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兄様は平和に夢を見る。  作者: T138
邂逅編
34/373

《聖騎士》

貴族様が現れた!

 ディアスたちと過ごした非常に有意義な1ヶ月を終え、ブラーバ亭に戻ってきたアデル達をブラバドは今迄通りに迎えてくれた。

 ディアスがブラバド達に感謝していた旨を伝えると、『そうか……色々良い方に向かいそうだな。良かった。』と満足げに頷いた。

 完了証明書と評価票を渡すと約束通り、風呂場つきの2人部屋を貸してくれることになり、早速部屋を移る。

 ネージュがまっ先に確認したのはその浴槽だ。サイズは以前、グランディアでカイナン商事にあてがわれた部屋のものと同じくらいだ。

 ここ数日心配したが、しっかりと蛇口――水道もある。流石王都だ。

「それじゃあ、早速……」

 ネージュが早速蛇口を捻り、程よく水を貯めたところで。

「……あれ?」

 怪訝な顔で部屋にいたアデルの所に戻ってくる。

「蛇口はあったけど、お湯にするやつがない。」

「ん?発熱の魔具か?ちょっと聞いてこよう。」

 アデルがブラバドに尋ねると答えは……

「ああ、発熱の魔具な。あれは貴重品だから……2時間5ゴルトで好評貸出中だぞ?」

「有料!?」

「そりゃそうだ。ほぼ恒久的に使える魔具なんて貴重も貴重。うちの店でもそんなに数は用意できない代物だ。」

「……ソウデスカ。」

 5ゴルト――だいたい高級なお茶2~3杯分といった額だ。まあ、今の手持ちなら……と、アデルはブラバドに5ゴルト支払った。




 翌日、ディアスからもらった防具と手紙を背負い袋に入れアデル達はアモール防具店へと向かった。

 ブラバドに尋ねたらすぐに場所を教えてもらえた。やはり有名なのだろう。

 アモール防具店は縦横それぞれ20メートルといったくらいか。店内は実に色々な人が訪れていた。冒険者は勿論、上級の武具を身に付けた兵士や、騎士の姿まで見える。アデルは少々委縮気味に、ディアスの手紙を届けに来たと店員に告げ手紙を渡すと、店員は一度奥に入っていく。程なくして戻ってくると奥へと通された。店内にいた客が何人かその姿を目に留めたが、アデルやネージュの装備からして、どこかの小間使いか何かと思ったのか、誰も気にはしなかったようだ。

 通された先にいたのは初老の男性だ。腕の筋肉はディアスよりもありそうなくらいに太く逞しい。

「お前さんらが、ディアスの手紙を持って来たのか?」

「はい。引っ越しを手伝ってきた帰りに。手紙を届ける報酬として初回メンテナンス無料権とか言ってましたけど……お忙しいようですね。」

「物は持ってきているのかね?」

「これです。」

 店主の問いに答えるとアデルは袋からもらった装備を取り出した。

「ん?……ああ、これか。こりゃまた懐かしい。」

 どうやら見覚えがあるようだ。

「お前は店に戻っていろ。」

 店主が取り次いだ店員に言うと、店員は店へと戻っていく。

「どっちも俺の昔の作品だよ。素材は奴らの持込だったけどな。」

「なるほど……魔法の付与も?」

「それは別だな。その辺は魔法ギルドの専門だ。俺はミスリルを加工してこれらを打っただけだ。なんでわざわざ真っ黒く塗ってあるのか……」

「暗視の魔法を付与してあるそうですので、夜間行動に合せたのかと。」

「なるほど。暗視か。ふむ。」 

 店主は兜を軽く叩きながら確認する。

「大したもんだな。こっちは少し面貌の軸がずれてる程度だ。すぐに調整できるが……問題はこっちだな。とりあえず、ちゃんと装備してみてくれるか?話は聞いているし、そもそもこれは俺がマリーネの為に作ったものだ。」

