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兄様は平和に夢を見る。  作者: T138
邂逅編
32/373

安息

直近のあらすじ

正月休み終了!店からの強制依頼発令!→先輩たちの引っ越しを手伝うんDA!→

先輩と思っていたら大先輩だった。(竜人同伴的な意味で)→引っ越し荷物の積み込み完了!

→アデルはエンチャントウェポンを覚えた!  ←イマココ

 ソフィーの新居は王都を超え、エストリアから2日ほど南に行った辺境伯領内の地方都市だった。

 規模はエストリアと比べると一回り小さいといった感じだろうか。さらに3日ほど東に行こうとするなら、魔の森とグランの丁度中間となる小国、ドルケン王国に突き当たる位置である。

 ドルケン王国はグラン王国よりも一回り小さい国で、コローナと比べると面積、人口、経済規模など3ランクくらいは落ちるだろうか?魔の森を南に抜けた山岳地帯を支配している国である。

 王族を始め王都には“人間ヒューマン”が多数いるが、山岳部など国民全体でみると3~4割が屈強な“火人ドワーフ”であり、コローナ、テラリア、グラン、そして魔の森に囲まれた小国ではあるが、周辺国とは基本軍事的中立を貫いている。“人間”至上主義のテラリアとは若干折り合いが悪くどちらかというと西寄り(コローナ・グランと仲が良い)という国である。

 それ故か、新規の開拓にはそれほど熱が入っておらず、のどかな農業地帯といった雰囲気だろうか。馬車で中に入ろうとするとやはり衛兵からの査察が入る。ソフィーがこちらに移住するための引っ越しだというと、簡単な積み荷のチェックの後で歓迎された。しかしそれは王都やアブソリュート市の歓迎とは違い、普通に来訪者を歓迎するといった程度のものである。

「やっぱり東側ならこんなもんだよな。」

 若干ほっとした印象でディアスが漏らす。

「そんなもんなんですか?」

 アデルが尋ねると、

「パーティ名を出せばまた違った反応もあるかもしれんがな。個人個人の名前は別にオンリーワン的なものでもないし、王族や領主でもなきゃ自分が関係しない地域の一般人の顔と名前なんて一致しないだろうよ。」

 言われてみればその通りである。アデルに関しては王族や領主の顔と名前も一致しないが……テラリアにいた時も、村人と交流のある近隣の村の担当以外の顔なんて、せいぜい地方領主くらいの顔しかわからない。

「冒険者ギルドや魔術師ギルドに顔を出したらそうも言ってられないだろうけどね。当面そのつもりはないし……」

 ソフィーも穏やかに笑いながらそう言う。

 すでに派手な生活さえ望まなければ悠々と余生を送るくらいの貯えがあるとの事だ。名誉を自慢したい訳でもなければ、趣味など好きなことに好きなだけ打ち込めるという。アデルとしてみては羨ましくもあり、理想的でもあると感じた。これがラウル達なら退屈だとか言うのかもしれないが。

 そんなことを思いながらソフィーの新居――と言っても、周りより若干広い中古住宅の様だ。に到着する。少し広めの住宅に妙齢の女性が一人暮らしなのか……アデルは別の心配をしそうになるがそれは流石に野暮というものだろう。

 早速ソフィーの分の荷物を降ろし始める。その前にソフィーは御近所数軒に挨拶をしてくるとアブソリュート市や王都の菓子折りを持って出て行った。四半刻(15分)程度で戻ると言って出て行ったが、話が弾んだのか、半刻(30分)以上経ってようやく戻ってきたソフィーの手には挨拶として持って行った荷物の3倍以上の体積の農作物に入れ替わっていた。

 ソフィーはちょっと困った表情をして帰ってきたが、その光景はアデルにはちょっと懐かしく、嬉しく感じた。先日の鹿狩りの後や、テラリア在住時代に近隣村落へ行った帰りなどはだいたいこんな感じになるよな。という感想だ。そうソフィーに伝えると、『あら?そういうものなのね。』という返事が返ってきた。ただ、1人で処理しきれる量でもないのは確かだ。

 ソフィーが戻るころにはソフィーの荷物はすべて馬車から降ろされており、後はどの部屋へ運ぶかという指示待ちだ。その前に簡単に掃除をしたいらしいので、全員でそれを手伝う。掃除の後、机、本棚等の大きな荷物の配置だけを終えるとすでに暗くなり始めていた。あとの荷物はソフィーひとりでどうとでもなるということで作業終了となった。『時間はいくらでもあるからね。』とのことである。

 作業のお礼にと今夜はソフィーが早速貰った農産物の一部を使いながら料理をしてくれることになった。冒険者時代の夜営でも大好評だった鶏の煮込みスープの豪華版であるらしい。

 大好評スープの豪華版と言うだけあって、それはまさに絶品であった。冬の寒い中での作業の後でまさに生き返るような味と温かさである。それを一口含んだディアスは当時を思い出したのであろう。感慨深いといった表情でそれをゆっくりと食している。

