている侍女3人のみとなった。

 初めての土地、それも四六時中気の休まる時間のない、まだ異国と言える王宮で、碌に話し相手にもならない侍女3人と4人きり。勿論、夫である第1王子エアハルトは時間を見つけては気遣いを見せてくれるが、まだまだ双方打ち解けていないのが実情だ。


 自分の役割は両国の関係発展――ぶっちゃけてしまえば、ベルンの持つ軍事力の矛先が東へと向かない様にすること――ロゼールはそう割り切ってベルンシュタットへ乗り込んできた。良く言えばおおらかで寛容、平たく言えば、主体性がなく異を唱えられない、本来来る筈だった姉。彼女にはできないことをやって見せなければならない。その決意と僅かな恨み節を抱えて遠路罷り越したのである。

 薄情な兄は随分とベルンの軍事力を警戒していたが、北と南での体たらくを見る限りそれほどの脅威たりえるとは思えない。しかしあの兄が連邦よりも、フィンよりも警戒している相手がベルンだ。油断はできない。

 ロゼールは1人、自室に当てられた部屋で改めてそう気を入れ直す。


 しかしこれが、ロゼール自身を闇へと塗りつぶす最初の1歩となるとは、流石の才姫をしても知る由はなかったのである。


テキストエディタ試行錯誤中。

少し前まで愛用していたエディタが突然カーソル消失症になって使いづらくなるなど。

数年更新されてないエディタなのに……窓10がまた何かやったな……


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