 店主がネージュに胴鎧を装備する様に促す。

「ん。」

 ネージュはその場でパーカーとレザーアーマーを脱ぐと、素肌の上からミスリルの胴鎧を付けようとする。

「待て待て。直接肌につける阿呆がいるか。そうか。そこからか。緩衝材となる下地なしにそれを直接それを付けたら、強打された時に鎧が体にめり込むぞ。と、いうかレザーアーマーの下に服すら着てないのか……」

 店主に呆れられてしまう。

「当初は、服の背中を切り抜いて着せていたのですが……ね。」

「ああ、翼の邪魔になるのか。ふむ……」

 (上半身裸の)ネージュを凝視しながら店主は少し考え込む。

「ちゃんとしたものを食ってれば、これからどんどん成長していくだろうしなぁ。こうしよう。お前たちはうちで嬢ちゃん用の特製の下着を買う。下着と言っても、革製の、鎧の緩衝材になるやつの事だぞ。翼も考慮し、緊急時には翼を広げるのに邪魔にならないような配慮もする。そしたら、俺がそれを付けた状態の嬢ちゃんに合う様にその都度、鎧の調整してやろう。どうだ?」

 その言葉にネージュがアデルを見上げる。この辺の財布事情の判断は総べてアデルが行っているからだ。

「下着とやらはどれくらいかかりそうなんですか?」

「費用か?時間か?費用は1着300ゴルトだな。期間は1着2日もあれば足りる。出来れば柔らかく叩き上げたいから時間はあればある程良いな。」

 300ゴルト。半年前なら大金だが、今なら必要経費と割り切れば悩むまでもない額だ。

「わかりました。今のネージュでそれを装備できるように調整できるのですか?」

「最初の内は鎧の方にもすこし下地を足して作る。勿論柔軟性を最優先に考えるから、それほど動きを妨げる物にはならない筈だ。それでこの辺のパーツを少しいじれば……大丈夫だろう。間引いた部品はお前たちに返すから、しっかり保管しておいて、成長したらまたその部品を使って大きさを戻すという感じだな。もしかしたら将来多少素材が必要になるかもしれんが。」

「なるほど。今お願いしても?」

「問題ないぞ。採寸する時間が欲しくなるけどな。」

「こちらは大丈夫です。ではお願いします。」

「いくつ作る?」

「え?……えーっと、1つじゃまずい感じですかね?」

「革だしなぁ……せめて2~3日に1度は干してほしいかなぁ。」

「なるほど。ではとりあえず今の状態で2着ほど。」

「うむ。早速取り掛かろう。兜の方は……まあ、アフターケアの範疇で収まる程度だな。」

 店主は一度店の方に行って何かの手配をすると戻ってきて、ネージュの体型の採寸を始める。良く見ていると、上半身だけでなく下半身も計測している様で、アデルが尋ねると、下着の方は首から足首まで一体型で、保温と緩衝を考慮した物になると言う話だ。

(そこまでか。それで300ゴルトなら……悪い買い物じゃないな。)