 その後、しばしディアスたちの思い出話に花が咲いた後、ソフィーの魔法で張った水を魔具で温めた風呂を頂けることになった。

「お風呂!行かずにはいられない!」

 とネージュがアデルの腕を引っ張り風呂場へと向かう。先日のグランでの一件以来すっかりお気に入りのようである。ディアスとソフィーは面食らったようにそれを見送るのだった。



「借り物の風呂は湯船に浸かる前に体を洗ってからだってのが礼儀だ。」

 とのアデルの言葉にネージュは若干不満げな表情を浮かべつつも、そこは正直に従う。尤もスポンジにお湯と石鹸を付け洗う作業はアデルの仕事となっているのだが。

 アデルが背後からネージュの身体を洗い始めると、ネージュはお姫様気分でリラックスする。今の今までそんな機会はなかったのだろうと、風呂に入れる時はアデルは普段の身体拭きよりも念入りに磨くが、腕やまな板(胸部)、腹などにも小さな刀傷らしきものが残っているのに気づく。背中の翼を見れば一発ではあるが、改めて“珠無し竜人”が生きる上での過酷さに思いが至り、ディアスと恋仲であったマリーネの苦労と最後にやるせなさが感じられてしまう。

 風呂上り後、せっかく温まった後だというのにネージュは半裸でバッサバッサと飛び回っていた。部屋の窓にはカーテンがしてあるがアデルは少々心配になってしまう。やはり旅で翼を畳みっぱなし、特にレザーアーマーの下に押し込んでいるのはかなりのストレスらしい。

 そこでアデルはディアスとソフィーに相談してみた。何か良い装備はないか、あと腕や腹の小さな傷についてなどだ。

 ネージュはディアスに一戦組み手をしてもらったところで落ち着いたか、下着にいつものパーカーだけを羽織った状態で居間で足を伸ばして座っている。

 話を聞いたディアスたちは、最初に腕の傷を確認すると、高位の神官に頼むのが一番確実、あとは薬効のある天然温泉にゆっくり浸かるくらいか?との返事をくれた。温泉と云うものの存在を聞いてネージュは顔を輝かせたが、天然温泉となると、ドルケンかフィン辺りまで行かないとないと聞いてがっかりしていた。高位神官は王都の神殿に行けばいるだろうと教えてくれたが、古傷が治るくらいの魔法の使い手となると、お布施をいくら要求されるだろうか?という別の心配も生じた。大声では言えないが、どこの国、どこの宗派(祭神が国、神殿によって異なる)へ行ってもぼったくりに近い額の治療額を提示される。ネージュは『別に痛むわけでもないし構わない』と言うが、アデルは何とかなるならいずれ何とかしてやりたいと思う。その様子を見てディアスが温かい笑みを浮かべながら、もしかしたら精霊使いでも光が得意な奴なら、即時とはいかないが治せるかもしれないと教えてくれた。光の精霊魔法に、傷をゆっくりと癒す効果のある魔法があるらしい。時間さえかければ失った部位欠損すら治せるという話だ。ちなみに、腕を切り落とされた等の欠損も現物(切り落とされた方の腕そのもの)を冷凍保存するなどして持っていれば神殿でそれこそ高位魔法を掛けてもらえばすぐに繋がるという話も教えてくれた。万が一の時には必ず持ち帰るようにとの事だ。その場合も空間内の時間を止める効果のある“収納の魔具”が大変便利に使えるらしい。

 装備の方に関しては少々難しいだろうとの返事だった。マリーネは出会った頃には既に成人してある程度時間がたっており、ネージュのような敏捷・機動型の戦士ではなく、筋力によるパワー型の戦士であったそうだ。防具に関しては最初から上下個別の金属防具を装備していて、戦績を上げ早い段階で竜人族であることを公表した後は、背中の一部が開いたオーダーメイドのミスリル製の軽金属鎧を使用していたそうだ。実はディアスの持ち物として荷台に乗っているからあとで見せてくれるそうだが……どちらにしろ、ネージュのスタイルに合わせていずれオーダーメイドするしかないとの話だ。

 奥の手として、ブレストプレート等の身体前面を守る防具を纏い、上から幻影を重ねる魔具で誤魔化すという意見も出たが、防御面で若干の不安が残ることと、万一それを忘れて翼を広げると幻影の展開範囲よりも外に飛び出して結局バレるだろうという結論に至った。

 実力を認めさせるか、地道に足場を固めるか……前者は経験者によってそれとなく否定されている。当面は我慢してもらうしかなさそうだ。

「もうしばらくは我慢してもらうしかなさそうだ。角が伸び始める前に出来るだけ魔石をかき集めないとな……」

 アデルはそう呟くとネージュの髪をわしゃわしゃとかき回した。

 アデル達は、越してきたばかりのほぼ何もない部屋に布団だけを敷いて、長旅前半の疲れを癒したのであった。



ドワーフレディをロリロリしくするか髭有にするかが問題である。

リネⅡかSW準拠にするか、WIZクラシック準拠にするか悩みどころ。今のところ登場予定はないですが。

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