 アデルはそんなことを考えていたが、果たしてどんなものが出来上がるのか。

 店主は1週間過ぎたあたりで持ちに来るようにと告げ、アデル達に退出を促した。

「あのマリーネが死んでしまうとはな……」

 店主の寂し気な呟きはアデル達の耳には届かなかった。




 ブラーバ亭に戻ったアデルはそろそろ次の依頼をと考えて依頼票が貼り出されている掲示板を眺めていると、受付の一人が声を掛けてきた。

「アデルさんに、もしできたらお願いしたい案件があるのですが……」

「どんなのですか?」

「ブラバドさんを呼んできますね。」

 アデルが掲示板を物色し始めたら声を掛ける様に言われていたのだろうか。受付はすぐにブラバドを呼んでくる。

「お、次の依頼を受ける気になったか。」

「ええ。何かありましたか?」

「……ちょっと話だけでも聞いてもらえるか?」

 ブラバドの様子が少々余所余所しい。これは何かあると思っていいだろう。

「話くらいは。聞いたら後もどり出来ないとかじゃないですよね?」

「ああ、それはない。」

「では。」

 アデルが席に座ると、ブラバドも同じテーブルに着席する。

「ちょっと変わった依頼でな……こちらとしても是非受けてもらいたいし、お前らには“悪くない”条件の話ではあるんだが……」

「何か問題がありそうな感じですね?」

「依頼としては『護衛依頼』だが……少し毛色が違う。」

「具体的には?」

「血気盛んな貴族のご令嬢の遺跡探索への同行だ。」

「なんスか、それ?」

「遺跡っていうのは聞いたことあるか?」

「ええ、まあ。」

「どれくらい知っている?」

「旧文明の遺跡ですよね?魔法全盛時代の。」

「良く知ってたな。」

「ちょうど少し前にソフィーさんから説明を受けました。」

「あれ?あいつら遺跡探索なんてやってたのか……。まあ、その通りだ。当たりを引けば、魔法の古文書やら魔法文明期の魔法の武器とかが眠っていると言われるアレだ。」

「俺達に受けさせたい理由は?」

「一つは、その依頼主がうちの得意先の一つの貴族なんだ。」

「なるほど。で?」

「お前たちに受けてもらいたいのは、あちらの条件にお前たちがぴったり合っているからだな。」

「条件とは?」

「移動に馬が使える事、護衛としての実績、斥候としての能力。この3つだな。」

「実績が認められるなら、全部いけますね。一応、俺達がうけるメリットとデメリットは教えてもらえますか?」

「お前たちの利点は何と言っても魔石だ。魔法文明時代の遺跡は魔法によって召喚されたり、生成されたりした魔物が出やすい。それらは大抵が魔石を媒体に召喚、生成されたものだから通常の魔物討伐よりも魔石収集の効率はいいだろう。しかも、物によってはその体内でより大きなものに育っているかもしれん。」

「それは魅力的ですが、キマイラの大群とは勘弁ですよ?で、懸念事項は?」

「二つ。まず一つ目は依頼の条件だ。1週間の“護衛”依頼となっているが、実際は“遺跡探索”の依頼と言えるものだ。が……『遺跡で見つかった旧文明の物品は依頼人のものとする。』ってやつだな。本来は冒険者パーティによって遺跡探索が行われた場合、それらの物品は換金して山分けか、パーティで相談して決めるのが基本だ。もし内部で貴重な物品が見つかった場合、この部分が不利な条件になる。」

「一応話し合いの余地はあると?」

「うむ。だが相手は貴族令嬢だ。しかもその遺跡は彼女の家の領内だという事だ。間違いなく足元を見てくるだろうな……」

「なるほど……では二つ目の懸念は?」

「そのご令嬢だ。テラリアの士官学校アカデミーを今年、学年首席で卒業した強者らしいが……実戦経験はない。共の者もそれなりに優秀なようだが……実際に会ってみたが、腕は確かに良い。少し性格がな……」

「テラリアのアカデミー首席……?《聖騎士》ですか?」

「そうなる。」

「想像は出来ました……他に候補がいればお譲りしたいところですが……」

 聖騎士、能力として説明するなら、“ある程度の神聖魔法が扱える上級騎士”である。クラスとしても上級職の《騎士》のさらに上、最上級と言っても過言ではない。しかし、なるには当然騎士以上に条件が難しい。というよりもこれに関しては頑張れば誰でもなれると云うものではない。《聖騎士》の称号(技能)が認められるのは、騎士としての実力と、神聖魔法を扱える能力、それに加えて、テラリア皇国のアカデミーを優秀な成績で卒業する必要が出てくる。そしてそのテラリアのアカデミーに入学する時点で、それなりの力を持つ貴族の子女である事が条件だ。アデルではスタートラインにすら立つことが許されない。

 そこで首席卒業となれば、留学とはいえ、テラリア帝都内においてもエリート中のエリートだ。思想も間違いなく“あちら”に染まっている事は想像に難くない。

「他が……なかなか見つからないんだ。」

「デショウネ。」

「会ってみてくれるか?」

「会ってみて条件次第でしょうか?もしかしたらあちらからオコトワリされるかもしれませんし。」

「そうか。では今日の夕方、もう一度ここへ来てくれ。その時はネージュも一緒にな。」

「わかりました。」



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 夕方になってネージュを伴って食堂に降りる。

 そこにはブラバドと同じテーブルに座る4人の女性の姿見えた。

「お待たせしました?」

「いや、大丈夫だ。夕方としか伝えてなかったしな。」

「こちらがその冒険者ですか?」

 ブラバドと向かい合って座っていた女性がブラバドに声を掛けた。

 士官学校を今年卒業したとなると……18~19歳、少し年上となる筈だ。

「レベルは兄が《戦士:22》、妹が《暗殺者:20》、それぞれ《騎手》を10レベル以上で所持している。」

「《暗殺者》?」

「戦士と斥候のハイブリッドの上級クラスだ。珍しいと言えば珍しいな。」

「……まずはお掛け下さい。」

 女性に促され、同じテーブルの席に着く。

「条件次第で受けて下さるそうね?条件は何かしら?」

「……依頼票の内容を見て、こちらが提示したい条件ですが……2つあります。」

「伺いましょう。」

「1つ目は、実際に遺跡とやらに入ってみて魔物と交戦したとします。もしその時点で自分たちの手には負えないと判断できる場合は、迷わず撤退すること。2つ目は探索中に得られた魔石はこちらに譲って頂き、それ以外の物品は例え古文書だろうと、古の武具だろうとこちらは何も言わずにお譲りします。この2つですね。」

「ほう……」

 そこで、ご令嬢は目を細め吟味する。周囲の者と相談するかと思ったがその様子はない。決定権はすべて彼女が握っているのだろう。

「2つめは問題ありません。私が望むのはその遺跡にあるとされる武器ですから。」

「武器ですか?」

「ええ。今回探索に向かうのは旧文明時代の軍事拠点だったらしいのです。と、なれば武器の一つや二つ眠っているのではないかと。」

「なるほど……」

「1つ目の方が良く判らないわね。撤退と言うのは?」

「え?そっち?」

 アデルが思わず声を出してしまうと、ご令嬢は眉間にしわを寄せる。

「魔物の強さがすでにわかっているなら問題ないですが、万一どうしようもない格上が出た場合は一旦諦めてすぐに撤退します。その後その魔物に見合うレベルの冒険者を改めて別の条件等で雇った方が現実的かと思いますが?」

「その場合は依頼未達ということで宜しいのかしら?」

「生きて戻るだけで充分な気もしますが……もしかして状況を鑑みずに無闇に突っ込むつもりですか?それならば、俺達には無理です。一度内部の魔物を調査し、もっと高レベルの冒険者なり私兵なりを雇ってください。」

「そこは心配ありませんわ。斥候の話によると中にいたのは妖魔とせいぜいサーベルタイガー、あとは奥へ行くと罠もあるようですが。」

「えーと……ご実家の領地内ですよね?で、その様子でしたらすでに探索が終わっているとかではないのですか?」

「本格的な探索はまだの様です。一応兵を何回か派遣したようですが、芳しい成果は上がってないとの事。サーベルタイガーに苦戦するようで。それに遺跡は野戦と違い、兵士や騎士では十全に力を出せません。ですので冒険者を雇うことにしたのよ?」

「なるほど。納得です。でもそれなら探索を冒険者に任せて、護衛とする必要はないような?」

「…………」

 そこで再度眉間に皺を寄せる。せっかくパッと見綺麗な顔をしているのに、その年からそんな顔ばかりしてると数年で酷い人相になるぞ?などと思った事は当然口には出さない。

「今回の目的は遺跡の踏破ではありません。私が扱える魔法の武器を見つけさえすればそれでいいのです。それが見つかった時点で魔石はすべてお譲りしましょう。それを見つけられずに撤退した場合は、魔石は人数で山分け、護衛の依頼は未達ということで。」

(人数で山分けか。つまりは4対2、こちらの取り分は実質3分の1になる上に護衛依頼の報酬はなしと来たか……逆に何らかの武器が見つかれば武器を提供する代わりに魔石は総取り。難しいところだな。それと……)

「えーっと、護衛という事はあなた達の護衛につけという事ですよね?失礼かもしれませんが魔物との交戦があった場合はどの様に?」

「そこは大丈夫だろう。ローザ殿が《聖騎士:11》、ミシェル殿が《騎士:14》、ティルザ殿は斥候専門だがレベルは18、カタリナ殿が《神官:12》だ。前衛二人は戦力として十分だろう。」

「ローザさんたちも戦うと……」

(護衛任務ってなんだっけ?)

 アデルは少し考えるが、そういう名目にした方が彼女たちに都合がいいのだろう。

 彼女はローザと言うのか。そのローザの代わりにブラバドが彼女たちのレベルを教えてくれた。《聖騎士:11》と《騎士:14》、先日会ったラウル達と比べるとだいぶ下がるが大丈夫か?などと考えたが、ブラバドがいけると言うならそれなりの戦闘能力はあるのだろう。まあ、大して役に立たないようなら、それを理由に危険と理解させ撤退なりさせればいい。

「ブラバドさん的にはどうなんですか?この条件。」

 ブラバドにアデルが尋ねるとブラバドは少し思案してから言う。

「概ね妥当なところじゃないかね?幾分冒険者に不利な部分があるから……そうだな。護衛依頼の報酬の3分の1は最低保証として事前に渡す。或いは、懸案らしいサーベルタイガーを倒した時点である程度の報酬を用意する。この辺りでどうだろうか?冒険者には仕事にかかる拘束期間と言う考え方があるのでね。何の保証もなしに、1週間付き合えと言われてもそれでは生活が成り立たない。その条件で受ける冒険者はまずいないだろうな。そうなるとさらにお待たせせざるを得なくなってしまうが?」

「……わかりました。ではその条件で行きましょう。そちらは?」

「ちなみに、サーベルタイガーって俺らでいける相手なんですか?」

「危険レベルは20だな。つがいとなると、22~23と言ったところだが。」

「適正レベルと言えば適正レベルか……」

「そうですね。では成功報酬として3000ゴルト、1000ゴルトは前渡しで構いません。サーベルタイガーの討伐については1体に付き200ゴルト出しましょう。」

「妥当なところだな。お前らの方は?」

 ブラバドが言う。

「そうですね。問題ないと思います。条件に馬が扱えるとあったのですがそれは?」

「町から少々距離が有るため移動は馬で行います。探索中の馬の心配は不要です。それは現地に行けばわかるでしょう。」

「ソウデスカ……」

「では明日の朝には出発します。準備は今夜の内に済ませておいてください。」

「急ですね?」

「あなた方にとってはそうかもしれませんが、こちらはすでに2週間待たされているのですよ?」

「申し訳ない……」

 ローザがブラバドを睨みつけると、ブラバドが恐縮する。2週間誰も受けようとしてくれなかったのか……

「それに、今のコローナ国境付近の状況は御存じだと聞いていますが?」

「なるほど。判りました。」

 古代武器を引っ提げて戦場に行きたいのか……随分と意識が高い貴族令嬢のようだが……

「では、改めまして。私はローザ・フォルジェです。あなたは?」

「俺はアデル。妹はネージュです。家名はありませんが、宜しく。」

「こちらこそ。」

 ローザは露骨な作り笑いを見せるが、この笑みを見た瞬間、アデルにはメロとは別の漠然とした嫌な感じを覚えたのである。

(テラリアの地方貴族の娘そっくりだ……)

 つまりは、そういうことなのだろう。


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